本当は知らない 薬屋探偵妖綺談 (講談社ノベルス)

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  • 講談社
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  • / ISBN・EAN: 9784061821989

感想・レビュー・書評

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  • 映画のような人生を!

  • 【 薬屋3人組とシャドウが大量失踪事件を追う 】  

    高里椎奈の「薬屋さんシリーズ」第7作。
    妖怪である薬屋さん3人組の他に、
    本作ではシャドウも活躍。
    シャドウはシリーズの他の作品でも登場している、
    ネット上の超優秀な情報屋であり
    ハッカーでもある電脳ユニット。
    彼らが事件を追う、
    ミステリ風オカルトファンタジーです。


    読了日:2005.12.24
    分 類:長編
    ページ:290P
    値 段:820円
    発行日:2001年8月発行
    出版社:講談社ノベルス
    評 定:★★★


    ●作品データ●
    ------------------------------
    主人公 :薬屋3人
    語り口 :3人称
    ジャンル:オカルトファンタジー
    対 象 :ヤングアダルト寄り
    雰囲気 :ライトノベル、ミステリ色強し
    ブックデザイン:熊谷 博人
    カバーイラスト:斉藤 昭 (Veia)
    ------------------------------

    ●菜の花の独断と偏見による評定●
    ------------------------------
    文 章 :★★★
    描 写 :★★★
    展 開 :★★★
    独自性 :★★★★
    読後感 :★★★
    ------------------------------

    ---【100字紹介】------------
    「退屈凌ぎではない、映画の様な人生を」。
    このメールを受け取りネット上から消えた8人の謎を追うシャドウ。
    病院から失踪した11人を調査する座木とリベザル。
    4人の惨殺事件を捜査する高遠と葉山。事件の行方は…
    -------------------------------


    高里椎奈の「薬屋探偵」シリーズの第7作です。

    シリーズの簡単な説明を。
    とある街の一角、まるでそこだけ時にとり残されたかのような「深山木薬店」。そこには澄んだ美貌の少年・深山木秋(しかし性格は小悪魔!?)、優しげな青年・座木(イギリス紳士なやわらかい性格のおにーさん)、2人を師と兄と仰ぐ男の子・リベザル(元気いっぱいだけど傷つきやすい)…の3人が営む「何でも調合する」あやしげな薬屋さん。でも裏家業は妖怪専門のごたごた片付け屋さん。何故彼らはそんなことをするのか?妖怪が人間と平和裏に共生していくのに必要だから。実際のところ、そんな彼ら自身が妖怪なのです。

    この3人が物語の中心ですが、このシリーズでは視点移動が多く、そのためにいわゆる「主人公」が明瞭でないこともよくあります。作品によって、どのキャラが活躍するかが異なっているのがこのシリーズの面白いところ。つまり、シリーズにひとりの主人公がいるわけではなく、「主人公グループ」の中からメインが選ばれている、という感じです。

    薬屋3人組以外に本作でメインキャラとして登場するのは以下の2組。

    頭の回転が速いが少しとっつきにくい刑事の高遠、前作で刑事を退職した天真爛漫の深山木秋ファンの御葉山。

    ネット上の超優秀な情報屋でありハッカーでもある電脳ユニット・シャドウの車谷エリカと道長円。


    本作のメインは、特に挙げるなら座木かな…?100字紹介で掲げた通り、3つの事件が交錯しています。ネット上からの失踪事件はシャドウの2人+座木、病院からの失踪事件はリベザルと座木、惨殺事件は高遠と葉山、それに巻き込まれた友人を見守る秋。それぞれ絡み合いながら進行していきます。


    今回も、ミステリ色は強め。でもそれ以上にオカルト色が強いかも。シャドウが活躍するお陰からか、ネット絡みの話が多く、こういうところがとても現代的で、しかもそれがとてもナチュラルに描かれています。コンピュータが得意とかそういう風ではなく、すでに慣れきってそれが日常である若い作者が書いたことがよく分かるのです。各章のタイトルも

    「第1章 邂逅(ダウンロード)」
    「第2章 変事(エラー)」
    「第3章 侵食(ウイルス)」
    「第4章 動揺(フリーズ)」
    「第5章 具現(ラン)」
    「第6章 真偽(インスペクション)」

    ですからね。その分、チャットなんてしたことないな、という人にも敷居が高いのかも。何しろ、そういうことに対してまったく説明がありませんから。でも今時は、それくらい当然の常識なのでしょうか。時代は変わったなあ。(ちょっと年寄りな発言?)


    シリーズ全体を通して言えることでありますが、基本的にはストーリーテリングを主眼にしているのではなくキャラクタ書きな感じがします。展開よりもキャラを描くことが中心になっているのです。女性作家だとよくあるタイプだと感じるのですが。ついでに言うと菜の花もそういうのは大好きなので
    女性に好まれる形式なのかもしれません。

    そのせいもあって既作登場のキャラがどんどん通り過ぎていきます。あとがきで著者自身もそのことに言及しています。

    ------------------
    本書は割合不親切です。この本から読んで頂く場合でも、ストーリー上は不都合がない造りになっております。しかし顔だけ、または名前だけ覗かせる既刊登場の人物たちに注釈が殆どありません。
    -------------------

    事件に直接関係のない場面で、直接関係のないキャラたちが突然登場して、また去っていきます。一作で完結する作品では絶対にありえない構成ですね。「作品に無駄が多い」と評論家に駄目だしされてしまう典型です。

    しかし、そういうところこそ、読者の中のキャラの輪郭をはっきりさせることが出来る楽しみもあります。勿論、事件に関係あるシチュエーションで描きこめるならその方が「無駄のない物語」になるわけですが…。まあ、これに反論できる方法を1つだけ菜の花は知っています。いわゆる「ファンサービス」ってやつです(笑)。だってー、シリーズ通しての読者だったら、こういうときに思わずにやり、でしょ?でしょ?ねえ?もしかしてこういうのを「きゃらもえ」ってゆーんだろーか。寡聞にしてそういう言葉の正しい定義は知らないのですが。ほほほ。


    ちなみに注意事項は純粋ミステリを期待して読んではいけませんってこと。本作はオカルトファンタジーですからね!


    ------------------------
    「ムカつく奴は、一番幸せな時に
     地獄の底まで叩き落す作戦ね。
     犯人の方と気が合いそうだわ」
    「エリカちゃん、鬼だね」
    (車谷エリカ、道長円)

  • *登場人物*<br>
    <table>
    <table border="0">
    <tr><td><font size="-1">深山木秋</font></td><td><font size="-1">妖怪。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">座木(ザギ)</font></td><td><font size="-1">イギリス出身の妖怪。妖精の一種。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">リベザル</font></td><td><font size="-1">ポーランド出身の妖怪。精霊の一種。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">桜庭零一</font></td><td><font size="-1">秋の友人(秋談)。フィンランド出身の悪魔。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">剴</font></td><td><font size="-1">中国出身の妖怪。『花花』店長。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">&#33005;季</font></td><td><font size="-1">アルプス出身の妖怪。『花花』従業員。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">柚之助</font></td><td><font size="-1">日本出身の妖怪。野狐。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">斯波梓</font></td><td><font size="-1">愛媛県警警部補。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">伊川小町</font></td><td><font size="-1">愛媛県警警部。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">木鈴直也</font></td><td><font size="-1">秋の友人。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">高橋総和</font></td><td><font size="-1">直也の友人。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">車谷エリカ</font></td><td><font size="-1">三科台高等学校三年生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">道長円</font></td><td><font size="-1">三科台高等学校三年生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">亜鳥文人</font></td><td><font size="-1">三科台高等学校二年生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">早川美浦</font></td><td><font size="-1">三科台高等学校三年生。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">高遠三次</font></td><td><font size="-1">埼玉県警上流坂署刑事。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">御葉山</font></td><td><font size="-1">高遠の元同僚。</font></td></tr>
    <tr><td><font size="-1">御真鶴</font></td><td><font size="-1">高遠の元同級生。葉山の兄。探偵。</font></td></tr>
    </table><br><br>
    <p>《story》<br>
    「退屈凌ぎではない、映画の様な人生を」。<br>
    このメールを受け取って、ネット上から消えた8人の謎を追う車谷エリカと道長円。<br>
    病院から失綜した11人を調査する座木とリベザル。<br>
    4人の惨殺事件を捜査する高遠と葉山。<br>
    三つの事件が絡み合い錯綜するなか、傍観を決め込む秋だが…。
    </p><br><br>
    怜の好きな言葉・シーン<br><bR>
    秋=秋 座=座木 り=リベザル 零=桜庭零一 高=高遠 真=真鶴<br><br>
    <p>
     り  「兄貴」<br>
     座  「どうしたの?」<br>
     り  「俺も手伝っちゃダメですか?」<br>
     秋  「そこでザギに選択させてるようじゃ大した働きは期待できないな」<br>
     り  「え、選択って?」<br>
     秋  「頼み方にも臨機応変色々ある。謙虚は美徳にもなるが、少なくとも今のお前には最大級に求められていないものだ。<br>
        忘れたなら良い。どうせ僕には関係ない話だ。ただの寝言さ」<br>
     座  「相手の都合を考えてあげられるのは、リベザルの良い所だと思うよ」<br>
     り  「でも、師匠は求めてないって言いました」<br>
     座  「これまでのリベザルなら、自分から手伝うと言えるだけで良かった。それが越えられたからこそ、<br>
        秋も次の段階を考えなさいって言ったのではないかな。<br>
         リベザル。一つだけヒントをあげるね。<br>
        さっきの頼み方で、頼まれた人間がリベザルに仕事を頼みたいと思えるかな。<br>
        リベザルの武器と併せて考えてごらん」<br>
     り  「頼み方と、武器?」</p><br><br>
    <p>
     り  「俺、明日も詞音病院に行きます。それで、患者さんから沢山お話聞いて来ます」<br>
     座  「有難う。でも、資料はあのカルテだけで十分だよ。明日は店の手伝いをしてくれる?<br>
         ごめん、リベザル。折角の厚意を傷付けたね」<br>
     り  「違うんです。兄貴、ごめんなさい。あれ本当は、ヘラさんが盗って来てくれたんです。<br>
        俺、何もしてない」<br>
     座  「リベザル・・・・・・。<br>
         それでも、リベザルがいなかったらカルテは私の手に届かなかったよ。<br>
         リベザルにお願いしたのは、カルテのコピーを持って来ることだから、それがどんな手順で行われたものだとしても、<br>
        果たされた結果に変わりはないよ。人の行動は結果だけでなく過程が尊重されるべきだし、どうなったかよりも<br>
        どうしてそうなったかが重要だと思う。でも、仕事は残念ながら逆であるのが殆どなんだ」<br>
     り  「逆?」<br>
     座  「途中どんなに頑張っても、結果が出なければ仕事としては不完全と弾かれる。<br>
        反対に幾ら手を抜いても、最終的に仕上がりが同じならば文句いは言われない。利害関係で結ばれた契約なら余計にね。<br>
         だから、もしリベザルが仕事という観点で責任を感じているなら、何も出来なかったなんて思わないで欲しい。<br>
        それにリベザルがいなかったら、ヘラさんだって動かなかったのだから」<br>
     り  「ヘラさんが?」<br>
     座  「そうだよ。<br>
         リベザルが病院まで行って、一生懸命だったからヘラさんも手伝ってくれた。<br>
        頑張っても結果が出ない事があるって言ったけれど、それは必ず何処かにプラスとなって反映される。<br>
         今回は直接、結果に繋がったんだね。大丈夫。リベザルはきちんと自分の仕事を成し遂げたよ」</p>
    <br><br>
    <p>
     秋  「伝わらなかったか」<br>
     零  「食べる事が悪い事だとは思えねーよ、誰だって」<br>
     秋  「まあね。論点はズレてたかな。悪気のない相手に非を認めさせるのは難しいよね」<br>
     零  「悪気がないって、一番卑怯で残酷な言い訳だよな。その行為が純粋なだけ、傷付けられた方の怒りは行き場がない。<br>
        表に出せばそっちが周囲の人間には悪人になって映る。割に合わねえよ」<br>
     秋  「知らぬが仏?」<br>
     零  「身の程知らずだろ。自分から喧嘩売っておいて、買うなって言ってるのと同じだ」<br>
     秋  「で、心構えがない分、失敗に気付いた時に脆い」<br>
     零  「それまで何も知らずに幸せ面してた報いだ。自業自得だと思って精々苦しめば良い」<br>
     秋  「そうだね。<br>
         その苦しみをすぐに忘れて何度も繰り返す鶏頭は僕も嫌いだけど、でも一言ゴメンて謝ってリセットして、<br>
        次の日から別人になれるなら失敗しても良いんじゃないかと思う」<br>
     零  「仏の顔も三度まで、か?」<br>
     秋  「ちょっと違うかな。自覚ある悪は嫌いじゃないんだ」</p>
    <br><Br>
    <p>
     高  「皆が共通の真実を掲げる事はない、か」<br>
     真  「何の話だ?」<br>
     高  「結局、法という一方的な真実を押し付けているんだなあと思ってね」<br>
     真  「正義の味方は、押し付けがましい位で丁度良いんじゃねえか?<br>
         一緒にいたいからルールを作る。作ったら守らせる奴が要る。<br>
        個人の意識とは別に団体の意識がなければ、こう何億人もの人間が一緒にいられる訳がない」<br>
     高  「協調性か。適性はないな」<br>
     真  「どんなヒーローだって万人に好かれはしないだろう? 国民に期待されてんだから、<br>
        法の上にどっかり胡坐かいておけよ。刑事さん」</p>
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  • またシリーズすっ飛ばして読んでしまいました。
    キャラクターは軽い感じなのだけど、事件だけみると内蔵だけ落ちてるなんて想像するとけっこうグロイかも。(2002.6.2)

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著者プロフィール

茨城県出身。芝浦工業大学工学部機械工学科卒業。1999年『銀の檻を溶かして』で第11回メフィスト賞を受賞しデビュー。著作に、デビュー作を始めとする「薬屋探偵」シリーズ、「ドルチェ・ヴィスタ」シリーズ、「フェンネル大陸」シリーズ(以上、講談社)などがある。2019年5月に「うちの執事が言うことには」が映画化された。

「2023年 『雨宮兄弟の骨董事件簿 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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