さらば、夏の光よ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061317833

作品紹介・あらすじ

背が低くて鈍いと女を愛する資格もないのか。心は優しいが女性にモテない野呂は悩む。明るく行動的な親友の南条は、野呂が密かに恋する同級生の戸田京子の心を掴んだ。微妙に翳る友情。そして8年が過ぎる。歳月は彼らの人生をどう変えたか。愛と哀しみの十字架を背負った3人の運命を描いた青春ロマン。(講談社文庫)


背が低くて鈍いと女を愛する資格もないのか。心は優しいが女性にモテない野呂は悩む。明るく行動的な親友の南条は、野呂が密かに恋する同級生の戸田京子の心を掴んだ。微妙に翳る友情。そして8年が過ぎる。歳月は彼らの人生をどう変えたか。愛と哀しみの十字架を背負った3人の運命を描いた青春ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • それぞれの立場に立って考えると、言い分もあって世の中うまく行かないなと思いました。
    南条は自分の気持ちにまっすぐに生きただけだし。京子は周りに流されながらも、運命のいたずらで自分の思いとは違う方向に行ってしまう。野呂は大切な人大切にしたがために、生き残り思い出とともに、苦しみの中で生きていくしかない。
    切ない話です。

  • 解説はまだ読んでないが、30年ぶり?の読了

  • イケメン南条、デブサ野呂、美人な戸田京子の三角関係のお話
    遠藤周作が本人の役で出てきて、若者から請われてトンデモな恋愛指南(唐辛子作戦とかヤキモチ作戦とか)をしてたりする

    こんな設定は現代のラノベに通じるものもあるし、前半は男女の機微を知らない若者をからかい半分にいじる周作先生のキャラがユーモラスに感じる
    でも、中盤から描かれてあるのは運命に翻弄される若者たちの姿
    何というか、もっとどうにかならなかったのかなぁと思わざるを得ない

    南条はまぁ一般的な感覚を持っているのであろう
    時として軽率だけども、若者ゆえのこらえ性のなさと見ればまぁ許せなくもない
    ただ、その行為が後にどんな結末をもたらすかを微塵も考えなかったのかという憤りも同時に感じるけどね

    戸田京子は当時の倫理観からしたらまぁ真っ当な判断をしたのかもしれないけど
    最後の選択に関してはなぁ…
    結局は自分本位だし、その前の選択のミスにより自分の後の道を狭めた自業自得とも言える姿が哀れ
    本気で一途なら世間体なんか考えずに一人でという選択をすべき、そして一回決めたことならそれをやり遂げるべきだと思うよ
    ま、そのときの心理状況からそんな冷静な判断はできないというのもよくわかるけどね


    そして問題は野呂くん
    現代は野呂くんみたいな子が増えてるのではなかろうか
    自分の気持ちよりも好きな相手の事を第一に考える姿勢は好感が持てる
    ただ第三者的にはそう見えるだけで、当事者同士からしたら全く共感は得られないだろうけどね

    多分、野呂くんが結婚しなければ死ななかったのではないかと思う
    この中で一番のエゴイストは野呂くん
    表向きは相手のための自己犠牲に見えるかもしれないけど、自分の欲望に一番忠実に行動してるよね
    世間的には善良に見えるのかもしれない
    ただ、その善良さは醜い人を傷つける事にもなる

    この「善良さ」の使い方は江國香織もやってる
    「きらきらひかる」の睦月とか「間宮兄弟」の明信とか

    だからこそ一番共感するのは野呂くんなんだよなぁ
    そんな善良な人になってみたいものだ

  • すぐ読み終えられたが、サラリと流せないような痛みが心の奥に残った。
    善良であれば、善良であっても、善良だけでは、、、
    3名はそれぞれに、一番欲しいものを手に入れられなかった。でも3名が選んできた道は間違っていないのだ。たとえ最良の選択でなくても、それを繰り返して人は生きている。

  • 遠藤周作に限らず、例えば井上靖にも共通して感じるところですが、こういう恋愛小説を書かせると途端に時代を感じさせるというか、多分将来読まれないと推察される作品になってしまう良い作家が結構いるというのは結構興味深い現象だと当方思っております。
    悪くないんですけどね、でも深くないんですよね、正直。そういう意味でこの手のジャンルがその後に深掘りされていると言えるのかもしれず。

  • 閉鎖的で世間体が何よりも優先される時代は悲しい。
    時代は戦後なので自由じゃない社会がないと成立しない物語ではある。
    遠藤さんがいつも追求してる「神が沈黙している」ということらしいので、なるほどとは思った。

    だけど、主人公たちは総じて自己本位で思い込みが強すぎな面が。自分の置かれた立場に自分で酔っている感じが否めない。

    京子は南条と結婚してたら早晩、彼の欠点や浅はかさが疎ましくなり、南条なんてかなり浅薄で、釣った魚には餌をやらない的に京子への関心も薄れるんじゃないの?
    野呂はストーカー的なことしてないで(意図的に気持ち悪く書いたと思われる)自分の良さを引き出そうとしさいよと、美は自分の中から輝くよ!と喝を入れたい衝動にかられながら、まあ、神の云々も理解できるけど、ちょっと難しかったな。

  • 誰も幸せにならない、でも心に染みる、とまらなくなる。
    だけどそこかしこにいろんな形の愛が描かれていて、読み終わるとじーんとする。

  • ネタバレ 初出1965年。イケメン大学生、美人女子大生、そしてイケメンと友情を育むノートルダムのせむし男。3人が織りなす三角関係未満物語。が、運命の糸は女子大生とせむし男とを結びつけ…。◇3人とも悪人ではないが、善人ではない。また魅力的ではない。こういうキャラ造形自体が、ストーリーテラーで見た場合、著者の良い意味での底意地の悪さが見え隠れする。持ち合わせる倫理観やデキ婚への社会の目線など、やや現代とは違う点はあるが、痛く刺さる青春小説。◇が、姿態が生理的に受け付けない男と腹の中で罵りる女に純情を捧げるとはねぇ。

  • 野呂の善良さが本当にキツい。
    時代の価値観的に婚前の妊娠が恥ずべきことだとしても結婚を申し込むタイミングもというか結婚を申し込むこと自体が身勝手だ…。
    生理的に無理って思われてることに気付いてないから仕方ないのか…。

  •  遠藤周作さんの作品は、必ずその根底に愛があって、細部細部に現れる憎しみ嫉妬裏切り…の中にも愛が感じられます。読んでいて安心できる、そして何だか救われる作品たちです。
     作中の、南条も京子も野呂もそれぞれの若い時代を精一杯生きています。読み終えて最後にわかったことは、野呂に対する南条の愛でした。

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著者プロフィール

1923年東京に生まれる。母・郁は音楽家。12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶應義塾大学仏文科卒。50~53年戦後最初のフランスへの留学生となる。55年「白い人」で芥川賞を、58年『海と毒薬』で毎日出版文化賞を、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞受賞。『沈黙』は、海外翻訳も多数。79年『キリストの誕生』で読売文学賞を、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。著書多数。


「2016年 『『沈黙』をめぐる短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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