仮の水

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 36
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (170ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062148412

作品紹介・あらすじ

「仮」と「真」、どちらかわからない世界。表層的な物質世界と大陸深部との摩擦。一人の越境者として、自己の存在を異言語にさらす作家の目が、全身が、描き出した中国。グローバリズムに侵食され、変容する「現代」を日本語で掴み、鮮烈に映し出した、衝撃の短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • リービ英雄氏の不思議小説『仮の水』を読了。著者の略歴を知って読むと少しばかりは思いは伝わるが、著者の事を全く知らずに読むと正直言ってへたくそな小説としか思えない小説だ。というのは著者はNYに生まれ台湾、日本、香港と外交官の父親の転勤により様々な国で暮らしその土地土地の言語を習得しながら、プリンストン大学で東洋学を専攻といった育ち方をした人物であり、何と万葉集の英訳もしているらしい。だが日本語は母国語ではないのだ。そんな彼が日本文学に挑戦している。そのチャレンジには驚いたが、正直かなり無謀な挑戦だろう。物語は帰国子女がまま陥る自分は何処に所属している人間なんだろうというアイデンティティ・クライシスに陥り悩む主人公が自分の先祖のルーツにかかわかるかもしれない土地をめざし中国を旅をするお話としてよめるが、著者が何を伝えたかったのかは残念ながら不明のママだ。そんなボーダーレスな挑戦であった作品を読むBGMに選んだのは渡辺貞夫の"California shower". 大学時代を思い出す。

  • 主人公の『かれ』の出自がはっきりとしないまま進むのがまだるっこしい。
    近代的な中国と昔のままの中国が混在して混沌とした感じ。
    何だか上手く言えないけれど…乾燥した読後感でした。

  • 2009/2/22購入
    2016/12/10読了

  • 読んでまず思ったのは「中国」の広大さ。そして人の多さ。これは小説なんだろうけれど、地図が欲しかった。 「黄河」が麦畑になっているというのが気になる。 この人の母語は何だろう。英語だと思うのだけれど、漢字を頭の中で変換すると日本語になるのだろうか。不思議だ。

  • 中国を旅する作者と思わしき男が出会った些細な出来事の断片。
    読み始めてすぐに感じる違和感は、文が進むにしたがって次第に強くなっていく。
    「かれ」と呼ばれる男が、何者でどんな風体で、何の目的を持って旅をしているのかが一切省かれているのがその原因だ。
    「かれ」に感情移入をしていいものか、或いは突き放して読まなければならないのか。読み手の立場も不安定なままなので戸惑いは大きい。
    やがて少しずつ彼が東洋人とは違った外見を持っていること、初老と言えるような歳であることなどが分かってくるが、「かれ」の輪郭はぼやけたままだ。
    ショートフィルム、しかしあまり巧く作れていないものを見ているよう。
    蛇足ながら、北京語のルビの適当さにはかなりげんなり。
    ルビも作者の指示で、それで外国人っぽさを出そうとしているのなら、狙いは大はずれだと言わざるを得ないだろう。なぜなら、ルビが正しくないと分かる日本人はそうは多くないだろうから。

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著者プロフィール

リービ英雄(1950・11・29~)小説家。アメリカ合衆国カリフォルニア州生まれ。少年時代を台湾、香港で過ごす。プリンストン大学とスタンフォード大学で日本文学の教鞭を執り、『万葉集』の英訳により全米図書賞を受賞。1989年から日本に定住。1987年、「群像」に「星条旗の聞えない部屋」を発表し小説家としてデビュー。1992年に作品集『星条旗の聞こえない部屋』で野間文芸新人賞を受賞し、西洋人で初の日本文学作家として注目を浴びる。2005年『千々にくだけて』で大佛次郎賞、2009年『仮の水』で伊藤整文学賞 、2016年『模範郷』で読売文学賞、2021年『天路』で野間文芸賞を受賞。法政大学名誉教授。

「2023年 『日本語の勝利/アイデンティティーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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