クレヨン王国春の小川 (講談社青い鳥文庫 20-13)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061472143

作品紹介・あらすじ

ひょうきんで、元気な少女和子は、ベーコンの焼けるにおいにさそわれて、クレヨン王国へ。和子が落としたツバキの花のために、王国の気象プログラムがくるい、雪女の末娘ミーシャがこのままでは溶けてしますという。和子は責任を感じて、王国の隊員としてミーシャをさがす旅に…。愛のとうとさと、美しい自然を守ることのたいせつさをユーモラスにえがいたメルヘンの世界。

感想・レビュー・書評

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  • 印象的なキャラクターが多かった。
    三日月はその後、一生後悔し続けるのだろうか?
    カメラを取り上げたのは、クレヨン王国の秘密を撮られないようにしたのかと思ったが、ちゃっかり木村先生用に自然の美しい風景を撮っていて、最後のページでカメラを片手にウィンクしているクレヨンの挿絵が可愛い。
    クレヨン王国の国籍取得、私も申請したい。

    三日月の夜釣りを注意したばかりに、冷たい石にされてしまった白鳥のスミッタ。三日月が後悔すれば元に戻るが10年経っても後悔しない。
    和子が三日月の体内へ入り後悔するよう調整すると、白鳥に戻るも、翼は三日月への恨みのため羽根が無く、鋭い刀になっており、復讐に燃える。虹の小瓶をかけると落ち着き、羽根が生える。
    恋人に会いたい余り家出をした雪女の末娘・ミーシャは雪山以外で生きるのはそろそろ限界で、スミッタ石の冷たさで凌いでいたが出来なくなる。スミッタは空高く飛び、母親が迎えにくるまで冷たいところを飛ぶ。

    雲として落第し霧の学校へ行きかけたのを卒業できるよう三日月に助けれた雲のホワリー(しかし、かくれ雲として活用しようという企みがあった)。
    20年間一度も食べ物を与えられず弱っていたが、和子に貰ったマシュマロで元気になり、三日月との鎖を断ち切って自由に。

    ああ、あのとき虹の小瓶を1滴飲めば、ベーコンから自由になれてよかったんだわ。
    他人をなおすことばかりが役目じゃないんだわ。自分をなおすことも仕事のうちなんだ。p123

    ベーコンが食べたい誘惑により、レストランでメニューにはない焼きベーコンを注文。しぶしぶ届けられるも、2mmもあって厚すぎる。もっと薄くしてくれと再注文。届き、謝罪しつつも、最初から小瓶を口にしていれば良かったのに変な意地を張るからだと後悔。
    世の中、自分の機嫌をとるのも仕事のうちだという教訓が良かった。

  •  シリーズ中でも上位に入るほど好きな話。子どもの頃は、春の小川の色とりどりの美しさともうすぐ春が来るという高揚感に加え、登場するものすべてが可愛らしく大のお気に入りだった。落ちたヤブツバキの赤い花に虹の小びん、ホワホワのかくれ雲ホワリー、雪女の末娘ミーシャとハートのジャックの恋など心躍る可愛いトピックが満載だが、中でも極めつけはリットルドレスの町。子どもの頃憧れに憧れたが、今読んでもため息が出そうなほど可愛い。
     そして春の小川と言えばうすく切ってカリカリに焼いたベーコン。数ある本メシの中でもインパクトは強烈。ぜひベーコンを用意して読んでほしい一冊。

  • この話を読んでベーコンが好きになった。ベーコンの話、という記憶の仕方。子供の時以来の読み返し。

    和子が木村先生にタメ口なのにびっくりしたけど、びっくりした自分の感性にもびっくりした。学生時代、相性の良い先生にはタメ口をきくこともあったし、それは親愛の表現だったな。この二人のようにとまではもちろんいかないのだけれど。木村先生が和子の態度を気にしないのは、人間同士の付き合いだからで、この二人の関係はとてもいいですよね。現代ではいろんな意味で難しいかな。

    レストランで意地を張ってしまうところ、泣きそうになってしまうところが印象的。些細な目的に、譲れず我を張ってしまうところが、寺田先生と合わなかったのかな、と思うのは、自分が歳をとると寺田先生を悪者と決めつけられなくなったからだ。
    でも和子は春の小川隊員としての誇りを胸に、これから成長していく存在で、その未来はとても輝かしいものに思える。

  • 春なので久しぶりに読み返してみたら、けっこう冒険活劇なのは覚えていたけど、登場人物やアイテムの伏線をひきまくって全部きちんと回収していたことに気づいてかなり驚いた。どうりで面白いはずである。
    虹の小瓶や隊員の身分証明書、三日月様、雲の子、雪娘の登場、これぞファンタジーなアイテムやキャラにワクワクしてくるが感情のトロッコという発想、そしてそのトロッコを使ってまさか三日月様を改心をさせるなどお見事である。最後の大きな白鳥が天空を飛ぶシーンなどビジュアル的にも神々しく美しい。物語としてかなりの完成度ではないだろうか。

    クレヨン王国のアニメ化をするならこちらをしてほしかった・・・!!

    (あと今回はkindleで読んだのだが、ブクログのkindleには春の小川がなかったのは何故なんだろうか)

  • 春の小川はさらさら。なんだからさらっと流れた物語でした。
    状況を受け入れる力が強すぎる。

  • この本の話は結構覚えてた。
    印象深かったんだろうなあ。
    いや、多分読み返すと、どの本もあちこち懐かしい。しばらくはクレヨン王国祭りだけれど、毎回、なつかしかったり、すっかり忘れていたりするんだろうな。
    和子がベーコンの匂いに誘われてクレヨン王国に入っていってしまうあたりなんかも、ベーコンがすごくおいしそうでねえ(笑)
    トロッコのレールをヨウカンのように切り目を入れて、ってのもよく覚えてたなあ。うっかりおいしそうに思えたのかな(笑)
    これも買い直したい。


    和子は自分のしでかしたことの責任を取るために、春の小川隊員になる。
    春の小川の応援歌が、とてもいい。


    あたたまる大地
    もえあがれ春の小川
    きえてゆく冬のために

    そよ風は東
    花ひらけ春の小川
    おとずれる夏のために

    幾億の種を
    ときはなて春の小川
    実をむすぶ秋のために



    四季の美しさに感極まって、これだけで泣けてしまった。
    小さいころとは、感動の箇所が変わる。


    ポニーのベーカーの歌も素敵。

    春の日ざしは
    てのひらの上に落ちても
    そこに
    青空と白い雲をうかべます

    春の日ざしは
    街の歩道に落ちても
    そこに
    せせらぎと小鳥の声を聞かせます

    春の日ざしは
    人の心に落ちても
    そこにゆめの若芽と愛のつぼみを育てます


    福永先生の世界は、愛にあふれている。



    仕事をさぼっていた三日月様が、自分をいさめてくれた白鳥のスミッタに腹を立て。スミッタを石にしてしまって十年間。
    スミッタは三日月様を恨み続け呪い続け、石化が解けた途端に両翼の骨を刀に変えて、三日月様への恨みを晴らそうとする。
    自分を傷つけながら、恨みを吐くスミッタ。
    スミッタ、たぶんゴジラくらい大きい白鳥です。これが血まみれで暴れている。
    その血まみれのスミッタを、自分の命をかけて救おうとするミーシャ。スミッタが三日月様の元に飛び立つと、ミーシャは死んでしまうかも知れないのに。
    一方の和子は、自分のしでかしたことの責任からスミッタを救えなくて、でもミーシャの行動で、考えを変える。

    「にくしみが、どんなに自分自身を破壊していくか、よくわかった。このままでは、どのみち、スミッタも死ぬ。ミーシャ、あたし、やる。ゆるして。ミーシャ。」

    他の箇所でも「にくしみは自分をみにくくする」ってあったのだけれど……これが、応えた。
    ちょうどそのとき
    「私がああ言ったのに、そうじゃない行動をして……」
    って不満を感じていて、その心のままにメールを打とうとしてたんだよね。
    けれど、この本を先に読んで、
    「よかれと思ったことが、通じなかったけれど、わからなかったからであって悪気があったわけじゃないんだよね」
    と、だいぶやさしい気持ちになってメールを返せたので。

    にくしみは、簡単には消えないけれど、それで自分を追いつめるのは悲しい。



    p20
    木村先生が和子に尋ねるくだり。

    「なあ、和子、よく、自然がないとか、自然を守ろうとかいうだろう。自然って、なんだと思う?」
    「ふーん。自然って、自然ですよ」
    「これからは、こう考えろ。人間以外のものの生活。魚でも木でも鳥でも、みんなそれぞれ生活しているだろ。その生活にふれていると、人間の生活も、まちがわないですむ。それにふれないでいるとな、まちがったことをしても気がつかなくなっていく。鏡だよ。どんな家だって鏡がない家はない。鏡がなければ、目やにがついていても、鼻くそがぶらさがっていても気がつかないだろ。人間以外の生活というものが、人間の生活をてらす鏡になっているんだ。
     そこで人間は、安心を得られる。早い話、地球上の魚が、ある日いっせいに死んでしまえば、われわれも、ほろびるのではないかと、おびえざるをえない。そのとき、人間は人間で、魚とはちがう、と平気でいられる人がいるだろうか。いないだろう。だって、けっきょくは同じ命だってことは、だれだって生まれつき知っているんだもの。ただ、身近にながめていないと、それをつい、わすれてしまうんだ。いそがしすぎたり、欲ばりすぎたりで、わすれてしまうのさ。」

    この鼻くそがって例えが強烈だったらしく、鏡の例えとともに覚えてた。
    目に見えないリスク、表に出ない負担というものをよく目にする日々。
    シェールガス、オイルは、素晴らしい資源だけれど、あれらを採集するためには、水圧が必要なので、大量の水が必要ってことを知らなかった。
    掘削などに使った廃液はものすごく環境に負荷の高いもので、現状の採取地の技術では浄化も出来ずコストもかさむので、廃液垂れ流しで。
    健康被害はまだあまり報告がないようだけれど、もう地下水は汚染されていて、茶色い水が出てきているとかあるらしい。

    追記↓
    http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130326/245608/?rt=nocnt
    シェールガス革命は水資源が支えている




    東電が汚染水を海に流したそうで……それらについて書いてあるブログ主はもう魚を食べられなくなってしまっていて。
    あの汚染濃度の海水で育った魚食べてたらストロンチウム溜まっていくんだろうな。
    でも、それを親にも言わず(言っても聞かないから)誰にも特に言わず、黙って自分も食べているんだなあ。魚、おいしいのにね。牛乳も、おいしいのにね、って思いながら食べている日々。

    追記↓
    ブログ主さんが書かれていたのは、「風評被害とか言われるのとは関係なく、私はもうおいしいと思えなくなってしまった」と。私は、おいしいと思って食べているあたりが、認識が甘いんだろう。将来がわからないから、今すぐに影響がないから、という思考の枠組み。

    食べてすぐ、浴びてすぐには影響のわからないものが多い世界ってのが、科学で作られた物質の世界なのかな、と思う。
    携帯電話の電波を浴びている、まさに携帯電話が作られた世代の私たちの脳にどんな影響があるのか。レーシック手術は老眼になった際にどんな影響があるのか。
    それらをこれから知る世代だから。
    追記↑
    除染ってのは薄めて薄まるものではないから、集めて固めるのが一番、影響が少ないんだそうですよ。

  • ユーモアたっぷりでたくさん笑えて、ちょっぴり泣けてハッピーエンド!しかも出てくる食べ物がおいしそう・・・ 人付き合いや何かにとらわれることの怖さも描いてあり、愛と冒険も。全部入りで楽しい作品。底抜けにおすすめです!

    詳しくは http://d.hatena.ne.jp/ha3kaijohon/20120712/1342073330

  • さっと焼いた薄切りベーコンを食べたい!

    ベーコン以外にも
    何かに感動した記憶があるので
    特に読み返してみたい一冊

    クレヨン王国は朗読の番組が好きだったな・・・

  • 絶対ベーコンが食べたくなる。

    春の日差しは 手のひらに落ちても…

    春の日に毎年つぶやいてしまいます。

  • クレヨン王国といえばこのベーコンっていうくらい、ベーコンの印象が強い一冊。

    春の日ざしは、いい詩や。

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著者プロフィール

名古屋市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後文筆活動に入る。1956年 オール読み物新人賞受賞。1963年 モービル児童文学賞受賞。1964年 『クレヨン王国の十二か月』で第5回講談社児童文学新人賞受賞。1968年から1988年まで、自然に親しむ心をもった児童を育てる目的で学習塾を開く。
2012年逝去。主な著書に『クレヨン王国』シリーズ47タイトル、『静かに冬の物語』(以上すべて講談社刊)などがある。2012年逝去。

「2016年 『クレヨン王国黒の銀行(新装版) クレヨン王国ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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