21世紀の脳科学 人生を豊かにする3つの「脳力」

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062169615

作品紹介・あらすじ

あなたはまだ脳の本当の力を知らない

「つながる」「心を読む」「調和する」――人間(の脳)に与えられたこの3つの力こそ、人類発展のカギであり、私たちがより良くくらすためのヒントとなる。社会認知神経科学の第一人者が語る、脳研究の最前線。


(本書の主な内容)
オフタイムにこそ脳が標準化される
シーソーのように働くふたつの知性
群れで暮らすメリットとデメリット
からだの痛みと失恋の痛み
前帯状皮質と「愛着行動」
利他主義――他者の幸せこそが自分の幸せ
相手の心を読むミラクルな心
自閉症の子どもたちの目に映る世界
他人のものだった“自己”
パノプティコンな私たち
なぜ、お金と幸せは関係がないのか
理想の生活は「大学寮」
成功するリーダーに最も必要なもの

感想・レビュー・書評

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  • この本でもデフォルトモードネットワークについては触れている。

    やはり著者によって解釈の仕方が違うというのが気になるがやはりDMNについてはまだまだ未知の部分が多いからなのだろう。

    「社会認知神経科学」というのは初めて聞きましたがなかなか興味深い学問な気がします。

  • 【配置場所】工大特集コーナー【請求記号】 491.371||L
    【資料ID】91150994

  • 情動の源泉とは何かを教えてくれる本である。無意識に他者のココロを読むことに如何に影響を受けているか、人とつながる能力「メンタライジング」から解き明かしたものである。
    また、人間を動かすお金以外の原動力を「SCARF」Status/Certainty/Autonomy/Relatedness/Fairnessのこともロックの言葉の引用も興味深い。特に公平性の問題は根深い。他者を等しく扱うことの大事さはコミュニティ、グループでの活動では特に大事である。そのためにもメンタライジングで他者の立場を理解した上で行動を選ぶことが必要だ。
    いくつかの心理実験が示されているが、それらの異常性も半端ない。そういう無謀とも言える実験が現代の我々の人間関係を司る脳力を解き明かしてくれているのでありがたいのではあるが。
    目的を達成する脳力を磨くのも大事だが、社会的な脳力を増やしリーダーシップを養うことが自分を助ける。よく言われることではあるがその基本原理を丁寧に解説したのが本書と言えよう。

  • 共感とはだれかを助けるという行為につながる複雑なプロセスである。ニーチェも自己感とは本質的に内面的なものではなく、自分という存在の中心を成すものではない捉えていた。

  • 最近はやりのメンタライジングなど、社会的認知に関する本です。著者はこれからの社会をよくするためには社会的認知が必要であると主張し、つながる、心を読む、調和するという3つの能力が重要であると述べています。著者が体が傷むときの活動する脳の部分と、心が痛むときに活動する脳伸部が同じであるという実験を行った研究者のようで、様々な研究成果を上げ、自身の主張を裏付けていきます。ただ、研究成果には概ね様々なものがあって、主張に合わないものもありそうだが、話をシンプルにするために、そのあたりが簡略化されているようにも感じた。ただ、著者の主張には納得できるところも多い。今流行りの社会的認知の一般向けの本で、自身が実際の研究者であるためか説得力のある本です。

  • 人類が社会性を獲得したのは、哺乳類が地球に誕生した2億5千年前。哺乳類は社会的な動物になる事で厳しい生存競争を勝ち抜いてきた。
    人類発展に繋がった3つの脳力
    1.つながる
    一人で生きていけない乳児は養育者から放っておかれるという社会的分離を「社会的苦痛」として感じるように発達した。一方、養育者の脳も我が子の世話を報酬と捉え、「社会的喜び」を感じるように発達した。
    2.心を読む
    自分以外の人間も考えを持ち、その考えに基づいて行動するという現象を理解する「心の理論」を獲得した。さらに、相手に共感するミラー系や、他者の心の状態を読み取るメンタライジング系の2つのネットワークを進化させた。
    3.調和する
    「自分とは誰なのか」という概念を生み出す脳の領域は私たちが周囲の影響を受け、社会の規範や価値観を取り入れるルートでもある。脳は同じ領域を用いて本人も知らないうちに、外部の信念や価値観を私たちの中にこっそりと運び込んでいる。こうやって私たちの脳は、社会の規範を内面化し、その上に自分自身の自己感を作り上げ、私たちが外部の信念や価値観に従って考え、行動し、社会の調和を生み出す仕組みを作り出した。
    何も思考していない時に反射的に活性化する脳をデフォルトネットワークといい、このネットワークは社会的認知(社会の出来事や周囲の人々にまつわる情報を処理する認知プロセス)を進めている。つまり、人の脳のデフォルト状態は社会的認知に用いられており、それが故に人は社会に関心を持つ。
    脳の空き時間こそが脳のデフォルト設定の状態。人間はデフォルトネットワークによって社会的に考える準備をし、他者の心の状態から世界を見る準備をしている。
    本当に頭の良い人間とは、相手の心の状態を読み取り、他者と協調できる社会的能力に優れた人。
    全体重に占める成人の脳の割合は2%に過ぎないが、体全体の20%のエネルギーを消費する。胎児時代には60%ものエネルギーを消費する。
    人間の前頭前皮質が発達し終えるのは20代になってから。
    母親との分離はコルチゾールの分泌を促す。このストレスホルモンは社会性が育たない、集団に馴染めないといった社会的障害や認知障害を引き起こす。
    動物の母子を分離するとドラッグを中止、減量した時の禁断症状のような苦痛を引き起こし、再び引きあわせると双方のつながりが痛み止めのように作用する。しかも、両者の間には依存と呼ぶにふさわしい愛着関係が存在する。
    人は公平に扱われると、自分は大切にされていると感じる。公平な扱いは社会的なつながりを生む。
    家族や恋人の甘い言葉だけでなく、見ず知らずの他人の好意や良い評価にも脳の報酬系は活性化する。
    人から好意を持たれる時は、オピオイドによって快の情動が生まれる。一方、人の世話をする時には快感物質のドーパミンの放出に伴ってオキシトシンが分泌される。
    人間にオキシトシンを投与すると、「好きな人」と「知らない人」に対して親切にし、「嫌いな人」に対しては敵意が強まる。
    「自己充足的予言」とは、無意識のうちに周囲や世間の期待に応えるような行動を取ってしまい、それが結果的に現実のものとなる現象。人類は自己充足的予言によって利己的になってしまったが、本来は利己的であり、利他的である。
    じゃんけんのエキスパートの勝つ極意は、「こっちがどの手を出すかと相手が思っているかを予想する」事。
    ポーカーのプロによると、ポーカーの勝負は
    1.辛抱強さ
    2.はったり
    3.相手のはったりを見破る能力
    によってほぼ決まると言う。
    新しい情報に触れる時でさえ、私たちの脳はその情報を誰にどれほど説得力ある方法で伝えられるかについて考えている。
    人間の脳が現在の大きさになったのは約20万年前。複雑な道具を使いこなし、言語を用い、宗教や工芸といった高度な文化を持つようになったのは5万年前。
    ミラー系を持つ霊長類の中でも、メンタライジング系を持つのは人間だけ。霊長類は「何を」の世界で生きているが、我々は「なぜ」の世界で生きている。豊かな意味や解釈によって他者の好意を理解できるのはこの惑星で我々人間だけ。
    共感の3つの心理的プロセス
    1.他者の心の状態を読み取る。
    2.相手の感情を自分のもののように感じる。
    3.行動を起こさなければという気持ちに駆られる。
    人は自分自身が自制心を持つ以上に、周囲の人間に自制心を求める。自制心とは自分自身よりも周囲の人間の役に立っている。
    「ある時、学校で将来の夢について書く宿題が出た時、僕は「幸せになりたい」と書いたんだ。すると先生は、「あなたにはこの宿題の意味がわかってない」と言った。だから僕は「先生には人生の意味がわかってない」と答えたんだ。」ジョンレノン
    お金と幸福度の間に大きな関係はない。所得が幸福度を左右する率は全体の2%、貧困ラインを下回る層のみ。
    1965年、人生最大の目標に「経済的な成功」をあげた大学生は45%。当時はまだ「人の役にたつ」や「家庭を持つ」という回答のほうが多かった。ところが1989年に同じ調査をしたところ、「経済的な成功」は75%にまで上昇した。物質主義を人生の重要な価値観として受け入れた結果、幸せな人生からますます遠ざかった。
    私たちの脳は社会と繋がるようにできている。社会と繋がれば繋がるほど幸せを感じる。
    仕事は社会の経済成長の原動力であり、個人の大切な収入源でもある。大抵の人は仕事生活の大半を集団の中で過ごす。ところが、企業はつながりの重要性をよく理解していない。家族のような温かみもなければ積極的な交流機会のない職場が多い。
    人間を動かすお金以外の5つの原動力は、地位、確実性、自律性、関係性、公平性(SCARF)。
    昇給よりも今よりもいい上司を求める人の方が多い。
    上司と部下の関係が上手くいかないと、生産性に換算して年間3,600億ドルの損失をアメリカ経済に与える。
    周囲の人間を理解したいという欲求は脳の基本ソフトとして組み込まれている。
    ワーキングメモリを鍛えると、神経細胞が新しく生まれ、ワーキングメモリと流動性知能の両方が向上する。
    「つながる相手のいない人生は、人間が経験する最悪の病である。」マザーテレサ

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著者プロフィール

マシュー・D・リーバーマン

ハーバード大学卒。カリフォルニア大学ロサンゼルス校心理学部教授、精神医学・生物行動科学部教授。『Social Cognitive and Affective Neuroscience(社会認知と感情神経科学)』誌の創刊者であり編集者も務める。2007年には、アメリカ心理学会が心理学分野の発展に貢献した若手研究者に贈る「the Distinguished Scientific Award for an Early Career Contribution to Psychology」を受賞した。社会神経科学分野において、世界で最も注目される研究者のひとりである。

「2015年 『21世紀の脳科学 人生を豊かにする3つの「脳力」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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