法然の涙

著者 :
  • 講談社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062165426

作品紹介・あらすじ

平安末期から鎌倉初期にかけての混迷する時代、「寒湿貧」の叡山で学問研鑽に努め、専修念仏を追究しますが、飽きたらず、さらに苦難な道を選びます。それは、戦乱に翻弄されて苦しむ人たちの中に入りこみ「癒しと救い」の光を老若男女・貴賤の別なく与える道でした。後世に名を残す弟子たちを育て、多くの人たちに愛されて亡くなるまでの、法然上人の一生を描いています。

【著者メッセージ】
宗教の本質というのは、学問的な研究書では、とうてい描き切れない。なぜなら歴史的文献に記されていないことを憶測してしまっては、科学的研究として成立しないからだ。
そもそも宗教とは、人間の想像力の所産に過ぎない。だから、その核心を掴みたければ、同じ生身をもつ人間として想像力を駆使していくよりほかない。となれば、フィクションこそが宗教の核心に迫るベストな表現手段ということになる。
今まで私は、十二世紀という乱世に生きた宗教家・法然の思想を客観分析し、それを思想史上に位置づけることに、比較宗教学者としての使命を感じてきた。しかしいつからか、法然という一人の男の中に飛び込んで、彼の眼から世界を見渡してみたいという衝動に駆られるようになった。そういう思いで書き下ろしたのが、小説『法然の涙』である。なぜ涙なのか。それは、過酷な人生が人間の眼から絞り出す血の涙と、その過酷さを生き抜いた先に見えてくる仏の光が人間の眼に溢れさせる歓喜の涙の双方を描きたかったからである。(町田宗鳳)

感想・レビュー・書評

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  • 法然の生まれから、亡くなるまでを描いています。
    天台で修業したが飽き足らず、さまざまな道を追い求め、専修念仏に至る道程が、壮絶な修行時代ともに語られます。
    浄土宗の成立がよくわかりました。
    南都6宗と天台、真言宗の反対がいかに強いものだったかが、当時の時代背景などともに、語られます。。
    念仏宗をいかに恐れていたかが理解できました。

  • 法然上人の生涯を異色の経歴をもつ宗教者が描いた小説。とんぼの本『法然のゆるし』で史実を確認しながら読み進めた。と言うと冷静に読んだように思われるかもしれないが、実は読みながら何度か泣いた。親とのつらい別れ、徹底した経典理解を経て、念仏にたどりつく過程に心打たれた。学生時代、点取り虫だった私も、年齢を重ねる中で、教科書だけでは理解できない経験をしてきたからかもしれない。

  • 小説を読むのは久しぶりで、物語にひたれました。

  • 臨済宗の大徳寺から渡米し他力念仏の教えに導かれた著者町田宗鳳師の初の小説。

    著者は、ただ単に小説を書きたかったのではない。
    小説からしか伝えられないものがあるからだと云う。

    読む者を800年以上前の日本に引き込むこの物語は、末尾に「フィクションである」と但し書きがあるようにかなり筆者の想像が含まれている。(法然上人の実の両親についてなど)

    また教義の面では、定善の観想念仏の作法や、六時礼讃を念仏と呼称する点において不勉強が感じられた。

    しかしながら、法然の四国流罪の様子、晩年の民衆との対話には、これぞ法然という慈悲と知恵が惜しみなく表現されており、読む者の心に法然の暖かさが伝わってくる。

    法然という人物を800年の時を超えて知るにはおすすめしたい一冊だ。

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著者プロフィール

1950年京都市生まれ。14歳で出家し、大徳寺にて修行。34歳の時に大徳寺を離れ渡米、ハーバード大学神学部で神学修士号、ペンシルバニア大学東洋学部で博士号を取得。シンガポール国立大学大学助教授、プリンストン大学准教授、東京外国語大学教授、広島大学大学院総合科学研究科教授を経て、現在、広島大学名誉教授。日本・アメリカ・ヨーロッパ・台湾などで「ありがとう禅」を開催している。著書に『法然・愚に還る喜び─死を超えて生きる』『山の霊力─日本人はそこに何を見たか』ほか。

「2016年 『講座スピリチュアル学 第7巻 スピリチュアリティと宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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