- Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061472679
作品紹介・あらすじ
乳母のお浜の愛につつまれて、のびのびと育った次郎は、5さいのある日、生家につれもどされた。が、口やかましい母になじめず、他の兄弟と分けへだてするおばあさんをにくんだ。そんな次郎にとっての救いは、週一度、町から帰ってくる父のやさしさだった…。愛に飢え、悩みながら成長する次郎の姿を描いた不朽の名作「次郎物語」。少年少女のために著者が書きなおした、あなたのための必読書。
感想・レビュー・書評
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次郎のやんちゃぶりや成長を見るのがとても楽しい一冊。
今の時代からすると不幸な生育歴だと思うが、その為か強く逞しく育っていく次郎。父親は本当に良い父さんだなぁ…それに比べて母とおばあさんはどうなってるの?笑
昔の少年少女は誰もが一読していたベストセラーのようですが、今の子供たちはあまり知らないのではないかと思います。かく言う私も。
本当に面白い。笑えて、そして泣ける。お浜との別れの場面は涙が流れた。
印象に残った部分(p.388-389)を引用 ↓
次郎は、しかし、かれが四年生になったころには帰ってくるというお浜のやくそくだけは、長いことわすれないでいました。そして、三年生の終わりから四年生のはじめごろには、何度かお浜に会うゆめまで見たぐらいでしたが、いよいよ四年生になって二月、三月とたつうちに、それもあまり思いださなくなっていきました。また、だいじにしていたお鶴からの年賀状も、しわができたり、手あかがついたりするにつれ、しだいに心をひかれなくなり、このごろでは、つくえの引き出しにしまったきり、めったに出してみることもなくなってきたのです。
さて、こんなふうで、お浜の思い出が、しじゅうかれの心によみがえってこなくなったということは、考えようでは、かれの気持ちをおちつかせ、それだけ、かれをしあわせにしたともいえるでしょう。しかし、また、考えようでは、かれにとって、なによりのなぐさめであったお浜の笑顔や、あたたかいことばが、思い出の中からうすれていくということは、かれの心のいちばんだいじなところに大きな穴をあけ、そのために、かれは一生、不幸な人間にならなければならなかったといえるかもしれません。どちらの考えが正しいか、あるいは、どちらの考えもまちがいで、次郎には、だれも知らない次郎自身の進み方があるのか、それは、もうしばらく、かれのようすを見てからでないとわからないことです。
引用おわり
大切な人を失い、その記憶すらも少しずつ薄れていく様子に個人的に涙してしまいました。
このあと次郎の精神面での成長が示唆され上巻は終わります。下巻を読むのが楽しみです。
児童版でなく完全版も読みたいです。
引用
しかし、これだけのことは、いまでもはっきりしています。その一つは、かれはおおぜいの友だちと外であばれまわるような遊びごとをするよりも。一人でなにか考えたり、ごくおとなしい友だちと、しずかな遊びごとをしたりすることが多くなったということ、もう一つは、これまで思いだったことは、むりにもやりとげようとする、がむしゃらなところがありましたが、このごろでは、そんなことが、よほど少なくなり、どうかすると、はたの人がふしぎに思うほど、あきらめが早くなってきたということです。
しかし、次郎がそれで、元気のない弱虫になってしまったと思ったら、それはたいへんなまちがいです。かれの負けずぎらいも、すばしこさも、まだ、けっしてなくなってしまったわけではありません。それどころか、かれは、そうしたものを、かれの心の奥のほうに、だいじにしまいこんで、いざというときにだけ取りだそうとしているのではないかとさえ、わたしには思えるのです。
引用おわり詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
恩師が教員なら、一度は読んどけ、と、言った意味がわかる。下巻も楽しみ。
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★4.5