楽園ノイズ (電撃文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 214
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784049131574

作品紹介・あらすじ

出来心で女装して演奏動画をネットにあげた僕は、謎の女子高生(男だけど)ネットミュージシャンとして一躍有名になってしまう。顔は出してないから大丈夫、と思いきや、高校の音楽教師・華園美沙緒先生に正体がバレてしまい、弱みを握られてこき使われる羽目に……
 無味無臭だったはずの僕の高校生活は、華園先生を通じて巡り逢う三人の少女たち――ひねた天才ピアニストの凛子、華道お姫様ドラマーの詩月、不登校座敷童ヴォーカリストの朱音――によって騒がしく悩ましく彩られていく。
 恋と青春とバンドに明け暮れる、ボーイ・ミーツ・ガールズ!

感想・レビュー・書評

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  • 行間から音楽が聞こえてくるような文章!
    真琴くんもヒロインたちも音楽への向き合い方がかっこよくて、登場人物全員好きになっちゃう!
    キャラクター造形は分かりやすくテンプレラブコメラノベ的ではあるっちゃあるんだけど、下手に個性を付け足しすぎてないことでテーマと物語がストレートに伝わってきたような気がする。

  •  とんでもないくらいの音楽の知識だが、その重厚な音楽への愛が、作品の強度を凄まじいものにしている。しかし、作者はクラシック音楽からロックまでどれほどの知識があるのか。恐るべきものだ。
     後半から女装要素は減るし、ヒロインの主人公ディスりっぷりにはきついものがあるが、そこからだんだんと評価を逆転させていくのは素晴らしい。女装が本格的になるのは二巻からだろうか。
     先生が病気であることの発覚。そこからの怒濤のライブの展開は非常に爽快。たぶん、作者はゴールとしてこのシーンを描いていたのだと思う。
     もしそうならば、ゴールの美しさを想定して物語を書くことの重要さを痛感させられる小説だと思う。
     この作者、音楽ライターとかはしているのだろうか。きっとしていると思うのだが、彼がやれば無双だろう。音楽批評の本を書いて欲しいくらいだ。

  • 杉井光の作品に音楽が絡むことは多々あったが、ここまでド直球の青春バンドストーリーは「さよならピアノソナタ」以来だろうか。
    あの作品から10年以上の年月が過ぎ、音楽を取り巻く環境も変わってしまったが、音楽とバンド、とりわけライヴが持つ眩しさに変わりはなく、それを描き切っている素晴らしい作品だったと思う。
    かねてから思っていたが杉井光のすごいところは「クラシック/バンド/DTM」などの極端に差があるジャンルそれぞれの「プレイヤー/リスナー/クリエイター」各自の立場からの描写がひたすらリアリティを持って深く描かれているところにあると思う。作中のキャラ作りも上手く機能していると思うし、今作のギャグやかけあい面も白くて普通に笑ってしまった。

    ほんとうに素晴らしい作品だと思うし、こらからの作品も一生読んでいきたいのでこれからもお願いします。

  • うわーめっちゃよかった。
    これぞ僕の好きな杉井光だよ!

    高校生の音楽と青春ということでもちろん「さよならピアノソナタ」を思い出したのだけど、最初のピアニストの凛子の話なんかもろ「ピアノソナタふたたび」だと思った。
    そのまま彼女がヒロインになるのかなと思っていたら、次はドラマーの詩月でその次はヴォーカルの朱音と、一人だけじゃないんだ! と驚いてしまった(笑)
    でも、みんなそれぞれに抱える悩みを主人公が次々に音楽の力で突き破っていく様は、どれもこれもグッとくる。
    挙句の果てには音楽教師の美沙緒の想いさえ掬い上げるとは!
    ラストの電光掲示板に写る奇跡の瞬間はほんと泣きそうになった。

    杉井光らしい怒涛のような音楽の表現も、相変らずボケと突っ込みの楽しい会話漫才も、久々に杉井光を満喫した気分。
    楽しかったあ!

  • 手軽になっても、面白さは変わらず。短編連作形式に近い形にまとまった、杉井さんの音楽シリーズ

  • 初読み作者さん。文章がとても綺麗。再生数を稼ぐために女装して自分の曲を動画サイトに投稿してる真琴。進学した高校で音楽教師の華園にその秘密がバレ、それをネタにこき使われることに。やがて彼の周り集う一癖も二癖もある少女たちとバンドを組むことになり…。とても面白かった!真琴とヒロインたちのやりとりがポップで楽しい。また演奏シーンや熱いライブシーンでは音楽が聞こえてくるような描写で、表現の巧みさに唸りました。読者の解釈に委ねるような結末ですが、青春映画を観たあとのような清々しさがありました。とても良い作品です。

  • なぜか登録されていなかったため再登録。日付は便宜的。たぶん2巻が出るからあわてて読んだような気がする。さよならピアノソナタ再びといったところか。本作として完結してはいるが、続きもみてみたい。

  • 登場人物のやりとりを見てると真琴が阿良々木君に見えてきて笑ってしまう…。

  • 杉井光先生の作品を読むのはこれで2度目。というか、『さよならピアノソナタ』以来
    あらすじや表紙にどこか『さよならピアノソナタ』っぽさを感じてしまってどうにも読まずには居られなかったよ
    そして、その内容はあの懐かしい熱量を彷彿とさせる部分を含みつつ、現代における若者達の音楽の楽しみ方を上手く作品に落とし込んでいるように思える作品だったね


    本作において、鬱屈とした思いを懐きつつも音楽に向き合う幾人もの少女たち。これに寄り添うことになったのが村瀬真琴、通称ムサオ
    凛子達が判りやすく音楽の才能に恵まれているのに対して、真琴の才能は非常に控えめ。その控えめというのは才能が無いという意味ではなく、判りやすくて華々しい凛子や詩月、朱音の才能に比べて影に籠っているという意味
    実際、真琴は女装のお陰とはいえ投稿した動画は伸びているし音楽の授業の代理も立派にこなせている。それをただ「何となく出来ているだけ」なんて表現する事は出来ない
    よくよく見れば彼も一角の音楽家であることが判る

    だから華々しい才能を持ち、自分を魅了する音を鳴らせるのに、音楽に向き合う事すら辞めてしまいそうな少女達を放っておけなくなるのだろうね
    そしてそんな少女達への寄り添い方はやはり某作品を思わせるもの
    音楽で絶望しているなら音楽で吹っ飛ばせ。これまで接してきた音楽で悩みを吹き飛ばせないなら、新たな音楽の光景を目の前にぶちかませ
    そうして真琴は少女達の音楽と寄り添っていく
    この流れがいつしか控えめであった筈の真琴の才能も花開かせていく流れも素晴らしいね

    一方でその流れは全てが運命によるものとか、偶然が積み重なってとかそういったもので無いのは少し面白い構成かもしれない
    本作における物語の始まりの地点を何か一つ定義するとしたら、それはやっぱり真琴が自分の演奏動画をネットの海に放流した時だったのだろうと読み終わった今では思ってしまう
    それがなければ全てが回りだすなんて事はなくて、真琴が凛子や詩月、朱音と出会う事なんて無かったのかもしれない
    美沙緒が真琴と凛子達との出会いへ導いたのは事実だけど、そこから様々な音楽が奏でられる楽園が出来上がったのは確かにあの投稿動画達がきっかけだろうから

    そういった意味では真琴達の繋がりや在り方を変えるのが再び投稿動画となるのは納得の展開と言えるのかもしれない
    バンドをしたかったわけではない。音楽で世界に向けて訴えたかったものが有るわけではない。それでも鳴り響かせずには居られない音があって、十全に奏でさせてやりたい音楽家達が居て、音を届けてやりたい相手が居て……

    人気や今後の活動を考えればあのライブシーンで真琴が出ないのは正解
    でも、彼らPNOが音を奏でているのはそういった理由によるものではなくて、もっと純粋で尊い動機によるもの
    だから幾千幾万のコメントから奇跡にも近い確率で一番大切な言葉を掬い上げられるし、そこから始まったアンコールはPNOが最も奏でたい音になる
    いや、それにしても真琴が消してしまった初期衝動が込められた楽曲を凛子達も知っていたというのは驚きだったけども


    最後の最後に示された楽園の場所、美沙緒から渡された大切な音の数々
    終わり方は残響音だけ残して曲が鳴り止むように静かなもの。そのような終わり方だからこの作品を読んだ余韻を感じられるし、次に鳴る音がどのようなものか想像を膨らませてしまうね

  • 音楽×女子高生
    全体的に駆け足で進んだ印象だったけれど、杉井光らしい人の心の歪みを描くのがさすがだった。

    凛子のキャラがいまいち定まってないのと、相変わらず鈍感主人公だったのは残念。

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著者プロフィール

第12回電撃小説大賞《銀賞》受賞者。代表作に『神様のメモ帳』『さよならピアノソナタ』など

「2023年 『楽園ノイズ6』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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