太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061598171

作品紹介・あらすじ

満蒙の特殊権益をめぐる中国との対立から戦争の泥沼へとのめり込んでゆく日本。満州事変、日中戦争、太平洋戦争と続く動乱の時期、新聞は政府・軍部に対しどんな論陣を張り、いかに報道したのか。新聞紙法を始めとする法令、厳しい検閲に自由を奪われるとともに、戦争遂行へと自らの主張を転換する新聞。批判から迎合的煽動的論調への道筋を検証する。

感想・レビュー・書評

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  • 戦前のジャーナリズムが統制を受ける過程を、当時の記者の証言を共に記していて、緊迫した状況を伝えている。
    会社を守るために、自ら墓穴を掘って自発的な言論を地下に埋めていってしまった感が強い。

  • 満州事変から太平洋戦争敗戦に至るまでの新聞の変節を史実に沿いながら克明且つ冷静に分析している。

    「ある時点までは言論の力で誤った道に進むことを防げたのではないか」、と思わせる一方、「あの時代に軍部のテロルに対して屈せずに信念を貫き通すことが本当にできたのか?」、本書からその答えを具体的に見つけることはできない。

    本書を読んでひときわ印象に残るのは、当時の軍部に泰然と立ち向かった人々だ。石橋湛山など、その生き様について、今後、より理解を深めたい。

    現状を鑑みるに、インターネット世代で同じような言論統制など起こりえるのか、中東の民主化を見ても当時とは世の中のあり方が変わっている。
    一方で、中国共産党の言論統制、米国でのイラク戦争報道など、現在社会においても、歴史に学ぶべきことが少なくはない。

    戦忠の状況を多面的に学ぶことは非常に重要であり、新聞、マスコミのあり方から、史実を学ぶことも意義あることを気づかされた。

  • 無知な僕には大変衝撃的な本で、いやはや。戦前からの新聞論調の変遷を豊富なエピソード、人物を配して読ませてくれました。軍にしろマスコミにしろ、それを成すものはやはり人間、国民あるわけで・・・。
    検閲なしと思える今のインターネット上の情報であっても正論を見つけ出すのは至難の業だ。同じことが繰り返される可能性は無くならないだろう。
    最後の章で取り上げられる毎日新聞の竹やり事件は衝撃的であるがゆえに第一次資料まで踏まえて検証したものがあれば、それを読んでみたい。これがそのまま事実であるとしたら、本当におぞましいことと思う。新名丈夫記者のその後、どのような気持ちで記事をまとめたのか、硫黄島での同年輩の兵士250名の死にどのような気持ちで臨んだのか。それを知りたい。

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著者プロフィール

静岡県立大学名誉教授1943年生まれ。1969年、慶應義塾大学経済学部卒業後、毎日新聞社入社、情報調査部などを経て、93年より静岡県立大学国際関係学部教授に就任。ジャーナリズム論、国際コミュニケーション論などを研究。

「2022年 『人生、晩節に輝く 長寿逆転突破力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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