森鴎外の『知恵袋』 (講談社学術文庫)

  • 講談社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (507ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061585232

作品紹介・あらすじ

自分が先ず自分を信ずることだ。それがあって初めて他人が信頼を寄せてくれるようになる。一たん自信がぐらついて、表情に覚束なさが表れるや否や、他人はたちまち寄りつかなくなる。顔に出た自信喪失の表情はカインの額につけられた罪のしるしと同じことだ。
他人から愛されたいと思ってもそれは此方の自由になることではない。愛されるのが不可能ならせめて畏れられるがよい。これもまた一つの交際法上の要訣である。(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • 2010/12/10読了

     「知恵袋」「心頭語」「慧語」の3編が収められている。どれも鴎外がドイツの箴言書を日本にて連載、紹介したものである。「知恵袋」「心頭語」はクニッゲ著「交際法」を、「慧語」はBalthasar Gracian著「Handorakel und Kunst der Weltklugheit(神託提要・処世の術)」を抄訳したもの。
     

  • 処世術指南書?
    森鴎外ってこんなに細かいこと記すメンタリティもってたの?各人の判断に任せば良いのぢゃないの?

    読み進めるに至って、なんとなく信仰宗教の教祖様の教えの様に思えてきた…


  • 思索

  • この類の書籍のもたらす効用についての考察。
    思うにそれは現在点の把握、
    無意識的な行動を言葉で把握し直し、
    その是非を検討するという作業。
    無論、人からの指摘による省察は必要と言えど、
    他方で自身で律していかなくては、
    当然とすべきことが客観的真実に届かない、いつまで経てども。
    人間の型として、多く接していきたい。
    また大人になってからは、暗記し実践というよりか、
    本を読む最中に考えること、慣習を検討し見直すことに意味があり、
    子どもにおいては暗記にその神髄があるのではないかという仮説。

    ○せいぜい多くの人にほめられること、又は少なくとも悪口を言われぬことは、なんでも人並みにしておくこと

  • 森鴎外の知恵袋の文章に出会ったのは、現代文・古文の模試でした。そのとき、えらくわかりやすい文章だなと思い、もっと読んでみたいと思って、この非常に分厚い本を買いました。

    読み返して気に入った部分は、『44.初対面(初対面の心得)』です。
    「なお特に学者のために一言注意しておきたいことがある。重要な対面等を控えている時は、少なくとも半日ほどは机上の仕事を休んでおいてから行くがよい。」

    そして、模試にもでた『6.独り負ふべき荷』は名文だと思います。

    智恵袋のネタ本などについて詳しくはこちら http://d.hatena.ne.jp/ha3kaijohon/20120423/1335136376

  • これは、一言で言うと、数年前にベストセラーになった頭がいい人、悪い人の話し方の明治時代版のようなもので、森鷗外の人生を通じた教訓、処方術が詰め込まれている。「泣き言を人に漏らすな」とか「嘘をつくな」とか、時代は違えども、人間の真理には違いがないのだと改めて認識させられた。僕としては、前半部分の方が参考になる所が多かったように思えた。色々納得させられる点はあったのだが、一つ挙げるとすれば十八「後言」の一文だ。

    人の居ないところでその人の欠点とか弱点とかを話題にするものではない。(中略)汝が口にする他人の蔭口ゆえに真先に汝を捨てて離れてゆくのは、汝の交友のうちで一番情誼に厚い人物であろう。

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著者プロフィール

森鷗外(1862~1922)
小説家、評論家、翻訳家、陸軍軍医。本名は森林太郎。明治中期から大正期にかけて活躍し、近代日本文学において、夏目漱石とともに双璧を成す。代表作は『舞姫』『雁』『阿部一族』など。『高瀬舟』は今も教科書で親しまれている後期の傑作で、そのテーマ性は現在に通じている。『最後の一句』『山椒大夫』も歴史に取材しながら、近代小説の相貌を持つ。

「2022年 『大活字本 高瀬舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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