作品紹介・あらすじ
本書では、これまで異口同音に語られてきた単調で理想化されすぎるルネサンス像を退け、もっと人間くさい歴史像を「現代」というフィルターを通して考察、その華やかな時代の光の部分のみならず陰の部分にも焦点をあてて、総合的にルネサンスを捉えた。最新の知見に基づく待望のルネサンス論。
感想・レビュー・書評
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今更ながら、西洋史の大家による「ルネサンス」概説。前半は理解しやすくよみやすく、なんでかと巻末みたら「NHK市民大学」のテキストだったとのこと。どおりで。その分後半の各論部分にはやや歯ごたえを感じてしまった。30年前から、いわゆる「ルネサンス」への疑問はかかげられてたんだな、と。いわく、中世に人間と文化が暗黒に沈んでいた、という見方への批判。ルネサンスが近代世界観の創造を達成したというのは早計ではという疑問。「再生」というが同一物の復活ではないのでは、という視点など。ルネサンスとは、暗黒からの離脱と、光明への跳躍。「古代の再生・復活」とは、ルネサンス人が古代人になることではなく、じつは端的に「古代の発見」。「死の勝利」とか「死の舞踏」とかよばれる画像が多くつくられたこと。善と悪、美と醜、それに全知と虚無がわかちがたく同居。15世紀ルネサンス人は、新プラトン主義を鍵として、「ヘルメス文書」を理解し、実際上の知識・技術である占星術・錬金術を学びとったこと。など、その特徴を論じるさまざまなトピック、論点は興味深く。最後は、「大航海の成功は、ついにはルネサンスを暗殺することになろう。宗教改革の嵐は、直接ルネサンスをたおしはしなかったが、しかしやがてローマ法王庁は、ルネサンス人の楽天的な世俗精神をうとましくおもいはじめ、カトリック改革という引きしめ策を講ずる」(p.291)と。
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そもそもルネッサンスの定義自体がバッチリ決まっていないということに驚いた。
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イタリアルネサンスのみならず北方ルネサンスまでを社会的側面から解説した。
宗教改革やペストの流行、大航海時代という3つの要素が絡まりあう上でルネサンスという戦国時代の幕があけたのを改めて整理することができた。
芸術的な様式や芸術家に関する側面は薄く、主にルネサンス芸術を支えることになったパトロンや商業的な面、社会背景の変化などにスポットライトが当てられていたように感じる。
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ルネサンス期と呼ばれている間がどんなものだったのかを解説していき、価値観や生活様式がどんな変化をたどっていったのか書かれている本。
やはり分野としては音楽・絵画・建築などの芸術方面の出来事を中心に、その当時の世界にどんなインパクトを与えていたのかをいくつかの作品をピックアップして紹介し、さらにペストの流行や大航海時代に対しての大多数のひとが信じていたであろう価値観、それを通して実際にどんな文化がこの時期に発生して行ったのかがわかる。
特に絵画に対してこのように時代背景と画家の解説が有るか無いかで注目度というのはかなり変わってくるだろうなというのは読んでいる間にはよく考えた。各都市が商業流通路として世界との交易が大幅に拡大されていくのと疫病の流行、宗教改革との連動性も分かりやすく書かれていたと感じる。
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ルネサンス音楽を勉強する一環で買いました。同時代の学問、文化等を総合的に捉えた論で、頭の悪い自分は音楽と美術以外さっぱりついていけなかったです
樺山紘一の作品