現代哲学の岐路: 理性の運命 (講談社学術文庫 1237)

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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061592377

作品紹介・あらすじ

本書は、今日の一般的な思想状況の展望からはじめて、現代の思想的中心課題ともいうべき近代合理主義批判という問題に焦点をあわせた。20世紀思想のあらゆる可能性が芽生えた19世紀から1920年代までの世紀転換期の思想の動きを主眼に、ドイツの観念論から近代初期の哲学まで遡り、さらに古代ギリシア以来の哲学思想の流れを概観する。現代哲学を学ぶ人に贈る対談形式の必携の哲学ガイド。

感想・レビュー・書評

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  • 10.06.25購入 07.02読了
    生松敬三、木田元両氏の対談。1976年に出た中公新書版を96年に文庫化。19世紀末から20世紀半ばまでの形骸化した理性に対する批判の流れを分かりやすく纏めてゐる。現代思想に関心を持つ人には強く薦める。
    主としてニーチェ、フッサール、ハイデガー等のドイツの哲学者が論じられ、フランス人が余り登場しないのは親仏派には淋しいが、第一次大戦後の混乱で思想的・文化的エネルギーが噴出したドイツに対して、戦勝国の1920年代のフランスは思想的にも微温的で、30年代になつて漸くドイツを追つて新しい動きが始まつたといふことなので、仕方のないところか。
    ベルクソンやアランの考へも、基本的には論じられてゐるドイツの哲学者達と同じ方向を向いてをり、より洗練された部分もあると思ふのだが、1930年代に入る頃には「ベルクソンはもう歳をとってだめだし」(P.218)アランなぞ名前さへ一度も出て来ない。まあ、アランは所謂大哲学者ではないし、さう見られるのを嫌つただらうが。
    木田氏の下の発言に同意。
    「日本人というのは、形而上学的なもの、つまり自然を超えた超越的なものに対するセンスのまったくない、根っからの自然主義者だと思っている。その方が自然だとも思っていますしね。それだけに、非合理主義、感情主義、情念主義、自然への回帰といったことはじつにぴったりくるところがある。それだけ、よけい警戒したくなるところもあるんです。あんまり安易で、調子がよすぎるんじゃないかと思って。」
    かうした日本人の特徴は、個別の事情や特殊性を超えた普遍的な理念や理想を示す力が弱いといふ形でも出て来る。

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著者プロフィール

1928年生まれ。東京大学文学哲学科卒業。同大学院修了。元中央大学教授。1984年没。著書に『思想史の道標』(勁草書房、1965)、『現代ヨーロッパの精神史的境位』(福村出版、1971)、『社会思想の歴史——ヘーゲル・マルクス・ウェーバー』(岩波現代文庫、2002)ほか。訳書はレヴィ=ストロース『構造人類学』(みすず書房、1972)、ヴェーバー『宗教社会学論選』(みすず書房、1972)ほか。

「2023年 『フロイト著作集第4巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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