戦国の軍隊: 現代軍事学から見た戦国大名の軍勢

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  • 学研プラス
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054053045

作品紹介・あらすじ

「信長・秀吉軍は東国大名の軍隊よりも進んだ軍隊だった」、「戦国の兵士たちは農兵だったため、合戦は農閑期を選んで行われた」…。一見すると正しいように思われるこうした通説は本当に事実なのか。本書では従来の研究に決定的に欠けていた「軍事」の視点から、戦国大名の軍勢、すなわち「戦国の軍隊」の再検証を試みる。「前線」「部隊」「兵站」「作戦・戦術」等の現代軍事学の概念を当てはめて見直していくことで、まったく異なる「戦国の軍隊」像が提示される。戦国史の常識をくつがえす、戦国ファン必読の最新研究。

感想・レビュー・書評

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  • 大変に興味深い内容だった。
    序盤は武士のなりたちや鎌倉時代から戦国時代への変遷を簡単に辿った。
    中盤は兵農分離の有無から始まり、戦国の兵士や武装、鉄砲の与えた影響の解説
    最終的には侍と兵士の格差、戦国時代の兵站が書かれ、最後に少しだけ信長?秀吉に触れるている。
    特に面白いのは兵農分離の有無や軍団に雑兵が加わった事による武器や戦い方の変化、鉄砲の与えた影響などについては特に面白く読めた。
    短時間で読んでしまったのが今では惜しいと思える。もう一度、読み直す予定。

  • 戦国

  • だいぶやばい本だった。

  • (欲しい!)春風亭昇太

  •  軍事史学的な視点は興味深いが、著者の見解はまだ一般的とはなっていないのではないか。読み物としては面白い点があるが、研究書としては構成が今ひとつのようにも思えた。

  • 戦略論に言及できてない自己矛盾、流石は歴史屋

  • 信長・秀吉の頃の軍隊を現代軍事学の概念を当てはめて見直す。「長篠での鉄砲三段撃ち」や「戦は農閑期に行われる」といった、昔学校で習った定説を覆す。歴史は固定された不変なものではなく、資料の発見と研究、再解釈によって更新されていくものだとわかる。

    P102
    戦国時代(おおむね十六世紀)の日本では、軍隊が等間隔で整然と隊列を組んで行動する習慣はなかった。というより、そうした行動をとる必然性がなかった。したがって、映画やドラマに出てくるように、鉄砲隊が一斉射撃を繰り返すことなどありえない。

    P189
    戦国の軍隊は、支配階級に属する侍と、被支配階級に属する足軽・雑兵以下の非正規雇用兵からなる二重構造を有しており、戦国大名たちは主従制の原理にもとづかない非正規雇用兵を大量動員することで、兵種別編成方式の軍隊を創りあげた。支配者階級に属する侍たちと、足軽・雑兵以下の非正規雇用兵では、配置や任務だけでなく、価値観もメンタリティーもまるで違っていた。だから、足軽・雑兵らが逃亡をはじめても、侍たちが最後まで踏みとどまって勇ましく討ち死にするのは、当然であった。

  • まだ第二章を読んでいるところですが、いま書いておきたい。
    これは名著。日本の在野の歴史研究家は、ほんとうにレベルが高い。
    本書全体を通しての問題意識を綴る第一章は、秀吉の小田原征伐の前哨戦である山中城攻めを、豪傑渡辺勘兵衛覚書を題材に辿る。
    そこから、優れて組織的な鉄砲戦術と、手柄第一の個人プレーという相反する要素にどのように折り合いを付けたのか?という論点が提示される。
    同じ在野の歴史研究家である鈴木眞哉の著書も面白かったが、本書はそれを上回る面白さである。
    ちなみに渡辺勘兵衛は、『信長の野望』ファンならお馴染みの豪傑。山中城攻めでも、強襲を渋る主君中村一氏の判断を待たず、どんどん突撃していく。

  • 戦国史の欠落を埋める最新の歴史研究本だ。主に、東国・・・小田原に居城を構えていた北条氏や甲斐の武田信玄、越後の上杉謙信など、東国の戦国大名の軍隊について著者の考察を、素人でもわかる言葉で紹介している。

    本の帯には「眼からウロコの新解釈が満載!!」とあるが、具体的には例えば次のようなものだ。

    ・長篠の戦いの勝利の鍵は、本当に”銃三千丁三段打ち”なのか
    ・戦国の兵士は、本当に半農半士だったのか
    ・侍、足軽・雑兵にはどんな立場の者がなっていたのか
    ・実際に、どうやって兵を募集したのか、など

    そこには確かに学校で習ったことのない内容・・・あまり聞いたことのない話ばかりが紹介されている。

    「ハーバード白熱日本史教室」の北川智子氏を彷彿とさせるが、北川氏が戦国時代の侍(サムライ)を当時の女性・・・妻の視点から観察することで新たな発見を得たように、西股氏も従来とは異なる切り口・・・すなわち、当時の城郭のあり方から、戦国の軍隊を観察した結果、新解釈をしなければ説明できない事項がたくさんでてきた、ということだ。

    これにはある程度の納得感がある。

    ただ、間違ってはいけないのは、本書で紹介されている内容は、あくまでも西股氏が紹介する新解釈であるということだ。考察は確かに丁寧で、論理的だが、仮説や推測も少なくない。

    あまり深く構えず、純粋に「世の中ことを、もっともっとたくさん知りたい」・・・そういう気持ちがある人であれば、きっと楽しめる本だと思う。

    (書評全文はこちら→ http://ryosuke-katsumata.blogspot.jp/2012/10/blog-post_6.html

  • 最終章の内容が、織田・豊臣はRMAの程度は大差なく、単に急成長中のブラックなベンチャー企業だから強かった、という身も蓋もない話だった。

    ほぼ全編を通して、侍と足軽の二層構造という、一度ひっくり返ったものをさらにひっくり返すような大胆な説を、資料を基に丁寧に解説していて説得力があり、読んでいて面白かった。

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著者プロフィール

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で中世軍事考証を担当。大河ドラマ「真田丸」でも戦国軍事考証を務めた、ちょっとマッドな歴史研究家。単著に『東国武将たちの戦国史』(河出書房新社2015)、『土の城指南』(学研パブリッシング2014)、『「城取り」の軍事学』(同2013)、『戦国の軍隊』(同2012)など、共著に『図解 戦国の城がいちばんよくわかる本』(KKベストセラーズ2016)、『北条太平記』(桜雲社2016)、『神奈川中世城郭図鑑』(戒光祥出版2015)ほか、専門の論考や調査報告書、雑誌記事など多数。

「2022年 『オレたちの鎌倉殿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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