- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061494879
作品紹介・あらすじ
大聖堂はなぜ高いのか?中世キリスト教信仰と自然崇拝が生んだ聖なるかたち。その思想をたどり、ヨーロッパを読み直す。
感想・レビュー・書評
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<名著の発見>
作者はバタイユ研究のフランス文学者。
大聖堂というヨーロッパ中世の文化的遺産を、建築的観点からではなく、ヨーロッパ精神という視点から読み取っていこうという壮大な試みが本書だ。
ゴシックの意味を思想史に探るという、<これが新書か!>というほど奥深い本だ。
鬱蒼とした森林に覆われていたヨーロッパは、森の大破壊を経て、農業革命により人口が爆発的に増えるが、その増えた余剰労働力は都市に集中していく。
巨大化した都市には、天に昇らんとする尖塔が屹立し、その内部は今や破壊され尽くして、失われてしまった森林が建築として蘇っている。
都市化の進展無くして、ゴシック建築は誕生しなかったと言える。
その意味で都市化こそがゴシック誕生を促した土壌だったのだ。
当然、ゴシックの巨大な尖塔はどの都市に聳えることになる。
パリのゴシックの聖堂、ノートルダム•ド•パリの建つ場所は、元々ケルトの聖所だった。
(2019年、火災によりその尖塔は失われてしまったが、2025年の完成を目指して現在再建中だ)
本書を読むと、パリのみならず、ケルン、ミラノ、ヨーロッパ各地の大聖堂を見たくなること請け合いだ。
人をヨーロッパの都市に誘う危険な本だと言って良いかもしれない。
但し、ケルンの大聖堂は近代の無惨な夢の跡として、本書ではボロクソに批判されているが。。。
本書で、高山宏的=文学的•哲学的•歴史学的=学際的な知のネットワークの縦横無尽な交通を楽しむことが出来る。
高山宏ファンには是非読んでもらいたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新書文庫
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強引に一言でまとめると、理性と狂気の混沌の中に、グロテスクな美と大自然を畏怖する有機性を兼ね備え、人間の飽く無き欲望が高く巨体に具現化したものが、ゴシック式大聖堂だ。建築学の立場からも面白そうな題材だが、本書はこうしたゴシック様式の精神性の歴史を、多々の具体例をあげなから紐解いていく。キリスト教の聖と俗が、人間らしく入り混じったエピソードが多い。あまりゴシックに関係なさそうな文脈もあったが、ヨーロッパ史の、ある一面が見られて面白い。
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NDC分類: 523.045.
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[ 内容 ]
大聖堂はなぜ高いのか?
中世キリスト教信仰と自然崇拝が生んだ聖なるかたち。
その思想をたどり、ヨーロッパを読み直す。
[ 目次 ]
第1章 ゴシックの誕生―自然とキリスト教の出会い(大自然への憧憬;死と笑いの聖性;威光と調和)
第2章 ゴシックの受難―変わる美意識、尖鋭化する宗教感情(戦争とペスト;反ゴシックの美学;宗教改革)
第3章 ゴシックの復活―近代はいかに中世を甦らせたか(ゴシック神話―イギリスの場合;生ける全体―ドイツの場合;神秘と感覚と構造―フランスの場合)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
中世ヨーロッパの建築様式であるゴシックを思想史を織り交ぜながら書かれた作品。なぜゴシック様式の教会には悪魔などの異様な怪物たちの彫刻が彫られているのか不思議に思っていた私に明快な答えを与えてくれた一冊。
ちなみに学生時代、この先生の授業を受けてました。授業よりも多分、本のほうが好きです。(実力は確かな人だと思いますが、愚痴っぽいのがたまに傷な方だったという印象を持っています。) -
欧州へ行くと、その美しさに目を奪われる、『ゴシック建築』の大聖堂。
そこには天に在る神だけではなく、大地、森林への信仰がありました。
後世の歴史観、中世の歴史・文化を背景に『ゴシック』という言葉、その精神性を知るための入門書です。読みやすいです。 -
「ゴシック・ロリータ」の、ゴシックって何だ?
<Br><Br>私のイメージにあった関連語と言えば「ゴシック体」ぐらい。・・・さっぱり掴めんな。<Br><Br>
ゴシックが秘めている、現代の女子中高生を魅きつけてやまない要素とは?それを探る上での参考文献として読みました。(そういう読者は多分珍しい)
<Br><Br>
尖った聖堂、人を寄せ付けない聖性 過剰に装飾的な天井、その下にある壁画やステンドグラス等々、ゴシックを代表するものを多数紹介、解説。
あの悪趣味かつ魅惑的な文化が何故生まれ、如何様にして衰退したか。
当時の人々の思いや社会背景、聖堂の情景を描き出す。<Br><Br>
ゴシックが与える印象を的確に言葉で示してるところがいい。
<Br>(ちなみにゴスロリの魅力についてですが、「幻想性」かなーと思った。) -
大聖堂建築は、何故、天にもとどこうかと思えるほどの高さなのか。高く建てようと思った、当時の人々の心理も合わせて理解。カドフェルや「薔薇の名前」など、中世時代に興味があるならば、建物という切り口からも理解を深めたいと思う。