- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061362123
作品紹介・あらすじ
下町のおもちゃ工場で働く晋一は耳の不自由な青年だった。ある日、心臓病で寝たきりの母が怪死する。栄養剤から砒素が検出されたとき、容疑は晋一に集中した。すべてが不利な中で彼は無実を叫びつつ憤死する。そして馴染みのホステスも後を追う。彼をハメたのは誰? ヒューマニズムに裏打ちされた秀作。(講談社文庫)
下町のおもちゃ工場で働く晋一は耳の不自由な青年だった。ある日、心臓病で寝たきりの母が怪死する。栄養剤から砒素が検出されたとき、容疑は晋一に集中した。すべてが不利な中で彼は無実を叫びつつ憤死する。そして馴染みのホステスも後を追う。彼をハメたのは誰? ヒューマニズムに裏打ちされた秀作。
感想・レビュー・書評
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『聾学校』はあっても『聾唖学校』というものは存在しない。
耳の聴こえない人が言葉を理解できないということはない。言葉を話すことが出来ないという訳ではない。我々が話しかけようとしないのだ。
自分の中にもある偏見を炙り出される思いがした。
下町の工場で働く耳の不自由な青年、晋一。ある日、病弱な彼の母が死亡するが、服用した栄養剤から砒素が検出されるや容疑者にされてしまう。彼は無実を訴えるが、信じてくれるのは場末のキャバレー『菊』の女給、幸子のみ。かくて幸子は晋一の容疑を晴らすため、素人ながら捜査を始める。
最近、西村京太郎の初期の作品を何作か読んだが、その全てに普通に生きる人々、まじめに生きる人々、愚直に生きる人々への優しいまなざしを感じる。そして、なんらかの社会への歪みに対しての問題提起がある。しかし、それを生のままではなく、エンタテインメントの加工を丁寧に施して出すところに職人の心意気を感じる。
捜査のバトンは手から手へと渡されていく。読了後、『四つの終止符』というタイトルが胸を打つ。ノンフィクションではなくミステリ、娯楽作品だからこそ伝わるということも確かにある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハンディキャップを持つ青年が自らの母を殺した罪を問われるが、その無実を証明するために立ち向かう飲み屋の女将の話。なぜ青年の母は死ななければならなかったのだろうか。青年が死亡前に購入したビタミン剤が引き金になっているというが、病気がちの母を安楽死させた?それとも別の理由なのか・・・
新進気鋭、西村京太郎の初期作品のクオリティの高さ。鉄道については出てこないが、背景描写には定評があると言わざるをえない。当時の社会の障碍者に対する見方への問題提起も含まれて、読みがいのある作品。 -
西村京太郎さんといえば、今や「トラベルミステリー 十津川警部」のイメージが強いですが、本書は氏の初の長編書き下ろし社会小説です。
残念ながら今では絶版になっており、書店で購入することが出来ませんが、このような小説は是非とも再販してもらいたいです。 -
内容(ブックデータベースより)
下町のおもちゃ工場で働く晋一は耳の不自由な青年だった。ある日、心臓病で寝たきりの母が怪死する。栄養剤から砒素が検出されたとき、容疑は晋一に集中した。すべてが不利な中で彼は無実を叫びつつ憤死する。そして馴染みのホステスも後を追う。彼をハメたのは誰? ヒューマニズムに裏打ちされた秀作。(講談社文庫)
令和4年9月11日~18日 -
聾人である晋一は、彼の母親を毒殺した容疑で逮捕されるが、拘留中に自殺します。彼の知り合いの女性が「聾者にとって唯一の支えである肉親を殺すはずがない」と考え、真相究明に乗り出します。
特に大掛かりなトリックがあるわけではないのですが、伏線がきちんとちりばめられており、本格推理としての骨格がしっかりしています。十分に楽しめました。
欲を言えば、自殺したホステスの真意がうやむやだったことです。もっとはっきりとした動機が欲しかったです。 -
身体障害者の問題を非常に上手く取り扱かった推理小説です。
推理を楽しみながら、社会問題も考えさせられる作品。