宙返り(上)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 98
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (454ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062097369

作品紹介・あらすじ

いったん「神」と信者たちをコケにした、棄教者のリーダーが戻って来た。脇腹に「聖痕」をきざんで。待ち受ける急進派は、「悔い改め」を社会にもとめる構想をたもち、祈り続けてきた女たちは、集団での昇天を意図する。教会は、再建されうるのか?ノーベル賞から5年、大江健三郎、小説復帰の大作。

感想・レビュー・書評

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  • 序盤はやや読みにくいが、全体としては読みやすい部類。オウム真理教の事件に触発された作品はいくつかあるが、その中でも珠玉の構想力を備えている。

  • "自然の総体である神が、恢復不能の病いにおかされていることになる。"(p 421)

    物語の視点、語り手 木津

    登場人物
    師匠(パトロン)
    案内人(ガイド)
    木津 画家
    育雄
    踊り子(ダンサー)
    荻青年
    技師団 かつての急進派ら
    古賀医師 技師団の一人
    静かな女たち

    物語
    木津は、小学生時代に美術を通して印象的な出会いをした育雄と再会する。
    師匠と案内人は、自分達の信徒である急進派らの動きに危険なものを察知し、今までの自分らの説いてきた教義は全て冗談でしたという「宙返り」をTVを通して行う。
    そして、師匠と案内人は、地獄のような日々を送ったという。
    そんな師匠と案内人が、再び、宗教活動を再開するという。
    師匠と案内人の関係は、師匠が見たヴィジョンを案内人が、こちら側にいる人達に通じる言葉で解釈を与え、解説するというものである。
    そんな彼らに、急進派らは、案内人を吊し上げ、死に至らしめてしまう。

    その再開した宗教活動で木津は、案内人の役割を与えられる。
    木津と育雄は男同士の肉体関係を持つ。

    [レビュー]
    率直に言って、凄い構想力だと思う。

    この『宙返り』は、オウム真理教事件を受けて書かれたものであるが、この物語において、オウム真理教は、どのような位置を占めているのかが気になりつつ読んでいたが、当初、オウム真理教の存在はほとんど見せなかった。
    が、原発占拠を試みようとした急進派らの存在。
    その急進派に属する医師である古賀医師の存在。
    オウム真理教との一致点を思い浮かべずにはいられない。

    物語が師匠と案内人が、宗教活動を再開する時点で、オウム真理教の存在が姿を現した。
    師匠と案内人が行う宗教活動、宗教法人は、オウム真理教に似ている面もあるが以て非なるものという位置付けが物語の中の一般大衆の受け取り方であるようだ。

    オウム真理教事件を受けて、大江健三郎氏が何をどのようなことを読者に訴えようとしているのかを考えつつ、下巻に取りかかった。

  • 「後期の大江健三郎は読みにくい」という話は聞いていたが、本当に読みにくかった……というか、ほとんどまともに読むことができなかった。文体に身を任せて流れるように読もうとすると途端にはじき返されてしまう。読み手に集中を強要するような文章で、少しでも気を緩めると物語がまったく頭に入ってこなくなってしまい、ページが進まない。

    初期に比べて描写の巧みさはむしろ極まっているが、極まりすぎてもはや僕のような読み手はついていけない段階に突入してしまっている……。話は面白いし興味も持続しているのだがどうしても読み進めることができない。これはこれで稀有な体験ができたと言えるかもしれない。

    無念。少し時間を置いて再挑戦したい。

  • 「大いなる日に」とはシチュエーションが異なる(救い主は殺されたし)が、その続きに位置するような感じ。 「魂のことをする」ことについて正面から考えて書くという勇気がすごいと感じる。いつものように最後は暗い結末、これでも癒しがあるとする立場がまたすごい、また、10年経ったら読んでみよう、、、かな。

  • サマーソルト(宙返り)を公言した教祖は、その後どうやって生きている?
    長編だが、中盤以降は一気に読める面白さ。文豪の深い知識が小説に生きている。
    驚くほどの完成度。目立たない一冊だが夏の夜を読書で過ごしてみては。

  • 大江文学に挑戦 宗教の転向をテーマに 宙返り ギー兄さん 静かなる女たち よな パトロン ガイド 技師団 いい加減にしてくれと言いたくなるほどの象徴としての暗号の羅列。難しい。

  • 大江健三郎って、すごい作家ですよね。

    どんな話を書いているのか、すごい興味を持っていました。


    まず読んだ感想としては、コレはすごい小説だな、という感じでした。

    よく、こんな小説が書けるなあ、というのが、偽りのない感想です。


    でも、すごすぎて、なんかわけわからん、という感じです。

    はっきり言って、読んでて楽しくないです。

    面白くないです。

    でも、なんか深いんだろうなあ、という感じはします。


    たぶん、もう1回読めば、だいぶ理解が進むとは思いますが、まあ読まないでしょうね。

    興味がある人は、どうぞ、って感じですね。

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著者プロフィール

大江健三郎(おおえけんざぶろう)
1935年1月、愛媛県喜多郡内子町(旧大瀬村)に生まれる。東京大学フランス文学科在学中の1957年に「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。さらに在学中の58年、当時最年少の23歳で「飼育」にて芥川賞、64年『個人的な体験』で新潮文学賞、67年『万延元年のフットボール』で谷崎賞、73年『洪水はわが魂におよび』で野間文芸賞、83年『「雨の木」(レイン・ツリー)を聴く女たち』で読売文学賞、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛賞、84年「河馬に噛まれる」で川端賞、90年『人生の親戚』で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。94年には、「詩的な力によって想像的な世界を創りだした。そこでは人生と神話が渾然一体となり、現代の人間の窮状を描いて読者の心をかき乱すような情景が形作られている」という理由でノーベル文学賞を受賞した。

「2019年 『大江健三郎全小説 第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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