情緒と創造

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062111737

作品紹介・あらすじ

多くの人は、人には心があることを忘れてしまっているように見えますし、教育もこんなことを続けているとどうなるのだろうというような教え方を変えようとはしません。それでわたしは、わたしの心持ちを少数の人にでもよいから一度沁々聞いていただきたいと思うようになりました。-甦る名著。大数学者・岡潔の言葉。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の将来を憂いての教育論。
    義務教育の弊害や教育の目的などの疑問を呈し、(昭和30年代当時の教育方法を正しい教育に改めて)新たな教育により育った人間が世の中で活躍するまでは何もするなとまで言い切る強さ。
    学校だけではなく、生まれてから大人になるまで、家庭や学校でいつどの時期にどういうことをどうやって学ぶべきかということが岡自身の経験に偏ってはいるものの、なるほどと思わせることが多く語られている。
    理解より記憶が優先する時期がある事や好奇心の芽を摘まないこと、批判を避けること、恥ずかしさを知ること、成熟は遅い方が良い…
    岡の心配した時代の教育を受けてきた自分だが、その後の教育はより悪い方向に進み、今になってようやく見直し(混乱?)らしきものがされ始めている感じ。
    そして残念ながら日本の状況は岡が心配した通りのものになっている。
    これは日本だけでなく、デュポスが『内なる神』で危惧していたことも同じ。
    先が暗い社会だからこそ、情緒を大事にしたい。

  • ★図書館だよりNo.54「一手指南」 
     松田健先生紹介図書
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    【所在・貸出状況を見る】
    http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=10400825

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  • 「人間の建設」で著者を知ってから気になって購入した。
    途中で積ん読になってしまった。

  • 著者は20世紀の大数学者。晩年、教育の在り方を憂い警告を発し続けてきた。

    「多くの人は、人には心があることを忘れてしまっているように見えますし、教育もこんなことを続けているとどうなるのだろうといような教え方を変えようとはしません。それで私は、私の心持ちを少数の人にでもよいから一度沁々聞いていただきたいと思うようになりました」

    「大自然は人の子を有無だけではありません。これを育てます。これがほんとうの教育です。人はその手助けをします。これを人は教育といっていますが、本当は教育の手助けなのです」

    +++

    カウンセリングを職業とするようになって、自らの心の持ちようを清めることに務めたいと考えるようになった。教育に携わる姿勢もそうだ。

    おおよそ私は自らの受けた「教育」というもの順応し、システムに組み込まれるようにして生きてきたが、そのことへの反発が現在の自分を動かす原動力のひとつにもなっているのだろう。

    そして、そういった感情に対しての私の向き合い姿勢は「怒りを解放してあげよう」ということ。

    著者は著作の中でこのように触れている。

    「情緒の濁りはいけない。情緒は喜怒哀楽によって濁ります。とくに、人を恨むというようなことをするとひどく濁ります」

    「いったい、情緒の中心をまとめているものはなんでしょうか。表現することばがむずかしいのですが、しいていうならば愛だと思います。なかんずく、慈悲心を欠いては、とうていまとまるまいと思います」

    「情緒の中心がまとまらなければ、外に表れようと表れまいと、正確分裂です」

    +++

    フランスの自由として「自由とは、他人の自由を尊重する自由を享楽するということだ」という言葉が紹介されている。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00114496

  • ところどころ内容が重複している事を除けば
    いう事なしです。

  • 人とし無くてはならないもの。

  • 昭和を代表する大数学者であった岡潔氏。数学の分野だけではなく色んな分野において閃き創造することは、その人が養った「情緒」によると云う。確かに自己解釈をすれば、学者にしても芸術家にしても感性が存在しなければ新しい分野や領域を発見し生み出す事は不可能だろう。
    本書の中で岡潔は感性や情緒を育まない押し付けによる教育を否定している。
    初めて岡潔という人物を知った。改めて思うのは現代の情緒や文化を忘れ、飼い慣らされたような社会は創造性を失った愚でしかない。

  • 素直に、「好ましい」と感じてしまう。
    多分合うのだと思う、好きなものは好き。

    作者の言葉を借りれば「いいなぁ」という感じだろうか。
    これが情緒でしょうか。

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著者プロフィール

1901年生まれ。三高をへて、京都帝国大学理学部卒業。多変数解析函数の世界的権威者。理学博士。奈良女子大名誉教授。学士院賞・朝日文化賞・文化勲章。仏教・文学にも造詣が深く、『春宵十話』『風蘭』『紫の火花』『月影』『日本民族の危機』などの随想も執筆。晩年は教育に力を注いだ。

「2023年 『岡潔の教育論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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