自殺の心理学 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061493483

作品紹介・あらすじ

誰もが一度は考える自殺。決行する人、思いとどまる者の差はどこにあるか?自殺者の発するサインとは?いじめ、家族環境、うつ病など具体例から予防法を説く。

感想・レビュー・書評

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  • 衝撃的なタイトルから、自殺者の心理について読み解いたり、診療例を再編集して次々に実際の例を語るような本だとばかり思っていましたが、「青年期」「中年」「高齢者」の三段階に人生のステージを分け、自殺の発生する構造とその対応策が述べられている本でした。

    この本が世に出てから22年が経過し、本文で述べられている予想よりも人口に高齢者の占める割合は高くなっており、(詳細に調べたわけではないので何とも言えないのですが)自殺者も増えていると思われます。

    発行から約20年後の今、読んでみて思うことは、今現在でも「自殺者に対する教育」と「精神科」に対する世間の認識は同じだということです。

    未だに日本社会では「自殺を打ち明けた相手」に対して「早まるな」とか「命を粗末にするな」という叱咤激励の声が飛ぶことが多く、この本に記載されているような懸命な判断が取られることは稀ですし、「精神科で治療を受けるということは周囲の目があるからできない」という社会が変わってきている気配もありません。
    むしろ、昨今活発になったSNSでの気軽なコミュニケーションによって「精神科」というものがより強くタブー視されるようになったとさえ感じます。

    タブー死されがちなものに真摯に向き合うとき、必要なのは「正しい知識」と「複数の方法を持つこと」ではないでしょうか。
    勉強になりました。

  • まだ自殺者数が年2万人台だったときの書。少ないページ数ながら要点をおさえた記述で、一般向けとしては汎用性と有用性は高いと言えるだろう。新書を媒体としているのも高評価。

  • 精神科医の立場から自殺予防について丁寧に解説した良書。古い本だが、大部分は現代にも通用する内容と思う。自殺に関するありがちな誤解について説明しつつ、青少年・中年・高齢者それぞれに起こりうる自殺の様相についての解説がとても有意義だった。身近な人に起きるかもしれない兆しを感じ取るためにも、自分自身の異変を異変と気づき、早めに対処できるようにするためにも、こうしたことは頭に入れておきたい。

  • 誰もが深い悲しみや仕事で大きな失敗をした時など、いっその事死んでしまいたいと思う事もあるだろう。斯くいう自分も大きなプロジェクトで出口も光明も見えない状況で楽になれたらな、と考えてしまった事はある。特に若い頃はそうした想いに苛まれる事も多かった様に思う。一時期、完全自殺マニュアルなる物騒な本が話題になった事もあるが、もし若かりし頃にその様な書籍を手にしていたら(読んだ事はないのであくまでタイトルだけで判断)、今の自分があったかどうかも判らない。
    本書は我が国におけるそうした自殺に陥ってしまった例やそこから無事に抜け出せた対処などを紹介している。確かにこうした本は自殺を煽ってしまう危険性が無いか少々不安でもあったが、内容としては、自殺を試みてしまった人の考え方や周囲の状況など精神科医が経験した多くの事例から、それらが防げることを前提に描かれているので、逆に安心感に繋がる。場合によっては自分の周囲にその様な傾向の人がいたら、助けになれる可能性がある事を示唆する。
    少子化が進展し人口減少まっしぐらの我が国において生命の安全性の確保は非常に重要な施策であると感じる。医療の発展や自動車を始めとする乗り物の安全性向上、更には警備会社の見守りサービスなど、あらゆる面で安全確保が進んでいく。しかしながら自殺についてはどうだろうか。会社でも鬱になる方がどの部署にも必ずいる。多くの人は一度休んでしまうと二度と会社で会わないように、回復できずにいる社員も多い。例えば自分の上司や部下であったら、身近な人がそうだったら自分も危ないのではないかと不安が不安を呼ぶ。
    日本は先進国の中では比較的自殺が多い様に思えるが、諸外国の中にはそうした自殺防止の教育プログラムもしっかり整備されている国もある。少なくとも、自殺を取り上げたニュースでは最近生命のダイヤルを案内するなど、今まであまり見たことがなかったものを手にする様にはなった。しかし本格的な教育は知らない。相変わらず精神科医などの範疇として政治的なフォローは少ない様に感じる。考え方によっては少子化対策と自殺防止対策は両面から行うべきと感じる。
    本書は主に若年層の自殺に多くのページを割いているが、顕著なのは本人の問題というよりは周りの大人達に多くの原因があるようだ。子供は環境を選べない。今置かれた状況から安易に逃げ出せる様な経済力も社会適応性も無い。より一層大人達のケアを必要としている。
    中高年は若者とは別に、仕事に起因する事が多くなる。新書を読む読者の多くが社会人であれば、多かれ少なかれ仕事のプレッシャーや失敗経験を抱えてる方も多いだろう。本書後半はそうした自殺防止に向けた取り組みや考え方が中心になるので、手っ取り早く暫定的な措置を理解できる。だがいずれにしても、その動機の多くは年齢に限らず、人の意思そのものである。
    自殺を試みてしまった人の事例や境遇を参考に、自分と照らし合わせて少しでも類似点を見出したなら、是非心療内科や薬を試してみると良いと思う。私も随分前に単身赴任かつ、今なら確実に訴えられるような上司からの激しいパワハラを受けていた。何をやっても上手くいかず、上司からの毎日の様な怒鳴り声と土日関係なく出勤を強いられた時期もあった。何よりチームのメンバー(チームリーダーをしていた)が目の前で人格を否定する様な言葉と怒りを浴びせられているのが許せなかったし、深い悲しみを感じた。助けになったのは医者の力と家族の支えだけであった。
    もし苦しかったら頼れば良いし、決して恥ずかしい事でもない。何より自分が悪いというよりは寧ろ周りの環境に問題があることの方が多い。無理はいけない、頑張りすぎてもいけない。まずは自分が何処まで出来るのか限界を知っておき、自ら防御線を越えないよう手を抜いたり、遊びを作ることが大事だ。
    本書を読み、今の仕事の仕方が危ないな、と感じる今日この頃である。

  • 自殺における背景やその時の心理状況について読みやすく綺麗に纏まっていたけど、なんかピンと来なかった。
    いじめにおける学校の回は面白かった。そりゃ虐めだけがクローズアップされるけど、それだけを本質と片付けるのは良くないよね。

  • だいぶ昔の本だが参考になった。高齢者の自殺の章に新しい発見があった。

  • 【読書マラソンPOPコメント】
    自殺の心理学(高橋祥友)[講談社現代新書]
    自殺と聞けば何を想像するだろうか。うつ病やいじめなど単一的な原因と結びつけてはいないだろうか。「自殺したい」そう友人や家族に打ちあけられたらあなたはどうしますか。
    この本では自殺の危険とその予防について理論的に伝えています。例えば青少年の自殺について話すと、環境、性格傾向、他者の死から受ける影響、生物学的因子、精神疾患などの原因が様々に絡み合っていると筆者は述べています。自殺行動に至るまでには長い道程があるのが普通でその中に多くの問題を抱えてきた事実は見落とされがちであり、直接の契機は周りから見ると笹井で問題の本質を見落としがちなのです。自殺志願者が発するメッセージを見落とさないで下さい。

    ペンネーム“カワ”

  • (2021-04-01 1h)

    求めていた内容とは違ったなぁという感想。
    著者が精神科医であることから、そういった内容になることは得心がいくけれど、どうしても自殺というよりうつだったり、病気に焦点が当たりがちな気がしました。
    序章辺りでは自殺に触れられていますが、2-5章は特にうつ病についてって感じで局在的な記述。
    データはやや古いんだろうけど、若者の自殺率は上昇するどころか下降してるとか、日本の自殺率は諸外国と比べてそれほど高くないっていうのは意外でした。
    参考文献も当たってみます。

    最近三島由紀夫にどっぷりハマっているので、三島由紀夫という字面見かけて少し興奮しました。

    ・雑記
    サバース「取り替えのきく子ども」
    リッチマン「スケープゴート」
    フェイデンバーガー
    アーロン・ベック

  • 105円購入2012-09-17

  • 20年前に書かれた本なので,データはちょっと古いけど,自殺する心理や防止策についてわかりやすくまとめられている.

    最近,電通の一件があって,実は死にたいと生きたいは近い感情なのではないかと思っていた.何かの拍子にひょいっと飛び越えてしまうと人は死を選んでしまう.自殺はある特定の人だけのものではなく,実は身近な存在なのではないかと.
    自殺する人は必ず兆候を出すそうだが,これは即ち「助けて欲しい/生きていたい」ということなのかと思った.

    また,「空き巣症候群」が紹介されていた.子育てに注力してきた親が,子供が巣立ってしまって自分の生きる意味が見出だせず自殺を選ぶ.
    うちの親は「子育て命」という感じではなく,それぞれ趣味に忙しいが,こういう人は人生謳歌するんだろうなと妙に納得した.小さい頃は手料理や子供の将来に熱心な友人の親を見てちょっと羨ましいなと思ったりもしたけれど,自分がなるならやはり自分の親の様な,自分の趣味優先,子供は二番目みたいな方が良い気がした.

    もし,誰かから「自殺したい」と打ち明けられたら・・・
     ・まず,とにかく話を聞く.ただただ聞く
     ・専門家に助けを乞う

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著者プロフィール

防衛医科大学校・防衛医学研究センター・教授。精神科医。
著書:『自殺予防』(岩波新書)、『自殺、そして遺された人々』(新興医学出版社)、『医療者が知っておきたい自殺のリスクマネジメント』『自殺のポストベンション:遺された人々への心のケア』(医学書院)、『新訂増補 自殺の危険』(金剛出版)、など。
訳書:ヘンディン『アメリカの自殺』(明石書店)、シュナイドマン『アーサーはなぜ自殺したのか』(誠信書房)など。

「2007年 『自殺で遺された人たち(サバイバー)のサポートガイド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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