余暇と祝祭 (講談社学術文庫 856)

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  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061588561

作品紹介・あらすじ

余暇とは、労働に従事している人間に労働以外の有意義な活動の場を与えること、真実の余暇をもつ可能性を開いてやることである。本当の余暇は無為でなく、まさしく活動である。どのような行為で余暇をみたすべきか、それこそが中心問題である。本当の意味での余暇の実現とは、余暇の本質である祭りをいわい、礼拝することにある。つまり、祝祭を可能にするものがそのまま真実の余暇を可能にすると説く、余暇論に地平をひらく好著。

感想・レビュー・書評

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  •  原著1965年刊。
     恐らく現在廃版となっており、古本で購入した。
     哲学者の著書だが一般向けに書かれたもので、極めて平易、明快。
    「労働」をあまりに絶対的に優先させる風潮にあらがって、人間にとって真に意味あるものとして「余暇」の復権を主張している。古代ギリシャや中世ヨーロッパの文献を引用しつつ、こんにちの感覚から言えば意外な「余暇」の意味を掘り起こす。
     確かに「労働」をあまりにも優先させてしまう世界観は病気のようなものだ。思うに本書刊行時よりも事態はすすんでおり、「余暇」自体も消費活動として経済の体系に組み込まれてしまっている危うさもある。こうなるとピーパーの言う、人間として自己と統合しなおし世界を自然なままに受け入れ肯定するための「祝祭的な余暇」からはなんとなく離れてしまいかねない。
     とりわけ日本では、職場で年休を取ることが忌み嫌われさげすまれてきたし、近年は新自由主義的に社会の経済だけが絶対のものであるという病んだ思考がはびこって、人間の心はいっそう空疎になり、不安にゆがみ、他者を攻撃するだけの動物性ばかりが前面に出るようになってしまった。
     経済、経済、と叫び続けるような現在の経済奴隷たちに読ませてみたい本だ。

  • 「労働」とはなにか、「余暇」とはなにかを考えさせられる本。本書によると、余暇とは、西洋文化を支える基礎の一つだという。この言葉の語源を見ると、ギリシア語で「スコレー」、ラテン語で「スコーラ」、ドイツ語で「シューレ」とある。また面白いことに、ギリシア語には、現代人が想像するような「仕事」を表す言葉がなく、その代わり、スコレーを否定する「アスコリア」という言葉がある。このように、余暇の概念が、近代を境に異なる。それをふまえたうえで、著者は労働が絶対化される現代を批判する。つまり、人間の精神的な活動までもが、労働管理社会のなかに組み込まれていることを問題視する。そこで、著者が真に余暇が実現されるために何が必要か、言い換えると、人間が単なる労働者にならないためにどうするべきかを考える。先に結論を述べると、労働に従事する人々に、労働以外の有意義な場の活動を与えることが真の「余暇」に繋がる。ただ、それは実益とは無関係に、何者にも侵害されることがない、人間が持つ富と豊かさ全ての総体だという。以上から、現代人が想像する労働や余暇、またその価値観が根本的に異なる。その意味で、多くの人々が近代的価値観に染まっていることがわかる。

  • ヨゼフピーパー 「 余暇と祝祭 」
    稲垣良典 訳

    余暇をスコラ哲学的に考えた本〜ゴールは キリスト教的であるが、アプローチは アリストテレス哲学により 余暇の本質を論述している。

    人間が人間らしくあるためには 余暇が必要という論調。宗教から見ると、余暇は神性や超人間性であり、労働は俗物的であることに驚く。


    余暇は 労働の対立概念。余暇の本質は、祝祭と同様に コンテンプラチオであるとしている。コンテンプラチオとは「日常生活を離れ、自我を抜け出て、世界をあるがままに眺め神に触れること」



    余暇の定義は 抽象的で分かりにくい。余暇と同類概念、余暇の対立概念から 余暇をイメージした。
    *余暇の同類概念=祝祭(祭り、礼拝)=コンテンプラチオ、知性、直観、超人間的、沈黙、安らぎ、苦労からの解放
    *余暇の対立概念=労働=社会的職務、ニヒリズム、理性、人間的、活動的、苦労、実益


    スコラ哲学
    *人間が人間らしくあるには 人間的なものの領域を超えて、人間より上位の存在が必要
    *理性は人間的なものであり、知性は人間的なものを超えている
    *人間的なものを超えていくことが 人間的である
    *理性(探究を重ねる過程)は労働〜知性(直観)は労働ではない


    余暇とは、自分を開こうとする態度、苦労から解放。人間が 本来の自分と一致したときに 成立する




  • 怠惰とは、その人固有の尊厳にふさわしい生き方を放棄してしまうこと。
    20130824 朝日新聞より。
    読みたい!!

  • 齋藤孝氏オススメの中の1冊・・・だったはず。

    「余暇」とは暇をもてあますことではない。
    「祝祭」こそ「余暇」に意義を与えてくれるものなのだ。

    というようなことが書かれており、信仰の無い僕が、地元のお祭に全力投球することの原動力を与えてくれた本。

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