大久保長安 下 (講談社文庫 ほ 14-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061848115

感想・レビュー・書評

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  • 上巻では人格者として描かれていたのだが下巻では一転野心家として物語が進んでいく。一般的な長安像を越えていないのは残念でした。多額の不正蓄財があるとか諸大名との謀反の血判書があるとか普通に考えたらあり得ない。一つ言えるのは長安の尽力で徳川の経済基盤が盤石になり大きな派閥であった大久保党が解体された事はどちらも徳川政権にとってプラスになっている事実。上巻で期待し過ぎました。

  • 読んだのはハードカバーだったんだけど、文庫の方しかブクログには登録されていなかった…。
    後半は読んでいて沈んでくるね。


    大久保長安がどうして最終的に失敗してしまったのかを考えてみました。
    ①エンターテイナーだったから
    ②能力がありすぎたから
    以上の理由を思いつきました。

    ① 長安は猿楽師の子でした。ゆえに人を喜ばせることが好きだったんだろうなと考えてしまいます。つまりエンターテイナー。
    人を喜ばせたいから「能匠」を目指したし、家康が喜んでくれるから明らかなオーバーワーク(金山経営・インフラ整備とか一手に引き受けていた)でも誠心誠意・粉骨砕身で政務をこなしたのでしょう。
    最終的には家康以上の政治パフォーマンスをしたいと思って野心が芽生えちゃったんでしょう。
    ② 長安に多彩な能力があったのは明らかです。しかし、能力がありすぎたから天下人と敵対できる存在になってしまったんでしょう。
    「分をわきまえなかった」から没落したとは言えないですね。天下を動かせるだけの力はありそうでした。
    完全に出る杭打たれたんでしょう。「能ある鷹」にはなれなかったんですね。


    とはいえ長安のエンターテイナー気質は切ないところがあります。

    人を喜ばせるために無理しちゃったり、ギヴ・アンド・テイクの関係をうまく作れず、ギヴしかできない関係を作ってしまうのはエンターテイナーの「あるある」です。

    エンターテイナーは観客に一方的に「楽しみ」をギヴしなくてはなりません。ギヴできなくなった時、飽きられてお客から見放されます。
    羽振りのいい人間が金を出し渋ると途端に周りの人間が手のひらを返すのと似ていますが、これはギヴ・アンド・テイクの関係を健全に作れていないからです。

    長安はとても能力の高い人間でした。しかし、それ故に自分が得る利益より、他人に与える利益の方が多くなってしまっていたのではないでしょうか。まさにエンターテイナーのように。
    このアンバランスは人に早く見限られるという危うさを内包しています。
    長安はそういう人生を送ってしまったのではないでしょうか。

    より良い人間関係を作るためにも、損得のバランスを健全にできる能力を身につけたいものです。

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