とりかへばや物語(3) 秋の巻 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061582958

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  • 平安時代後期に成立した作者は不詳の物語です。関白左大臣の2人の子供が、男児は「姫君」として、女児は「若君」として育てられることとなったことから始まる物語です。平安時代にTSFモノが存在する日本の変態性は凄いなと単純に感心したりします。本巻では妊娠してしまった姫君中納言が女装に戻って出産、これをきっかけにして、それぞれが元の性別に戻ります。はてさて、この後2人はどうなるのでしょうか。女性として過ごし時間が長いので、男性に戻っても女性の気持ちが手に取るように分かり、恋多き男になったのかな?

  • 出産を控えた右大将(女君)は、四の君と二人で権中納言の愛を分け合うことはあり得ないと考える。モテ男だから仕方がないなどと思わないのだ。一夫多妻が普通とされた平安時代の貴族として、珍しい考えだったに違いないが、もしかしたらこれこそこの物語が支持された理由の一つなのかもしれない。
    一方、妹と入れ替わったシン・右大将(男君)は、女東宮を今でも思っているし、吉野の宮の姫君のために邸を用意するつもりだ。さらに四の君まで自分のものにしてしまうなんて!スケベ心には違いなかろうが、自分には彼女たちを守る責任があるという考えなのかも、と言ったら弁護しすぎだろうか。

  • 新書文庫

  • 3巻は、妊娠した右大将(実は女)が、秘密裏に宇治にこもって出産するところからはじまります。
    世間では、右大将の失踪事件で大騒ぎ。父は寝込んでしまいます・・・
    そんな状況を見かねて、尚待(実は男・右大将の兄)もこっそり男に戻り、妹の行方を捜します。
    吉野で再会した二人は、入れ替わった生活をはじめます・・・

    やっと「とりかへばや」を達成しましたが、自発的に男に戻った尚待の潔さと、妊娠してしまったため仕方なく女に戻った右大将の書き分け方が絶妙でした。男女の性別による性格の差も表しているのかな。

  • 「とりかへばや」の第三巻。この巻は女主人公(男装の女君)が宰相中将に妊娠させられてからの話なので、彼女の置かれた立場が複雑で、話そのものがやや憂いを帯びてくるので少し苦手だ。勿論それでも十分面白いのだが。
    三巻は宰相中将に導かれ、吉野の隠れて出産をした女主人公を、男姿に戻った兄(女の格好で育てられていたもう一人の主人公)が見つけ出して連れ帰るまでの話。それにしても宰相中将の気の利かなさには腹が立つ。表面上はどうあれ、他の女の所に向かう夫を快く送り出す妻がいるものか。しかも、自分は籠の鳥にされてしまったというのに。
    菅原孝標女が「更級日記」で結婚を「据ゑこめつ」と書いているが、この時の女主人公の気持ちは孝標女以上だったであろう。それまで男性として生き、男性と対等にわたり合っていた彼女が、たった一人の男の思うままにならなければならなくなったのだから。だからこそ、兄に見つけられて連れ出される辺りではほっとして快哉を叫びたくなる。

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