- Amazon.co.jp ・本 (186ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062179935
感想・レビュー・書評
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ひきこもりなど暗く重いものを抱えながらもタッチは抜けるような軽やかさ。納骨という禁忌といっていい儀式をウケルという向日性で受け流す。万機にわたり斜に構えており、何のひっかりもなく滞りもなく物語は進む。クライマックスは穏やかで自然な静謐さに溢れている。不思議な達観と淡々としてニュートラルな流れに心は癒された。
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前から読みたかった「佐渡の三人」が短編集として出版された。面白うてやがて哀しき読み心地。
「旅人」はヨツオさんが亡くなっていることを知っていたので、お元気なころだから何年前かなと思った。佐渡ではよそ者のことを「旅の人」と呼びます。佐渡は教育熱心なところで学者がたくさん出ているけれど、優秀な人は若くして東京へ出て行って帰らない。ヨツオさんも佐渡に納骨されたのかな? -
この小説、好きすぎて困る。続けて2回読んだ。それはそれ、これはこれ、というような距離感が絶妙。全体に漂う空気がここちよいのは、それが好意に由来するからだ。たぶん。そういうところ、とても特別だと思う。愛すべき作品。
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講談社のPR誌「本」11月号の「真・佐渡の三人」はおもしろかった。
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「ジャージの二人」や「夕子ちゃんの近道」の延長線上の、他の家から見ればちょっと変わってるよね、と言われそうな家族たちのシリーズ。佐渡と吉祥寺にに縁がある方は臨場感を持って読めるかもしれない。
今回のテーマはズバリ「死」だろう。
しかしテーマに対する重さや作為的な「泣ける」わざとらしい演出は皆無だ。真逆である。少しだけ不謹慎で、しかも非日常の事態にテンションが上がっている登場人物と、普段の暮らしぶりをまったく崩さない登場人物の対比的な描写に思わず膝を打ってしまう。伊丹十三監督の「お葬式」をなぜか思い出した。
長嶋有のフラットな文体、健在。もちろん強くオススメします。 -
しみじみとシンと心に響く本です。
納骨のため佐渡を訪れる著者(すごーくクロコさん的な人で、「ねたあとに」をもう一度読みたくなります。)の目線からの家族を見る目。
そしてその死。
死んだら静止する。
その一文にズキンときました。
生きていることのある意味滑稽さが 私たちを死から隔絶したものとしているのでしょうが、だからこそ、死そのものは何にも恐いもの、哀しいものじゃないんでしょうね。(大往生を前提として)
長嶋先生のこういった星空を見上げて偶然流れ星を見てしまった!という気持ちになれる小説、やっぱり大好きです。 -
―――私たち家族は、ウケるということをしてきている。―――
ひきこもり、古道具屋、コラムニスト。
テレビゲームでいうところの『ボーナス面』のキャラ、『隠れキャラ』。
愛人のいる祖父。
戒名を、自分で決めてしまった祖母。
納骨のすべてをカメラにおさめる描写は、アデランスの芦田愛菜ちゃんの異様なテンションを彷彿とさせる。(「前のパパでーす」「いまのパパでーす」ってやつ)
暗いテーマなのに、一貫して根が明るい。
著者は長嶋なのか、道子なのか。
「ねたあとに」が好きな人は たぶん好きです。 -
おばちゃん、祖父、そして祖母の死。佐渡への納骨の旅。テーマは暗いのに、悲しさや重い印象はなく、それぞれのキャラが立っていて、終始ユルイ空気が漂う。長男だから長男の嫁だからこうあるべきとか、役割に固執したり、体裁や形ばかり気にしてギクシャクする家族より、よっぽど温かいものを感じた。
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20210514読了
#島
#新潟県