復讐するは我にあり 下 (講談社文庫 さ 7-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061315471

感想・レビュー・書評

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  • 上巻を読んでいる最中は映画の脚本との差分関係に驚嘆していたのであるが、下巻を読みながら逮捕後も十分な項数が残っていることに気づいて「もしや…」と思っているとやはり出てきた、加害者版の回顧録が。

    ということはやはり本作は原作の方が一層も二層も階層が深く、映画版は時間の制約から物語の順番を並べ替えてある程度先を急がなければなかったという事情が垣間見える。つまるところは映画版は「ダイジェスト版」ではあったのだけれど、「貸席あさの」のハルとの情のふれあいの描き方は今村版の方が美しかった。当時の小川真由美の艶っぽさが大いに貢献しているのは明白とはいえ。

    小説版の美しさにおいては自分の中では三十八章「島」がダントツ。ふといままで焦点が当たっていなかった箇所が、佐世保からの船の景色を背景に繰り広げられると、最初はいつ、だれとだれが交わしている会話なのか混乱するのだが、そこが活字の面白いところ、ようやくつかめるとまたまるまる一章読み返してみたくなって本当にそうした。その榎津の懐古と染谷勢以子の懐古がふわふわっと折り重なっている表現の美しいこと、美しいこと。ここは映画版にはなかった一番の読みどころだった。

    巻末にある著者自身の手による年譜、昭和四十二年の項目にこうある。

    「十月上旬、単身で上京し東中野に間借りし、最初に親しくなった作家が、野坂昭如氏だった。」

    今村昌平が映画化権を勝ち得た際、「野坂昭如が主演に立候補」という事実があったそうなのだがこれでつながった。2015年という年はこうして偉大な文筆家をつぎつぎと失った年として自分の中で記憶されていくのであろう。


















  • 第74回直木賞
    著者:佐木隆三(1937-2015、北朝鮮、小説家)
    解説:秋山駿(1930-2013、東京都、文芸評論家)

  • 事件をひたすら淡々と追っていく小説
    実際あったと思うと怖い
    淡々としすぎて長く感じました

  • 怒りを持つのは神じゃない僕さ

  • 福岡などを舞台とした作品です。

  • 西口彰事件を題材にしており、ほぼノンフィクションのようである。主観、ドラマ性は一切排除してあるので(最後でほんのちょっぴりだけある)物足りなさを感じる人もいるかもしれない。しかしこの様な犯罪に対しドラマティックな理由付けがされたところで納得のいく答えなどありはしないのでは。直木賞受賞作品。06.06.11

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著者プロフィール

1937年4月15日朝鮮咸鏡北道穏城郡訓戒面豊舞洞167番地で生まれる。
1941年12月末朝鮮から関釜連絡船で広島県高田郡小田村へ帰国。
1950年6月広島県高田郡小田村中学校から八幡市立花尾中学校へ編入。
1956年4月福岡県立八幡中央高校を卒業して八幡製鉄所入社。
1963年5月「ジャンケンポン協定」で第3回日本文学賞を受賞。
1976年2月「復讐するは我にあり」で第74回直木賞を受賞。
1991年6月「身分帳」で第2回伊藤整文学賞を受賞。
2006年11月北九州市立文学館の初代館長に就任。

「2011年 『昭和二十年八さいの日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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