漢詩の名句・名吟 (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061490260

作品紹介・あらすじ

三杯の酒に大道を知り、都の月に旧友を思う……。奔放自在な「詩仙」李白、謹厳実直な「詩聖」杜甫、閑寂の自然詩人王維など、平安の世から日本人の心をとらえてはなさない漢詩の豊かな抒情の世界に遊ぶ。

この世に処るは大いなる夢の若し――「浮生は夢のごとし、歓を為すこと幾何ぞ」というテーマは、李白のこの文章だけでなく、李白の詩のいたるところに鳴りひびきます。詩文を問わず、李白の文学の根底にいつも流れている基音といってもよいでしょう。近年クラシック音楽のほうで、グスタフ・マーラーの人気がとみにあがっているそうですが、その代表作のひとつ「大地の歌」は、「唐詩を下敷きにして作られたといわれております。もとよりマーラーに唐詩が読めるはずはありませんが、ハンス・ベトゲという人の「中国の笛」と題する唐詩の翻訳詩集を読んで感激し、この大作にとりかかったのだそうです。ご承知のようにこの曲は、「テノールとアルト(またはバリトン)と管弦楽のための交響曲」と副題があり、歌曲と管弦楽が一体になっておりますが、その歌曲の歌詞は、ベトゲの訳詩をもとにして曲を付したものです。そして全6楽章のうち、1、3、4、5と4つの楽章は「李太白による」となっております……。それは李白の詩の根底に流れているものが、それだけの普遍性をもっているということでもあるでしょう。――本書より

感想・レビュー・書評

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  •  杜甫「春望」において、「家書 万金に抵る」に触れながら、著者が、もし引き揚げ時に父からの手紙が届かなかったら路頭に迷ってどうなっていたかわからないというエピソードが書かれてあって興味深かった。
     阿倍仲麻呂への漢詩が色々と紹介されているのが最後の章にあるのだが、印象深かったのは、鑑真がやってきてあれほどの影響を与えたのだから、もし仲麻呂が帰っていたら、どれほどの貢献と発展をもたらしただろうと、非常に残念がる文章で終わっているところだった。大転換点になるはずだったが、嵐のせいでそうはならなかった。歴史というのはいつもそうなのだろう。

  • 漢詩を日本の和歌・俳句あるいは牧水の詩などに重ねた説明は分かりやすい。そして実際の景色、酒の量は日本と比較しどうであろうと、雰囲気を感じればよいという著者は専門家でありながら、大変寛大だ。王維の親友・元二を送る歌「西のかた陽関を出ずれば故人無からん」に始まり、李白の酒にまつわるネアカな歌は芭蕉の「奥の細道」の冒頭に影響した「春の夜に桃李の園にて」は人生楽しもうという続くのはあまりにも雰囲気が違う!また李白の「長安一片の月」「床前月光を看る」の2首の美しさ! 月の美しさを称えるのは日本と同じだ。そして高い場所の景色を愛でた3楼の歌。(王之渙の登鶴雀楼、杜甫の岳陽楼、王之渙の鶴雀楼。)、杜甫「登高」は重陽の節句に山に登る歌、なども懐かしい気がする。改めて李白は「詩仙」で、杜甫は「詩聖」はその通りだと感じる。日本で絶大な人気だったという白楽天の人気。唐の時代の詩人韓翃(コウ)の漢詩「同題仙遊観」から伊達政宗が城の名前を採ったという推理の説明も楽しい。

  • 中国語が読めずもっぱら書き下し文でのみ味わっているが、漢詩は昔から好きだ。
    情景描写が殆どで直接的な内面描写にあまり重きを置いていないからか、読んでいてくどさが無い。夏目漱石が「草枕」で「汽船、汽車、権利、義務、道徳、礼儀で疲れ果てた後、凡てを忘却してぐっすり寝こむような功徳」と東洋の出世間的な詩歌に敬意を表しているが、同感だ。
    本書で紹介された中では、「世に処るは大いなる夢の若し」で始まり、マーラーの「大地の歌」でも翻訳された李白の「春日酔起言志」が最も良い。

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著者プロフィール

1930-2022年。中国大連生まれ。京都大学文学部卒業。文学博士。京都教育大学、奈良女子大学などの助教授・教授を経て東北大学名誉教授。恩賜賞・日本学士院賞受賞、瑞宝中綬章受章。主著に『三体詩』『宋詞の世界』『宋詞研究』『陸游』『蘇州・杭州物語』『中国文人論』『中国の名句・名言』『漢詩と日本人』『中国文学と日本 十二講』、学術文庫に『科挙の話』『唐詩』がある。

「2022年 『漢詩の名句・名吟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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