- Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061976757
感想・レビュー・書評
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自分にとってのオールタイムベスト小説。
何年かぶりに最初から読み返した。以前よりも受ける感銘は深かったように思う。
わからないからこそわかりたくてどうしようもなく惹かれてしまう他者との関係の難しさや、自分のことだけ考えていれば済む一人の気楽さを乱す他人の侵入に戸惑いつつも執着していく過程の描写の見事さに感嘆する。
小説と理系的を読み、著者自身の生い立ちを知ってから読み返したので、主人公やヒロインの人生や行動は、家族から離れたくて高校を中退して失踪した著者の想像した、ありえたかもしれない人生なのかもしれないと思った。
最後の夜のヒロインが素晴らしい。ようやく秘密を打ち明けてくれたと思わせておいて、翌朝になれば半分は本当だがもう半分は嘘、都合のいいところだけ信じてくれと書き残して姿を消してしまう。
他者はひとつの謎。人はみな自分の色眼鏡で他者を見ている。相手がどういう人間だろうと見る主体にそう見えるならそれが現実なのだ、彼もしくは彼女にとっての。
結末がどうしようもなく切なくてつらい。
歳をとったせいか、読み終えて少しこたえた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
家族であっても、恋人であっても、そこにあるのは絶対なる「孤」である。「孤」の集団が団体となり、民族となる。私たちは恐るべき「孤」を知っている。独りで悲しくなってくる。絶望を知る。まるで雨の中、泣き叫んでいる子猫のように。「孤」を知る者こそが、「人」をして生きていける絶対条件なのだが、やはり無意識の中で否定するところがある。だからこそ、人は群れるのだ。この小説は、氷の如く冷えた「孤」を十二分に表現しつくした小説だ。文字ひとつひとつの切哀や、むなしくなるもの。
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現代文の問題で出てきて、内容がおもしろそうだったんで読んだ、はず。
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外に開かず、内面を掘り下げるような、少々胸が苦しくなる本
女は女という武器を持っていると改めて感じる -
学生時代、通りがかった古書店でタイトル買い。ズバリ当たり。以後ハマる。
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若い頃、増田みず子にはまるきっかけになった作品。何度繰り返し読んだことか。我が家にあるのは今は無き福武書店版だが、講談社文芸文庫に引き継がれたようで一安心、だったのだが、今時点でアマゾンは在庫切れのようだ。若い世代には、ある種普遍的に訴える物があると思うのだが。