箕作り弥平商伝記

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  • 講談社
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062141147

感想・レビュー・書評

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  • 箕作り弥平さんの一本気で、負けず嫌いで、生まれながらの足を嘆くでもない、前向きな生き方に最初から惹きつけられた。また、幼馴染みの幹夫さんがまた良い。富山の売薬さんとの出会いで、学んで行く姿勢も素直だ。ただ一目惚れしたおキヌさんへの一途な想いが遂げられず残念だった。サンカとか、部落出身とか以前は言われたそうだが、もしかしたらこの日本の令和の時代にも未だに悪しき差別は存在するのだろうか?

  • 熊谷達也は文章が上手い。
     97年に「ウエンカムイの爪」で小説すばる新人賞を受賞してデビューしたときには、マタギ小説という素材の良さだけで文を書いていたが、2004年に「邂逅の森」で直木賞と山本周五郎賞のダブル受賞をしたときには、別人かと思うような滑らかさを得ていた。
     ……描きたいものさえしっかりしていれば、技術なんて後からついてくるものだ。ここに、その見本があると思う。

    この表題からは「箕作り名人の弥平の成功記」という印象を持ってしまうが、話はそうではない。本当にひとりの東北青年の生活と仕事と恋を、それだけを描いているのである。それなのに、こんなにも面白い。最後までどきどきしながら読める。

  • 残り数ページでどうやって纏めるのか思ったら,呆気ない幕切れ〜逆子に業を煮やした産婆が左足を引っ張り出して産まれてきた弥平は幼い頃から培ってきた箕作の技には地震がある。15で行商を行うことを決意した弥平は富山の薬売りに商売のコツを教わり,自信を深めて販路拡大と年子の姉が嫁ぎ先を追い出された理由を知る為,秋田から群馬に来るが,何処でも冷淡な扱いをされることに驚愕する。途方に暮れ利根川の土手で思案に暮れていると,箕を抱えている少女に出逢う。追いつくと石礫が飛んできた。橋の下で野宿すると翌朝,警官に捕らえられ,「サンカ」か否か尋問を受ける。解放されたものの訳が分からない弥平は,富山の薬売りに再会し,東北では聞いたことのない被差別部落の実態を聞かされる。少女を忘れられず,求婚に出向くと,部落は村の者によって焼き討ちに遭っていた。箕作り一家を救おうとする弥平は群衆に袋だたきにされ,一家は姿を消してしまった〜東北では被差別部落自体が存在しなかった。普段は表面化しない差別が,関東大震災で表面化する。「サンカの真実」に関する本でも読み,秋田の箕作の技術を学んで,書いたのだろうか? 普段の彼のドロドロしたストーリーがなく,呆気ないのも,被差別部落問題を扱う難しさの故かも知れない。そうしないと救われない問題だからなあ。三角寛の「サンカの真実」はヤラセらしいけど,無戸籍の非定住民は居たに違いないと踏んではいる

  • 秋田で美しい箕を作る弥平は足が悪い。大正の騒乱期を舞台に弥平は関東平野への販路拡大を目指して旅に出る。そこで出会った理不尽な差別と恋に体当たりでぶつかる弥平の生き様が小気味良いし、面白かった。久しぶりに良い時代小説に出会った。

  • わたしが今まで読んで来た(ここまでの作品全部を読んだわけでは無いので,これ以降のわたしの感想/内容は外れているかもしれんので,すまぬ),この本以前の熊谷作品の作風からすると,ここらで作品の幅を広げてみようとかしら,という熊谷さんの意思が現れている本でございます。

    それまでと違って,なんだかとてもくだけた印象のある娯楽作品の様相を呈しているのです。

    しかし,あちらこちに,それまでの作品の流れや薀蓄はちりばめられているので,そういう物語を読んできた読者(わたしのことです:シ-ナ兄い調)にとっては,うんうん,そうそう,と うなづきながら読める作品なのでござった(なに?ござった,それどこの言葉やろ。やっぱ尾張弁かなぁ)熊打ち猟師のまたぎの事。樺太でのエピソドの事。まあ,いろいろあります。

    でもしかし,この作品のトータルでの評価と言うものはあんまし高くなかったのかな,と思えてしまいます。

    まあ,ハッキリ言ってそれまでの『・・・の森』シリーズと較べるとちょっとつま
    らんよなあ,と言うことは否めない事実でござる。

    あれまた言葉がおかしいで,ござる!

    • ryoukentさん
      やっぱりそうか。うーむ。
      やっぱりそうか。うーむ。
      2012/08/24
  • 差別集落について何にも知らない自分を知りました。

    物語としては微妙な精度の作品な気がしましたが、勉強になったぶん良しとしたい作品。

    邂逅の森に登場したあの人が出てて、ちょっとほんわかとした。

  • 箕作りの職人、弥平が主人公。職人ならではの話がとても好きなので読んでみた。若く実直な弥平が行商に出て行った先での出来事がとても面白い。けれど、ただおもしろいだけの小説ではなかった。行商先で直面した社会的理不尽。当時から庶民の生活の中に根付いている差別意識。容易に解決しない重い事実を意識させられた。お話は大正時代ですが、今の自分にも通じる一個人のちっぽけな無力感、そしてその中でも生き続けていく事について思いをはせた。

  • サンカの娘に恋する若い箕作りの物語。
    やはり、悲恋。

  • 熊谷達也氏の本はほとんど読んでいないが、大変面白かった。
    登場人物の設定が巧み、主人公に感情移入して、一気に読んでしまった。
    同氏の本を続けて読んでみたくなった。

  • 秋田で美しい箕を作る青年・弥平。持ち前の度胸と根性で、関東平野を
    めざして販路拡大の旅へ出た。大正末の騒乱期を舞台に、弥平の恋と
    理不尽な差別との闘いを描く、感動の長篇小説。

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著者プロフィール

1958年仙台市生まれ。東京電機大学理工学部卒業。97年「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2000年に『漂泊の牙』で第19回新田次郎文学賞、04年に『邂逅の森』で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞。宮城県気仙沼市がモデルの架空の町を舞台とする「仙河海サーガ」シリーズのほか、青春小説から歴史小説まで、幅広い作品に挑戦し続けている。近著に『我は景祐』『無刑人 芦東山』、エッセイ集『いつもの明日』などがある。

「2022年 『孤立宇宙』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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