- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061497054
作品紹介・あらすじ
異端狩り、ユダヤ人狩りや魔女狩りの悲劇は、中世から現代にいたるまで、なぜ何度も繰り返されたのか?その真相をカルト発生の観点から読み解く。
感想・レビュー・書評
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2004年2月発売 講談社現代新書
今の講談社現代新書のような「色つき図形+タイトル」ではなく、魔女がちゃんと写ってる表紙にまず驚いた!
内容:カルト的な信仰やそれによる行動は、どんなやつが主導して、さらにはその勢力が強くなるまでの流れを紹介している。(魔女裁判からヒトラーが英雄のように扱われるまで)
<買いポイント>
・魔女狩りらへんの歴史がなんとなく好きな方へ
・ドイツ史に少し興味ある方へ
・ガチガチの歴史系を触って挫折した方へ
どこから読んでもわかりやすくなってる講談社現代新書の特性は、この時代から出来上がっていた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ドイツにおいて、どのような経緯でナチスのようなカルトが発生するのか、どうしてそのような土壌となったのかを、歴史の視点から検証する。有名な魔女狩り・魔女裁判をはじめ、少年十字軍やハーメルンの笛吹き男、そして悪名高きヒトラーのナチスを扱い、集団妄想やカルトの発生のメカニズムを探る。
キリスト教という一神教に征服されながらも、南欧のギリシャ・ローマ神話文化や北欧のゲルマン神話文化、ケルト神話文化といった多神教の影響の残滓が、ドイツの基層文化に残っているという指摘が興味深かった。 -
ドイツ文学者浜本隆志氏が繰り返される異端狩りという切り口からドイツ文化を考察した2004年の著作。中世におけるもっとも大きな異端狩りが魔女狩り、現代におけるもっとも大きな異端狩りがユダヤ人狩り、また童話に登場するハーメルンの笛吹き男まで、いずれもカルトの発生にあるとし、ドイツの地理風土、ドイツ人の気質までを含めて考察し、ドイツ文化に根付くカルトの発生しやすい土壌やキリスト教との関係などを論じています。ドイツ人は気質などが日本人に近いと言われていますが、日本でも同じような文化的背景があるのか気になります。
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HT4a
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*ネタバレ云々の本ではないので、内容に触れています。
うーん…。
話として、面白いのは面白いんだけどなー。
ただ、もしヒトラーやナチスがいなかったら、ドイツ史を子供十字軍とハーメルンの笛吹き男と魔女狩りを材料に「カルト」という軸でまとめる?
と、思っちゃうと、な~んかイマイチかなぁーなんて言ったら怒られるか?(笑)
いや、面白いんですよ。読み物としては。間違いなく。
子供十字軍なんて知らなかったし、ハーメルンの笛吹き男や魔女狩りもあらためて本を読むこともなかったから、いろいろ知ることが出来ましたしね。
なにより、きれいごとばっか言ってる、あるいは、体裁をこぎれいに取り繕ってばかりいる社会は、そのきれいごと言わなきゃらならない/しなきゃならないストレスが何かのきっかけで爆発、異分子を見つけて攻撃しないではいられなくなる、ってことなんだなーしみじみ思っちゃいましたしね。
ただ、(しつこいようだけど)“だからドイツ人はヒトラーやナチスを生んだ”んだと言われてもなー。
みんなの不安や不満を誰かが煽って、みんなが極端に走っちゃうというのはどこの国でも、そして現在でも普通にあることだしなぁ…。
そういう意味じゃ星は3つくらいかなーと思ったんだけど4つにしたのは、一つには“帝国全体を統括するヒトラーのためには、個は犠牲になるべき存在にすぎないのである。ここにナチスの起こした悲劇の根源がある”と書いてあったことで、そこは私は気づかなかったというか、見ないようにしていたというか。
ヒトラーの目指したものはドイツの復興と隆盛だったという認識は変わらないものの、それはあくまで「ドイツ」という国であって、「ドイツ人」ではなかったんだなーと気づかされたこと。
もう一つは、最後の方でシュテンベルクの『デーモン考』という本(?)の抜き出しにハッとさせられたと。
つまり、“情念の虜となった集団は、共通の脈を打ち、一つのリズムに同化していく。そこに閉鎖的な統一体、つまり巨大な怪物が生まれる。この統一体に属さない者はすべて敵とみなされる。そのリズムに同化せず、個を守ろうとすれば、それがいかなる個であれ、その統一体にとっては憎しみの対象でしかなくなる”
って、なんだよ。カルトみたいなものに毒されるって、誰しも普通に陥っていることなんじゃん!なんて思っちゃいましたとさ(笑) -
2004-02-00
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子ども十字軍、異端審問、鞭打ち苦行、舞踏病、ユダヤ人大量虐殺、魔女狩り、そしてヒトラーへ。中世ヨーロッパから現代に至る集団ヒステリー現象が、何故に特にドイツにおいて猖獗を極めたのか。著者は先ず、ドイツにおける北欧型文化と南欧型文化との二極的な矛盾と葛藤に注目する。そして自然的・宗教的・政治的危機に直面すると両文化の均衡状態が崩れ、集団妄想やカルトなどのパニック現象が発生するという。しかし、両文化がドイツ精神史における対立軸(唯物論と観念論、合理主義と非合理主義等)とどのように対応しているのか、均衡状態が崩れた場合に両文化がどのように作用してパニック現象として顕現するのかは明瞭ではない。結局一連のパニック現象を検証して著者が得た結論は、「キリスト教」がドイツの基層文化(主としてゲルマン的な北欧型文化)を悪魔と看做して抑圧・支配したが、キリスト教文化の底流でフラストレーションがたまると抑圧されていた基層文化がマグマのように噴出しパニック現象が発生するという構図である。ここで提示されている図式はキリスト教対基層文化であって、冒頭の北欧型文化対南欧型文化ではない。そもそもこの錯綜した状況を紐解いていかないと、将来のパニック現象を予防するという著者の希望は叶えられないのではないか。
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子ども十字軍って悲惨だな。大人が止めてあげなさいよ。魔女狩りには審問する側への報酬とか、拷問器具を作るという大工の仕事が発生するという経済的な側面があったのね。