- Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062175111
感想・レビュー・書評
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個人旅行のコーディネイトを手がけていた集子(あつこ)が死んだ。数日後、旅行を依頼していた4人の女が彼女の部屋に集まる。彼女たちは、生前の集子が書き残した「最後の旅」のことを知って心を動かされる。集子は世界中を旅しながら「私のための樹」を探していたという。4人はキューバ、ポルトガル、南フランス、インドと、集子がそれぞれの旅の為に残した資料を受け取り、各々の生活に戻ってゆく。しかし集子の死、無くなってしまった旅、集子の最後の旅が、4人を新しい人生へと導いていく。
展開が少々無理矢理な感は否めないが、気付かされることが多い本だった。私は見知らぬ土地を歩くのが好きで、連休があればどこへ行こうか妄想ばかりしている。集子も旅行好きが高じて個人旅行のコーディネーターになったわけだが、この物語を読んで“旅”とは何かを改めて考えさせられた。
集子の死により彼女にコーディネートを依頼していた女性達の旅は無くなってしまう訳だが、集子が各々の為に用意していた旅へ思いをはせるうちに、女性達は今の自分、これからの自分と向き合い始める。一般的に“旅”というものは、どこか遠い土地へ出かけて、日常生活とは異なる体験をして、気分転換や新たな気付きを得るものであると思う。しかし遠い土地、言語の異なる国にまで出向かなければ旅の効用は得られないのだろうか。否、とこの物語は伝えている。偶然見つけたレストランへ入ってみる。いつも購入するようなエレガントな靴ではなく、歩くためのズックを買ってみる。日常生活から少しだけ外れて、いつもとは違う風景を見てみる―そこに今までの自分とは違う自分がいれば、その行為はすでに日常から離れた“旅”と言えるのではないか、と感じた。
私は旅に憧れ、「旅がしたい、どこかへ行きたい」とよく思っているが、いつも遠くを見てばかりだった。大切なのは距離や旅行にかけた金額ではなくて、旅の結果自分がどれだけ変われるか、である。その効果が得られさえすれば、自分が住む街であっても“旅”になり得る。そう思うと、日常生活のすぐ近くに楽しいことが隠れているような気がして、わくわくしてくる。“旅”のきっかけを探しながら日々を過ごすと、いつもの景色も少し違ってくるような気がした。 -
さわやかさを感じました。
自分は自由だと感じていた女性、夫に尽くしていたと思う女性、からっぽだけど人に優しくしたいと思う女性・・・・
集子さんの死という風がふいて、自分を見つめ直し歩き始める女たち。4人に共通点はないけれど、集子さんのあたたかな彼女たちを見つめる目を感じました。 -
FRauの連載小説だったと知って納得。人物造形に深みを感じられぬまま読了。セクシーな料理!と50代の主人公が連発するのには、「なんだそりゃ?」と引く。語られる料理がどれもそれほど魅力的でもないので一層引いた。
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frauに載っていたので読んでみました。
人生は旅の連続、短期間でガラリと何かが変わることは、意外とあるのだ。
でもその何かに気づくかどうか、その波に乗れるかどうかは別物ですよね。
これはあくまで小説の領域の、エンタメだけど、そんなことを考えたら意外と楽しい。