「大東亜」戦争を知っていますか (講談社現代新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061496170

作品紹介・あらすじ

実はマレー半島上陸で始まった開戦から戦後まで-東南アジア研究にとりくむ著者が若い世代に語る日本と戦争の真実。

感想・レビュー・書評

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  • 日本がアジアにしてきたことが許されるものではないと知ること自体重要だけど、もうそれだけじゃ足りないんだろうな、歴史勉強しないと、、
    この歴史が忘れられることだけは避けないと

  • 東南アジアや韓国、台湾を旅行すると昔は高齢者に話しかけるとしばしば日本語が通じたりしたものだ。今ではそうした人々もかなりの数亡くなられているとは思うが、日本がかつてアジア各国を侵略し、現地で日本語教育を実施した影響が残っているものと思われる。30年ほど前(1990年代)に韓国へ行った際には、明確に日本語教育を受けたと道を聞いた老人は優しく答えてくれた。
    今私は「侵略」と記載したが、近年日本がこの戦争を起こしたことを美化する動きが強くなっており、侵略という文字に反応される方もいるかもしれない。よく言われるのは「解放」だ。日本は西洋に植民地化されていた東南アジア各国を独立させたのだから、日本は負けたが結果的にはアジアを解放したと見る動きだ。実際はどうだろう。本書はこうした、過去の歴史を美化する動きに警鐘を鳴らし、実際にかの戦争で被害を受けた方々への地道なインタビューなどをベースに、今後日本が将来に渡りこの戦争とどう向き合っていくか考えていく機会となる。本書はそうした戦争を母が娘に伝える形で描かれている。
    そもそも本書タイトルとなっている「大東亜」戦争にわざわざカッコをつけているのにも理由がある。一般的には太平洋を中心にアメリカと戦った太平洋戦争であるが、実際には真珠湾攻撃でアメリカと戦闘状態に突入するよりも数時間早くイギリス領マレー半島東北端のコタ・バルに上陸しイギリスとの戦闘状態に入っている。海軍は太平洋中心、陸軍は東南アジアを中心の戦争となる。実際に太平洋に面しているのはフィリピンやベトナムだけであり、タイ、ビルマ、マレーシア、シンガポールなどは面していないから、当時の東南アジア含む東アジア全体を指して共存共栄を計ろうとした「大東亜」戦争の方が、名称としては相応しい。ただ戦後生き残った軍部の服部卓四郎が記した書籍が大東亜戦争史を記した事で、軍部の考え方を礼賛する様なワードに取られたため、敢えてカッコをつけて記したそうだ。
    本書は日本が侵略した現地住民の視点に立って描かれている。そこに元々暮らしを持っていた現地人や日本から移住した人々は戦争開始によって平和な生活が壊されていく。植民地下よりも酷い生活に陥った人もいれば、日本軍に協力する事で利益を得たものもおり様々だ。確かに宗主国を追い出した事がその後の独立の一つのきっかけにはなったと思うが、あくまでタイミングや時間が早まっただけに過ぎない。それを日本の成果の如く記載するのは誤りがある。慰安婦問題や兵士や軍属の残留問題なども残る。数々の傷跡を残したまま未解決の問題も多い。
    やがて当時を経験した世代もいなくなってしまう。そうした人々が心にしこりを残したまま亡くなってしまう、その前にあらゆる意味で戦争を終わらせる必要がある。敗戦後まで続くこの侵略戦争の影響に今もなおアジアは揺れている。
    戦争を時間と共に風化させるのではなく、次の世代にしっかり引き継ぎ、真の共存共栄が測れる日が来る日を切に願う。

  • 教科書などで太平洋戦争と呼ばれる「大東亜(Greater East Asia)」戦争は「アジアの解放」を建前とした侵略戦争であった。東南アジアの侵略地域で何が起きていたか。企業戦士として送り込まれた日本人達、ロームシャ、慰安婦など、声なき人びとのインタビューが多く収録されている。日本の施策に振り回された結果、食糧不足によるベトナムの餓死者はベトナム戦争の犠牲者数を上回るという。戦後の補償やそれが各地に及ぼした影響なども興味深い。読んで良かったと思う。

  • 東南アジア研究者 倉沢愛子 「大東亜戦争を知っていますか」

    戦争加害者である日本を取り上げたルポタージュ。


    被害者の声を中心とした構成で、加害者の身勝手な論理が強調されている。善悪はっきりしていて、わかりやすかった。戦争や政治の背景は無視し、被害者の声から 戦争の実態を伝えている。


    著者の結論
    *大東亜戦争=日本の侵略戦争
    *日本は 欧米の所有するアジア植民地の再配分を求めた
    *大東亜戦争=アジア解放戦争 という立場は アジアへのプロパガンダ


    大東亜戦争にアジア解放目的がないと結論づけた根拠はあった方が良かった。

    同化政策の愚弄さが一番印象に残るが、同化政策は 戦時の緊急措置なのか、行き過ぎた移民政策なのか もう少し知りたかった。八鉱一宇とは 逆の発想に思えるが、何か思想転換があったのだろうか?


  • 「大東亜」戦争に綴って、東南アジア移住経験のある著者が綴った一冊。

    ちまたでいう自虐史観に支配されている部分はあるものの、実際に東南アジアの住人から戦争について丹念に調査してる部分は評価できる。

  • 第二次大戦のうち、特にアジア、東南アジアでのことについて、書かれた本。これを読むと「時代が日本を戦争に巻き込んだ」とは言えなくなる。アジア諸国に「ごめんなさい」って謝りたくなるくらいに無知で未熟な日本人像が見えてくる。
    自分のためでもあるが、今のこどもたちが外国で活躍することも予想した上で、知っておかねばならない日本の歴史。

  • 社会・経済・文化をも無視して、日本は「大東亜」帝国をマネジメントしようとしたのだなぁと改めて実感。インドネシアを中心とした人びとの目線から歴史の断面を切り取り、日本人の母として娘に語りかける内容です。

  • [ 内容 ]
    実はマレー半島上陸で始まった開戦から戦後まで―東南アジア研究にとりくむ著者が若い世代に語る日本と戦争の真実。

    [ 目次 ]
    はじめに もうすぐ二〇歳になる娘ロミへ
    1 開戦(マレー半島上陸で始まった戦争;アジアの希望の星―日本 ほか)
    2 大東亜共栄圏を支えた人たち(対日協力者;「アジア人のためのアジア」 ほか)
    3 日本軍の施策(ロームシャたちの叫び;米 ほか)
    4 戦後の課題(戦いおわる;東南アジア諸国の独立 ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • (2007.08.09読了)(2006.09.27購入)
    自分の娘に語りかける形で、大東亜戦争時の東南アジアについて述べています。
    中国大陸での日本軍、太平洋の海上と島々で戦われたアメリカとの戦い、割と多く語られても、東南アジアで何があったのかは、ビルマにおけるインパール作戦以外は、大きな戦闘がなかったためにあまり語られることはないようです。
    多くの人が知らないために、東南アジアの人々の日本人に対する感情を知らないということにもなります。安倍晋三さんも多分知らないでしょう。安倍さんにもぜひ読んでいただきたい本です。

    ●「大東亜戦争の開始」(26頁)
    一番最初の戦闘行為は、1941年12月8日未明、インドシナにいた陸軍部隊が、シャム湾を渡ってマレー半島の東海岸に上陸したことだった。(イギリスに対する攻撃)そのおよそ一時間五分後に、海軍によるハワイの真珠湾攻撃が行われた。(アメリカへの攻撃)
    ●占領地への企業社員の派遣(107頁)
    各企業から派遣された第一陣約1300人は、1942年5月5日に大洋丸で宇品を出港した。出港から3日後の5月8日に、この船は長崎の五島列島沖でアメリカの潜水艦の雷撃で撃沈され、817人もの命が奪われてしまった。たとえば三井物産の社員は55人乗船していたうち32人が、また三菱商事は80人のうち50人が犠牲になったという。
    ●南方へ行った女性たち(109頁)
    男性が軍人にとられて不足していたためか女子社員が企業の駐在員として派遣されている。1943年8月頃には、総員70名ほどの「日本タイピスト」という人材派遣の女性がジャワにやってきて官庁や一般企業に配属したという記録もある。日本語教師も女性が比較的多かった。
    ●オランダ人女性(124頁)
    日本軍が、収容所にいれられたオランダ人女性を強制的に軍の慰安婦として働かせた
    ●シンガポールの中国系住民(127頁)
    シンガポールの歴史教科書では「何千人もの華人はトラックで連れ去られた。彼らはほとんどがチャンギ海岸その他の東海岸地区に連行され、その場でいく組かに数珠つなぎにされた。そして射殺され、死ななかったものは銃剣で刺殺された」と書かれている
    シンガポール側の発表によれば、最終的に五万人が殺されたという。
    ●米不足(146頁)
    戦前600万トンも余剰があった東南アジアなのに、1945年初頭に北部ヴェトナムでは200万人もの餓死者が出たといわれている。日本軍の米供出制度のためということです。
    ●南方特別留学生(185頁)
    南方特別留学生というのは、将来の大東亜のリーダーとなるべき人材を日本へ送り、教育を受けさせることを目的とした、日本で初めての国費留学制度である。1943年度と1944年度の二回にわたり、計203名(インドネシア81名、マラヤ12名、ビルマ47名、フィリピン51名、タイ12名)が派遣された。

    著者 倉沢 愛子
    1946年生まれ
    1970年 東京大学教養学部卒業
    1979年 同大学院国際関係研究科博士課程修了
    1988年 コーネル大学Ph.D.取得
    1992年 『日本占領下のジャワ農村の変容』でサントリー学芸賞受賞
    専攻、東南アジア社会史
    慶応義塾大学経済学部教授
    (2007年9月5日・記)

    (「BOOK」データベースより)amazon
    実はマレー半島上陸で始まった開戦から戦後まで―東南アジア研究にとりくむ著者が若い世代に語る日本と戦争の真実。

  • あえて大東亜戦争という言葉を使う。これがこの本のメッセージ。

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授
Ph.D. in History(Cornel University)、博士(学術)東京大学
1970年東京大学教養学部卒業、1978年コーネル大学大学院修士課程修了、1979年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。1993年名古屋大学大学院国際開発研究科教授、1997年慶應義塾大学経済学部教授、2012年より同大学名誉教授。専門はインドネシア社会史。
主な業績:『日本占領下のジャワ農村の変容』(草思社、1992年)、『東南アジア史のなかの日本占領』(編著、早稲田大学出版部、2001年)、『「大東亜」戦争を知っていますか』(講談社、2002年)、『岩波講座 アジア・太平洋戦争(全8巻)』(編著、岩波書店、2005~2006年)」、『戦後日本=インドネシア関係史』(草思社、2011年)、『資源の戦争――「大東亜共栄圏」の人流・物流』(岩波書店、2012年)ほか。

「2017年 『日本帝国の崩壊 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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