決闘裁判: ヨーロッパ法精神の原風景 (講談社現代新書 1516)

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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061495166

作品紹介・あらすじ

権利と正義を求め、生死を懸けた苛烈な裁判。究極の自力救済の戦いは、なぜ中世キリスト教世界で広く行われたのか。欧米型当事者主義の本質に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 決闘裁判のシステムには、日本で人気を得る漫画作品やクリエイター、アーティストに通ずるものがある気がする。自力救済を全力でやっている人が主人公な作品は面白いし、実際にいたら憧れてしまう。単純に人の目を惹くし、良くも悪くも他者からの評価を集める。世界史大嫌いな私が法学史って面白いんだなと思えたのできっと良作。

  • 中世ヨーロッパで行われていた決闘裁判についての本。決闘自体は古今東西あらゆるところで見ることができるが、決闘裁判はごく限られたものとなる。

    決闘裁判の要素は次の3つ。神に裁きを委ねる神判の性質、自らの力で道を切り開く自己救済、そして名誉の精神である。これらが揃うところに決闘裁判が行われる。ある種のアニメで決闘が行われるのも納得が行く。

    決闘で裁判の行方を決めるなど、現代の日本人からしてみると野蛮としか思えない。裁判は事実を元に裁判所の権力下で行うべきである、と。しかし決闘で決めることは悪いことばかりではない。裁判所の判断に従うとなると、それは正義の判断を権力側に委ねること他ならない。一方で決闘を行うものたちは、自由と名誉の精神を尊ぶ。彼らにとってしてみれば、自らの力によって自由と名誉を勝ち取る決闘裁判は、好ましいものであったと言えるのだ。

  • 焼いた鉄を握ってみたり、熱湯に何分も腕を浸してみたり。それでも無罪なら火傷するはずないよね? 何もクガタチは日本特有ぢゃ無いわけさ。

    これらを神判というのに対し、1456年まで続き、近代でも復帰しかけた決闘裁判(対決して勝った方が正しいとして、司法裁判をひっくり返せるシステム)。 自力救済の禁止って、以外と最近のことなんだぜ?

  • 他の神判とどう違うか、実際の手順、当時どのように受け止められていたか?などが書かれている。

  • 中世ヨーロッパに整備され、法制度としては実に19世紀まで存続した決闘裁判について。数ある神判の方法の中で何故決闘が重んじられたのか、社会の諸集団の決闘裁判に対する態度、実際の運用、決闘裁判廃止をめぐる議論等を通じて、自力救済の権利を自由の意味とみなす、欧米型の当事者主義の心性をさぐる。文献リストあり。

  • ヨーロッパの法律、法に対する概念を描く傑作。決闘を以って勝訴か敗訴かを決める、つまり優秀な傭兵=決闘士を雇うだけの財力があるほうが罪になりにくいという、力=正義のような方程式が中世ヨーロッパでは当たり前であったことがわかる。ヨーロッパ氏に興味のある人は必読。

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著者プロフィール

山内 進(やまうち・すすむ):1949年生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士課程単位修得退学。成城大学教授、一橋大学教授、一橋大学学長を歴任し、現在は一橋大学名誉教授。専門は西洋法制史、比較法制史。主な著書に『北の十字軍』(講談社学術文庫、サントリー学芸賞)、『増補 十字軍の思想』(ちくま学芸文庫)など多数。

「2024年 『増補 決闘裁判』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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