メディアのあり方を変えた 米ハフィントン・ポストの衝撃 (アスキー新書)
- アスキー・メディアワークス (2013年7月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048918138
作品紹介・あらすじ
政治家の妻、ベストセラー作家、リベラル派の論客など多数の顔を持つアリアナ・ハフィントン。彼女がたどり着いたのは、社会に多大な影響力を与えるネット新聞だった。アメリカ最強のネット新聞である「ハフィントン・ポスト」創設の物語が今語られる!
感想・レビュー・書評
-
FBでタイムラインをかなり埋めてくるハフィントンポスト。アメリカではジャーナリズムとしての地位を確保しているという。そのハフィントンポストの攻勢の解説により浮かび上がる既存メディアの変われなさと新興メディアの進化スピード、「ロウブロウ(低俗)とハイブロウ(高尚)の組み合わせ」による理念の実現とビジネスとしての持続可能性。朝日新聞と組んだ日本版がどこまでの地位を得るかは未知だがメディアの今を読む上で非常に興味深い。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ストーリーテリング
コンテンツと識者の見解
コスト構造の優位性 -
高邁な「ジャーナリズム論」はもうお腹いっぱい
アメリカで最強のネットメディアへと成長したハフィントン・ポスト。
ハフポストに関わった様々な人物の興味深いエピソードを紹介しながらその歴史と展望を語る。
後半は著名なジャーナリストの主張を引用しつつネット時代であっても良質なジャーナリズムを維持することの重要性を説く。
確かにハフポストは「伝統的メディア」に比肩しうるほどの影響力、コンテンツ制作力を短期間のうちに持てたし、後続のネットメディアもハフポストの成長ストーリーから学ぶべきところは多いのかもしれない。
しかし、肝心なところがこの本の中からは欠落している。
なぜ、ハフポストというメディアがアメリカで受け入れられたのか。
コンテンツのマネタイズは、記者への給与体系は一体どうなっているのか。
なぜ日本でハフポストはウケていないのか。
このような疑問に著者は答えられるのだろうか。
アリアナ・ハフィントンというある意味「超人」的な人物の影響力、威光のおかげ。
ケネス・レラーやジョナ・ペレッティといった共同創業者たちの先見性や課題解決力のおかげ。
こんな結論に収斂するのであれば、「へぇー、こんなすごい人たちがいたからこそハフポストは成功したんだね」という月並みな感想しか出てこない。
後半もそうだ。
筆者はネット時代におけるバラ色のジャーナリズムの未来を思い描きながら、変革を怠り「城壁」を作り出してきた「伝統的メディア」を手厳しく批判する。
小説のようなリード文で始まるフィーチャー記事を賞賛し、埋れた事実を掘り起こすことこそジャーナリズムだと主張すると同時に「放っておいても発表される事実」を誰よりも早く報じることなどジャーナリズムではないとこき下ろす。
果たしてそうなのだろうか。
なぜアメリカの「伝統的メディア」は進んで変革を起こさなかったのだろうか、それは彼らがネットの
ジャーナリズムの定義にこだわりすぎるあまり、市井の人々の素朴な声を耳を傾けることを怠ってはいないだろうか。
そんな疑問を感じてしまうのだ。
結局のところ海外の成功事例を持ち出してきて、日本の守旧的なシステムを批判する、よくある論法で貫かれた本なのではないか。
筆者がジャーナリズムに必要不可欠なものだと主張する「分析」や「検証」がこの本からは感じられない。
ネットメディアのマネタイズは大変難しい。現場で働く人々はもっとドロドロとした葛藤やジレンマを抱えているはずだ。
一部経営者たちの成功譚を語るのではなく、もっと声の小さな人たちをクローズアップして欲しい。
検証精神を欠いた「高邁なジャーナリズム論」は自己満足以外のなにものでもない。 -
山崎豊子の「運命の人」を読みつつメディア論も読みたくなり選択。
新書としてハフィントンポストの隆盛を紹介する本かと思いきや、ジャーナリズムの本質を論じている本。伝統的な紙メディアとハフポのようなネットメディアの対比にとどまらす、報道の在り方や、日本の記者倶楽部ジャーナリズムが目標とする「エゴスクープ」の弊害なども論じている。
本書の主題であるハフポの成り立ち、社主マリアナ・ハフィントンの様々な逸話、ハフポの収益基盤、といった内容も分かりやすい。
スティーブ・ジョブズとウォーレン・バフェットによるメディアへのアプローチをそれぞれの言葉や投資家レターを抜粋して紹介しているくだりも参考になる。
著者は日経を退職したジャーナリスト。かつて彼が大学院に子育て留学しているときのブログは面白かった。 -
ハフィントン・ポストにさしたる興味があったわけじゃないけど、何となく手に取る。タイトルから受ける印象とちょっと違って、ジャーナリズムについての真面目な本だったなという読後感。
その成功の背景には、シックスディグリー理論のダンカン・ワッツ、感染メディアのジョナ・ペレッティ、SEO技術者ポール・ベリーの貢献が大きいというくだりが面白かった。 -
ハフィントンポストについて書かれたものである。ハフィントンポストについて卒論を書くには必要であろうが、新聞について卒論を書くためにはちょっと理論不足である。
-
安倍首相もHuffPostでブログを投稿していた。HuffPostはピューリッツアー賞も受賞している。アメリカではオバマもクリントンも投稿している。アメリカの新聞業界では電子版へのシフトが進んでいる。
-
周回遅れで読了.新聞というか紙メディアのジャーナリズムの存在意義もしくは Webとの共存に疑問を感じていたが,この本でいろいろ学べ,勇気づけられた.良書.
-
紙媒体の新聞は、まだ日本では生きながらえているが果たしていつまで持つか。無料のブログ記事だけのあ繰りゲーションでは、メディアではない。しかし収益源としては大事。メディアとしての役割は公共性。それを支えるためには元手となる利益が必要。それを元に優秀な貴社を紙媒体の新聞社から雇用する。電子書籍、電子新聞。ローカルな新聞は生き残るかもしれない、オリジナルな記事になりやすいから。誰もが報道するようなこと、報道しなくてもそのうち知られることを報道するのはメディアの本当の役目ではない。調査して、記事を書く。その記事をそこで書かなければ、誰も書かないような記事。を書くのがメディアの役割。日本では、スクープ合戦になっているだけ。そういう情報は差別化にならないが、手間はすごくかかる。