- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061984080
作品紹介・あらすじ
うつつか幻か、郊外の小さな公園のベンチに坐る場所柄につかわしくない粧いの女、その数奇な身の上話に耳をかたむける、これもまた身をもてあまし気味の私。時は春。東京にはさまざまな世間があるのだ。「家庭篇」から始まり告白的「私篇」、そして巨大都市・東京の行末を暗示する「山椒媼」まで饒舌かつ猛スピードで語られる十四の断章。
感想・レビュー・書評
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1988年から1989年にかけて『小説現代』に連載された連作短編シリーズ。バブル景気のまっただ中、そして昭和から平成へと年号が変ったまさにその時に連載されていた作品。野坂作品でよく出てくるテーマを扱いながらどこか冷めて漂白されたような体温のない雰囲気が当時の世相を色濃く反映しているような気がする。「純愛篇」の乙女的なロマンチシズム漂うオチと「隅田川篇」の意表を突く着地点と物悲しい余韻が個人的にはお気に入り。
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東京などを舞台とした作品です。
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これは喜劇だろ、すべて。
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東京という街ならではのちょっと歪んだ現代人の姿を切り取った短編集。筋はともかく文章だけで読ませる作家陣に傾倒しつつあったこの頃に水を差すような、かっさかさに乾ききった文章に、久々に衝撃を受ける。相変わらずの無頼さ加減が由来すると思われる戦中戦後のどん底の生い立ちを振り返る文章も見られ、興味深く読んだ。けれど否応なく感じられる古くさい感じは、日本の時代を他のどこよりも鋭敏に反映する東京という街を活写すればするほど避けがたく纏うことになる泡沫の時代性の証左なんではあろうなあ。