- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062167925
作品紹介・あらすじ
安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放、銀行大合併、UFJ戦奪戦、小泉・竹中郵政改革…現場にいたのは、いつもこの男・西川善文だった。密室の出来事すべてを明かす。
感想・レビュー・書評
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面はゆいとか忸怩たると言いながらも、ラストバンカーというタイトルを自らの手向けとして許す、そこには謙遜を必要としない自信があるのだろう。自らより前の頭取を品の良いお公家様と言いながら、後継にバンカー無しという意味にも取れる「ラスト」の称号。この傲慢さが語りを象徴する。
安宅産業の破綻処理やイトマン事件、さくら銀行との合併から三井住友銀行の頭取を務めるまでの歴史を綴りながら、やはり気になるのは、郵政民営化から日本郵政社長に就任した後、かんぽの宿の問題だ。本著で語るのは払い下げ金額の適正さ、議事録を残さなかった反省程度。民営化に関わったオリックスが払い下げの対象になった事の危うさには触れず。李下に冠を正さず、という態度は見えず。
行内から政治抗争にも巻き込まれながら、相当タフな人生を送り、そこには本著に書けない闇の部分も多々あったろう。銀行マンの守秘義務は厳しい。事実ベース、言い訳混じり。本として、面白いかは微妙である。
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初読
私自身に読みこなす力が足りなくてちょっと苦戦しました。
銀行合併や郵政民営化のあたりは知識があったので
割とスラッと読めたけど、安宅産業やイトマン事件は記憶になくて。
えーと何だっけ?でしたw
ですので柔らかい部分だけが印象残っている。
やっぱりこの位の人はテニスに明け暮れててもすらっと
阪大トップ合格しちゃうんだなー。とか
(卒業する時は2番で、君は大学ではあまり勉強しなかったんだなぁ。と言われた、とか。神々の会話かよ)
大阪中之島の東洋陶磁器美術館は
安宅産業の代表?(経営者というより芸術家パトロンタイプらしい)が
社業として体系的に蒐集してた安宅コレクションを
当時152億の評価額、離散しないよう保全の要請もあり、
大阪市に寄贈し、収蔵展示する為に建設されたとか。
へえー!確かにあそこは素晴らしいもんなぁ
住友銀行頭取・会長の磯田氏とイトマン事件の関わりについて
磯田氏が溺愛する長女とイトマンの絵画取引関係とか
(この長女、アメリカに駆け落ちしてパパの秘書に連れ戻されたりのなかなかのじゃじゃ馬娘)
偉いお方でもどこにアキレスがあるかわからんものよねぇ
そして郵政民営化に下りで出てくる鳩山はやっぱクソだなぁ、とかw -
基本的に彼のことは食わず嫌いで評価してなかったけど、ちょっと同情する余地もあるかな。とはいえ、弁明臭いのと正直中身が詰まっていない(時系列でおってるだけで、裏を暴露するようなところがない)ので本としてはつまらん。
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SMBCの元頭取であり、ラスト・バンカーと呼ばれた西川の回顧録。
住友銀行に入行し、安宅産業、イトマン処理を経て、さくら銀行との合併、UFJ争奪戦、郵政民営化までが語られている。
当時、天皇と呼ばれた磯田会長を解任させるまでの話では、西川の信念・凄みを感じ、
さくら銀行との合併時の話では、「さくら銀行の救済」と報道陣に表現された西川が「さくら銀行に失礼だ」と報道陣を一喝した話では、ボスとしての魅力を感じた。
不良債券処理や金融ビッグバンといった金融業界史に残る激動の日々を、まさに中心で過ごした西川の回顧録は、まさに壮絶の一言である。 -
日本の高度成長期、バブル景気、バブル崩壊、失われた10年、いや20年、東日本大震災、福島原発事故など、激動の時代をバンカーとして心血注いで取り組んでこられた西川善文さんの、生々しいまでの回顧録。日本郵政の問題も、当事者の視点で語られる真実と、報道を介して知る内容との間に大きなギャップがあり、非常に考えさせられた。
銀行とは、経済を支える大きな要であると改めて感じる。真山仁さんの「ハゲタカ」を読んだときにも同様の感想を持ったが、本書を通して、銀行には、不良債権だけでなく、国の経済の方向性を決める大きな役割があると感じた。
一部消化不良の部分もあるので、再読中。 -
安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放、銀行大合併、UFJ戦奪戦、小泉・竹中郵政改革…。数々の不良債権と戦い、『不良債権と寝た男』とまで言われた筆者がつづる壮絶な仕事人生です。
僕が西川氏について覚えていることは郵政の社長を辞任する際の非常にいらだった様子の会見模様でした。それが本書を読むきっかけになったといえばなったのですが、一読して日本の経済史を揺るがした事件。安宅産業処理、平和相銀・イトマン事件、磯田一郎追放、銀行大合併、UFJ戦奪戦、郵政改革…。これらの重要な局面にいつも筆者が裏で動いていたということを知って衝撃を受けました。
筆者いわく、自分のような経歴を持っている人間が頭取になるということは本来ありえないことだが非常時だったからこそ、自分が頭取になったのだろう。というようなことを述懐されていたことが印象に残っています。本書の構成は郵政の社長になる前の住友銀行および、合併されて三井住友銀行時代のことが大半を占めるのですが、安宅産業の処理には文字通り東奔西走して処理に当たったということや平和相銀・イトマン事件では銀行とバブル時代の『ヤミ紳士』との関係が問題視されていた中でも粛々と破綻を回避するために文字通り『死に物狂い』で事にあたっていたのだな、ということが文章の節々から感じられ、経済人の回顧録としてはかなり異色な印象を持ちました。
そして、小泉・竹中改革の目玉だった郵政民営化でその舵を取るべく社長に就任する後半部では、巨大な日本郵政を現場主義で改革しようとした部分と、それが奥様いわく『政治オンチ』が災いして鳩山邦夫総務相(当時)との軋轢に始まって、内部からのさまざまな『抵抗』に遭い、やがて亀井静香氏から『引導』を突きつけられる場面に至っては、さぞかし無念だったろうな、と思ってしまいました。正直に言って上述した記者会見の印象があって、僕は筆者にあまりいい感情を持ってはいなかったのですが、この本を読んで、氏が『最後の顔が見えるバンカー』という意味でつけられた書名にもなっている『ザ・ラストバンカー』という異名は伊達じゃないんだ、ということを思い知ったのでございました。 -
職場の本屋の平積みから購入。
日本郵政の社長で政治にもみくちゃになって、たぶんいろいろな批判もされているのだろう。
自分は、素直に彼の指摘を受け入れ、自らの反省材料にしたい。
①郵政のファミリー企業との関係を見直す。(p243)
役人は、早期退職があるので、その受け皿の組織をつくるために、ファミリーと称される法人をつくってそこを通して、退職者の賃金を確保しようとする。
これがコスト高につながり税金の無駄づかいになる。会社も経費をものすごく切り詰める時代、こういう発想を一切捨てて、退職後は自分の力で生きるよう能力を自分でつけるようにしたい。
国益、国民の利益にならないことに,NOということが大事。
②後任の頭取に同じ住友出身の奥さんを指名した。(p211)
人事のたすきがけより、適材適所を行う。いうはやすし、やるはかたしだと思うが、それを断行したことは立派だと思う。
③さくら銀行との合併後、100日以内にあらゆる部署が取り組むべきコスト削減、リストラ計画をまとめ着手する「百日作戦」を打ち出した。
今の役所の合併組織だが、10年たっても、まだまだ風通しも悪く、無駄もある。きっと当時の銀行でも不平不満はあったのだろうが、それを断行するトップの力はすばらしいと思う。
民間のトップの回顧録から、それを自慢話と受け止めずに、自分は、素直に、役人ができていないことを反省したい。 -
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