地球最後のゾンビ -NIGHT WITH THE LIVING DEAD- (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048938730

作品紹介・あらすじ

全世界を襲ったゾンビパンデミックから5年後――、人類はほぼ全滅していた。
荒廃した東京をひとりさすらう少年ユキトはある日、「死ぬまでにやりたい10のこと」のため北海道を目指し旅をしている少女エコと出会う。
いつも笑顔で明るい彼女だが、その正体は他に例のない“ゾンビ化していないゾンビ”だった。
 彼女の死を見届けるため、人類の敵とふたり旅に出ることにしたユキト。決意を胸に、朝日とともにいざ出発しようとするとエコがかわいく抗議の声を上げた。
「ゆっくんは、デリカシーがないなあ。支度はすぐだけど、昼間は出たくないの」
 尖った口先が、つまらなそうに続ける。
「腐っちゃうから」

第21回電撃小説大賞≪大賞≫鳩見すた × 第24回電撃イラスト大賞≪銀賞≫つくぐの受賞者コンビが贈る、
愉しくも切ない、夜の旅路の物語――。

感想・レビュー・書評

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  • 地球最後のゾンビである少女エコと、少年ユキトのボーイミーツガール・ゾンビラノベ。

    タイトルの『地球最後の男』へのオマージュを始めとする、『28日語…』や『ゾンビランド』等の、数々のゾンビ映画の影響が随所に感じられており、その手の映画が好きな人が読めば十分に楽しめる一冊となっている。キャラクター造形や出会いなどは王道ラノベのボーイミーツガールを踏襲しており、無垢で明るい少女とやや偏屈な少年というキャラ立ては、万人受けする反面、設定を変えただけなので関係性は他のボーイミーツガールと変わらず、ノリも同じであるため、やや食傷気味な部分もある。ゾンビのトラウマがあるとはいえ、やや暴力的でつっけんどんな主人公はあまり好きにはなれなかった。

    しかしエンバーミングを施すことによりかろうじて意識を保っているという腐らない少女エコの秘密は面白く、その秘密が発覚すると同時に否応なく「終わり」への旅路を意識したのは上手いと思う。またゾンビが単なる舞台設定だけでなく、アクシデントの対義語であるインシデントと呼ばれていたり、ゾンビが隣人や死人といった感じで呼ばれていて、ゾンビという呼称を避けられていたり、自殺推奨や出生前虐待という教義を掲げて生存者を襲うパンクスという集団など、ポスト・アポカリプスものとしての練り込みは素晴らしいと思った。ドッグフードで飢えをしのぎつつ、たまに見つけたマシュマロ、いざというときに取っておいたごちそうである金ちゃんラーメンなど、終末メシの描写もよく、電力が貴重品になっているという設定も良い。カブで終末の世界を走る光景も脳裏に浮かぶようだった。

    特に白眉なのは「俺達は貧乏くじを引かされた」という作中の言葉で、これはすでに壊れてしまった後の世界の物語である。災害に名が付く前に全ては終わりを告げ、遺された若者の未来に希望はなく、また戦うべき脅威となるゾンビもすでに地上にはいない。

    >ユキトたち奪われた世代は前時代でも好況を知らない。彼らはものわかりのいい大人を演じたいのだろうが、それはユキトたちに覚えのなかった劣等感を植え付ける。それなら「今の若者はけしからん!」と、苦労した自分の時代を語ってくれる老人のほうがよっぽどありがたい。「俺たちは誰かに謝って欲しいわけじゃない」「インシデントに見舞われた被害者に、上も下もないよね」「歴史を振り返れば、いつの時代にも『昔はよかった』と愚痴をこぼす人間がいる。あいつらは現状を変える力を持っていないことを嘆いているだけだ。だがどんな時代であれ、結局生き方ってのは自分で見つけなくちゃいけない」

    このあたりの言葉はバブルを知らず、政権交代を経験した安定なき世界に生きる若者の言葉の代弁である。すでに世界は壊れているという実感は、僕らよりも若者のほうが強く、ゾンビという設定を通して語りかけてきたのは非常に良かった。ゾンビとの戦いはクライマックスにハイライトのように流れはするが、バトルめいたものはなく、読み手によってはやや退屈に映るかもしれない。しかし敵がいないことこそがこの作品の肝なのである。

    終わりは予想の範疇ではあったものの、死ぬ前にやりたいことリストの消化の順番はやや意外だった。悪い人をだしぬくといったリストが展開に関わってくるかと思ったが、むしろ悪人はいなかったのだろう。王道的にまとめた良作である。

  • 設定は良かったのに、偽善くさいし報われへんしで散々やったわ。

  • ゾンビものロードノベル、と風変わりな設定。

    ゾンビでもあるヒロイン(すごいワードだ)のキャラや台詞は良いのだが、主人公含めて他のキャラが少しフワッとして、行動理念や因果関係が説明不足に感じて、入り込めず&よく分からないまま終わってしまった。

    たぶん、このページ数に対して詰め込み過ぎたのかなぁ……これだけの要素があるなら、数冊に分けても良かったんじゃないか、なんて勝手なことを感じてしまった。

  • ゾンビ萌えはわかる。エコちゃんかわいい。イラストが良い!
    知らないイラストレーターさんだったので知れて嬉しい。
    特に裏表紙のイラストがかわいい!

    でもストーリーはな〜…最初はいいんだけど…なんだろ、中途半端、というか。
    うーん。ゾンビガール好きは読んでいいかも?
    でもあまりゾンビを感じられないかも?
    難しい。

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著者プロフィール

◆著者
鳩見すた(はとみ・すた)
『ひとつ海のパラスアテナ』で第21回電撃小説大賞で“大賞”を受賞しデビュー。著書に『アリクイのいんぼう』1~4巻、『ハリネズミと謎解きたがりなパン屋さん』1~2巻、『秘密結社ペンギン同盟 あるいはホテルコペンの幸福な朝食』1~2巻、『種もしかけもない暮らし ~花森姉妹はいまが人生で一番楽しい~』(KADOKAWA)、『こぐまねこ軒』1~2巻などがある。

「2023年 『江ノ島は猫の島である ~猫を眺める青空カフェである~』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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