- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062158961
感想・レビュー・書評
-
ここ数年で読んだエッセイの中で最も心えぐられた。とてつもない才能だと思う。ここまでえぐるのは。人に薦めたい一冊。どの話がどうの、というよりも、どれもいい。「マーニー」を読んだ時の終盤の鳥肌は今でも思い出せるし、何だろう、とてつもなく、冷静なその視線。眼差し。それは、この人自身がすでに母親であるがゆえなのかもしれないなぁ、とか思いながら。恐るべき客観性。それがとてもとてもいい。(11/10/1)
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
表題作含む1/3くらい読んでやめました。
-
ひとつひとつを丁寧に綴っているのはわかる。
文章はきれいだしまとまりもある。
ただ、家族との思い出、備忘録みたくなりすぎじゃ?
ふーん、としか思えなくなってきてた。
途中で読むのをやめた。
長島有里枝だということで期待しすぎたのもあるかと。
フィクションすぎるフィクションを読んでみたいなあ。。 -
長島有里枝さんの「流行通信」での連載がとても好きだったので、初の文章でのまとまった表現作品ということで、とても期待して手に取ったら・・・期待をさらに上回る読書体験に!
「家族」というのは写真家としての彼女にはおなじみのテーマだし、決して小説として凝ったことをしているわけではないし、なのにそんな、ある意味ありふれた家族の肖像が、なんと胸を打つこと。描かれている人々の人物像に魅せられ、かつ自分の周りの人のことも愛しくなるような、大切に読みたい連作だ。
それにしても、身体的な言葉を使っているのに、なおどこか抜け感があって爽快な印象が残った。主観よりもひたすらな観察に重心があるような、それがこの人の文章の持ち味なのかもしれない。
最近発表された写真集「SWISS」も、写真とテキストの二段構えで構成されているので、ゆっくり楽しんでみたいところ。 -
写真家である著者の幼少時の思い出をもとにした、自伝めいたエッセイとも小説ともとれる短編集だ。
写真家というと視覚的な要素の強い作風をイメージするが、本作は逆にどれだけ細部が書き込まれていても文章が像を結ぶような印象は薄く、言葉の連なりがそのまま深く記憶の底に続いていくように思えた。
あとがきまで読み終えて、これは、顔の見えない、言葉で形作られたファミリーポートレートなのだ、と知った。 -
苦しかった。私にとって、文字にするのが一番嫌で難しいと思う家族のことだったから。1つ1つのシーンのディテールを、まるで現像するかのように、濃密な文章で描き出している。いつか忘れてしまうのだろうか。遠い昔の自分と家族に戻りたくなった。
-
モノクロ写真を眺めるように静かに、そして時に鮮やかに綴られる家族の記憶、団地の記憶。
-
このところ写真家の書く本を読み機会が多い。この本も、90年代にセルフヌードなどの「ガーリーフォト」で先駆者的存在となった写真家・長島有里枝の手になる。「群像」に連載された12編に、新たな書き下ろし1編が収められている。 意外と言ってはいけないのだろうが、発表するスキャンダラスな写真のイメージとは全く異質な物語世界だ。自身の子供時代を振り返りながら、記憶に残る細々した品々や人々の記憶を、まるで記念写真をなぞるかのように克明に、13編の自己内省的な物語に仕立てている。中でも惹かれたのは、好きだった祖母の記憶をたどった表題作の「背中の記憶」と、小さい頃の弟を語った「おとうと」。家族に対する辛口の批評が、どことなく佐野洋子さんのエッセイを読んだ時のような印象。それでいて、あふれるような愛情が行間ににじみ出ていて感動的だ。
-
4.5という評価があるとよいのに。
情景が目に浮かんでくる(自然に浮かぶというか浮かべたくなる)のがすごい。鴻巣さんの書評の影響もあるかと思いつつ,自分の生活も良いよと思わせてくれる。