読まず嫌い。

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 215
感想 : 27
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048850278

作品紹介・あらすじ

秘められた未知の悦楽は、「学校では教えてくれないこと」ばかり…筋金入りの読まず嫌いが改心するまでを描いた、或る文学者の告白。

感想・レビュー・書評

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  • 基本的に読まず嫌いはしないよう意識してきたつもりでしたが、この本を読んだら自分で思っているよりジャンルは選んでることに気が付きました。
    たしかに海外の名作・古典には全く食指が動いてなかったわ。
    なんとなく名作って大雑把なあらすじを知っていたりするせいで今更読む気が起きなかったり、訳本が苦手だったり、難しそうだったり・・・と今まで読まないできた理由をあげるとホントだほら、きりがない(笑)

    「ものすごくおもしろいものを、一生知らずに過ごしてしまうかもしれない」といわれると焦ってしまう私。
    自分の興味の範疇を超えて、そして、著者のいうように、自分の「面白い」の枠を超えて自由な読書をめざし、今後はゆるく海外古典にもチャレンジしていきたいです。
    まずはドンキホーテあたりから。。

    それにしても著者の読書量には驚きました。その上で古典文学の価値や構造を体系だてて分かりやすく読み解き、しっかりと文芸評論もしている。本の紹介なども世間話をするように次から次へと飛ぶのでテンポが良くて会話のように楽しい。
    個人的には文学全集の成り立ちと意義、衰退までに関する評論がとても面白かった。文化に求めるものの変化、教養という価値自体の衰退、とかね。なるほど。

  • んんん…すごい。久々に「目からウロコとはこういうことか。」という思いをしました。決して読みやすくはなかったのだけど、今までよく知らなかったor全く知らなかった作品の紹介を読み、ちょっと「面白そう」と思わされ、私のわずかな読了名作に対しては斬新な解釈…。ひたすら、「なるほどなるほど!!」でした。
    とにかく「読まず嫌い」とはうまいタイトル。学生時代だったら、自分の好みにかかわらず、例えば国語の教科書収録作品やテストなどで、名作の一部に触れるという機会はあった。だけど大人になったら、読む本は基本的に自分がそそられた本。気が進まないけど読まなければいけない機会って、確かにぐっと減ったかも。というか、読みたい本を読む時間があるだけいいのかもしれない。
    ドキッとしたのは、「視野に入ってる本だけでは、なんだか読書が平板になってしまう。」という一文を読んだとき。食べ物と違って、好きな本だけ読んでメタボになるなんてことはない。だけど、読まず嫌いでいることで、ちょっと損をしているかもしれない?と、この年になって気がついた。名作の全集が、読まず嫌い克服のきっかけになるというのにはなるほど、と思った。
    振り返れば私も中学の頃、毎月配本される日本の文学全集を律儀に読んでいたことがあった。十代向けに注釈がついていたとはいえ、結構硬派な純文学作品を、好む好まざる関係なくとにかく読んだ日々。自分の「基礎」を築く上でものすごくいい経験であったとつくづく思う。私も、久しぶりに「名作」に帰ってみようか。

  • 「はじめに」でつらつらと述べられる、「ミステリが嫌いだった。」「SF小説が嫌いだった。」「時代小説が嫌いだった。」「歴史小説が嫌いだった。」「伝奇小説は(略)食傷した。」という嫌い嫌いのオンパレードに、ちょっと愉快な気持ちになる。
    同意できない部分もあるけれど、「純文学も得意ではなかった。(略)名作文学とは人生観を開陳してくる小説なのか。だったらめんどくさい。そういう人生観を若者に読ませようとした編者の教育的配慮を退屈に感じた。」「青春っぽい文学が苦手だった。理由は気恥ずかしいから。」の辺りは力強く頷かざるを得ない。「青春」に関しては、小学生から高校生の辺りまでは正にそういう気持ちだった。もう(作者の言葉を借りれば)和解していますが。
    最後の方で著者は、カフカの『変身』に対する「現代人の不安と孤独をあらわにした作品」という紹介を目にした時のガッカリ感をわかりやすく言葉にしてくれていて、「そういうことだったのか!私!」という気持ちになった。というわけで、読まず嫌いだった『変身』もいずれ読んでみたいと思う。
    ところで、表紙のデザインやペンネームから、著者はてっきり女性だと思いきや、男性だった。ギムナジウムの件であれっやっぱり女性!?と思ったが男性だった。『文藝ガーリッシュ』も読んでみたい。

  • 読むべき本としての「名作」。そんな義務や強制を強いる、重しのついた「名作」。そこには誤解や無理解も潜んでいよう。ともかく、そんな「名作」とどう付き合っていったら良いのか?をめぐる、体験的読書論。
    文学全集なるものに挑戦してみたくなった。

  • 文学
    これを読む

  • 筋金入りの読まず嫌いの著書が、さまざまな名作文学との和解の記録を書いたもの。エッセイなのかなと思って手にとったが、どちらかと言うとブックガイドのような色合いが濃い。

  • 10月 *移動図書
    請求記号:902.3/Ch 図書ID:10025647

  •  国語が嫌いで、そこで扱われるような古典などを読まず嫌いし、読書が好きだからこそ自分が好みそうな本以外の本を読まず嫌いしている傾向が私にはあるので、本作はとても心に響いた。名作だって、無理にそこから何かを学ぼうとかせずに気楽に楽しめばいい、という著者の読み方に勇気づけられる。読まず嫌い本を読んだ結果、それを好きだと思うかどうかは分からないけど、その時得た感想はその本でしか得られないものである、という著者の考えに読書欲をくすぐられると同時に、読書って刺激的だなぁと思った。

  • ひょんなことでお名前を知った著者。歯に衣着せない物言いで、本を登場させては凄まじい勢いでバッサバサと捌いていく本文から、ずいぶんスピード感と逞しさのある女性だと思いきやまさか男性だったとは。大変失礼しました。
    著名な作品を語っていたかと思えば派生して別の作品が登場し、内容から考察まで深入りするのかなと思えばヒラリと次へいく、という掴みどころのない印象。終始さばけた口語調なので肩を張らずに読める。情報量がすさまじく、マシンガントークを聞いているが如く集中力を要した。多くの本が登場するものの、ブックリストとしての使い方は私には出来そうになく、こうゆう読み方をしなさいと指南してくれているわけでもない。

    この本は「読まず嫌い」という題名にピンと来た人が著者と一緒に共感する、そしてそういった本との付き合い方について再確認する作品だと思った。本に関しては雑食でありたいとは思いつつも「読まず嫌い」となっている本(作家?)は多数。
    すぐとは言わず、いつか手に取れる日がくるよう広い受け皿を用意し、手に取った時は型にはめず自分の感じた印象を受け止め、他者の印象も知る姿勢を持っていたいと思う。

  • 頭の中で「帽子嫌い」と変換されていて、探すのに手間取りました。

    先日も、桜庭一樹の『赤朽葉…』の続編が出たってんで予約しようとしたら、どの図書館でもヒットしない。今をときめく桜庭の新刊が何故ない!?…『製鉄天使』が「鋼鉄少女」に脳裏で化けていました。嗚呼、あんころもち作ってもらえない(涙)

    閑話休題。
    「チノボーシ」の響きと苗字から、この人ってチェコ語の千野栄一さんのご子息かしらと思っていたら、表紙にロシア文字表記があり。どうなんでしょ?→千野帽子はペンネームらしい。

    「本ばかり読んでいると碌でなしになる。何が禄でないって悪いところを全部本のせいにするくらい禄でもない」ってのに激しく同意。

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著者プロフィール

日曜文筆家。女性誌・文芸誌・新聞などにエッセイ、書評を寄稿。著書に『人はなぜ物語を求めるのか』『物語は人生を救うのか』(いずれもちくまプリマー新書)、『俳句いきなり入門』(NHK出版新書)、『読まず嫌い。』(角川書店)、『文藝ガーリッシュ』シリーズ(2冊、河出書房新社)、『文學少女の友』(青土社)、編著『 オリンピック』『富士山』『夏休み』(いずれも角川文庫)、『ロボッチイヌ 獅子文六短篇集モダンボーイ篇』(ちくま文庫)。
自選一句「墓石にジッパーがある開けて洗う」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

千野帽子の作品

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