Aではない君と

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062195584

作品紹介・あらすじ

殺人者は極刑に処すべきだ。親は子の罪の責任を負うべきだ。周囲は変調に気づくべきだ。
自分の子供が人を殺してしまってもそう言えるのだろうか。

読み進めるのが怖い。だけど読まずにはいられない。
デビューから10年間、少年事件を描き続けてきた薬丸岳があなたの代わりに悩み、苦しみ、書いた。
この小説が、答えだ。

感想・レビュー・書評

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  • 「自分の子供が犯罪者になってしまったら」こんなテーマの話を最近他にも読んだからか、なんだか、わたしの心もすごく重くなりました。どうしてもこういう話を読むと「こうなるには何かしら家庭にも問題が少なからずあるのに…なぜ親はもっと子供を見てあげなかったんだろう、寄り添ってやれなかったんだろう」
    と思うと同時に、「我が子がそうなったら」と考えると、私だって精一杯やってるつもりでも、愛しているつもりでも、はたから見ればそんなことはないのかも…と思います。改めて子育ての責任の重さ、幼い頃に周りの影響をどれだけ受けやすいか、を感じます。

    心を殺されるのと身体を殺されるのはどちらが悪いの?
    酷いことしても、命を落としたらそちらが被害者になることや、
    罪を償うということ

    最近そんな話ばかり読んでいて、平和な日なんてあっという間に消え去るんだなぁと恐怖を感じます。子供には、特技とかはなくていいから、笑顔で健康で優しい人で長生きしてほしいと、ただただ願います。

  • 小動物に対する残虐な表現あり。

    登場人物が多い割に説明が少ないから追いつけなかった。
    子供が心に抱えてることは、大人や他人では想像もつかないくらい大きくて深いことがあるんだと思った。例えば、頭ごなしに怒ってはダメだなと。

  • 読書家の母からのオススメの一冊
    とにかく重たいテーマなので避けていて、重い腰を上げて一年越しに読みました。
    読み始めたら、これは、なんとしても最後まで読まなきゃと一心不乱で読み切った。
    私も、今まで散々親に迷惑をかけてきたので自分と重ねるところがありました。親にどの様に思われていたのか、どんな話をすべきだったのか、これからどう接するべきなのか。
    非常に考えさせられるお話でした。

  • 前半は、何も口にすることがない息子と別れた夫婦のリアルなお互いへの責めた言葉ばかりが、目につきイライラしてしまうようなシーンが続く。
    事件の真相が分かったとき、息子が口を開いたときよかったと思った。そのよかったという気持ちは最後まで持つことは出来ないけど、罪を償うことがどれほどどれほど難しいか、どれほど周りに影響するかを実感した。
    この夫婦はお互いに子供を持つ準備と果たすべき責任を果たせていなかったんだろうなと思った。虐められていることを、口で言わなくても知ってもらおうとした翼のSOSに気付けなかった親にも十分な責任があると思う。
    親は子供の行動の良い悪いに関係なく、何故それをしたのかを考えるべきだという吉永の父の言葉が印象的。

    「心とからだと、どっちを殺した方が悪いの?」「物事のよし悪しとは別に、子供がどうしてそんなことをしたのかを考えるのが親だ」

    2022/02/22 01:41

  • 子どもが罪を犯した時、親にできることは何か?
    元妻が引き取った息子が死体遺棄容疑で逮捕された。動機は何も語らない。
    重い話だけど読みやすく、現実ないだろうけど無理筋の話でもない。
    最後、どうなって終わるのかな、と思っていたが、なかなかよい(重くて苦しい)終わり方で良かった!
    社会派な作者の作品は自分好み

  • 以前『アイシテル』という漫画を読みました。道枝駿佑くん主演でドラマ化もされたその小説も小学生が小学生を殺害してしまったお話でした。
    この小説も中学生が同級生を殺してしまったお話ですが、読んでいて切なくなるのは加害者の少年の幼さ故の凶行であったということでした。
    『殺しちゃってもいいかな』とそのくらいの気持ちで人を殺してしまうのは、あまりにも短絡的で幼いと思いました。
    思えば自分が幼かった頃、気に入らない人に『死んじゃえばいいのに』と簡単に思っていたことを思い出し、それでも凶行に及ばなかった私と、罪を犯してしまった人との違いは何なのだろう…と思います。
    『死んじゃえばいい』『殺してやりたい』と思っても実行に移さない理由は、人の命は大切だからとかそんな綺麗な言葉ではなくて、『自分が罪を犯したら悲しむ人がいる』という思いなのかもしれないなと思いました。
    自分は誰かに愛されていて大切に思われている…その実感があると、人は踏みとどまれるのかもしれません。

    主人公の翼にはその『愛されていている実感』がなかった。自分は両親からも見放されている、と孤独の中にいたのかなと。
    その孤独が『殺しちゃってもいいかな』になったのかな。

    親子関係は難しいですね。どんなに子どもを思っていても、言葉や行動で伝えていかないと相手には伝わらないんですね。

    今回のお話では、離婚して別居していた父親が翼に寄り添い奮闘していましたが、母親である私からしたら『お母さん、なにしてんの?!』って思いも感じました。

    翼のこれからの人生を思うと、どれだけの困難が待ち受けているか…でも諦めずにいつか心から笑えるようになって欲しいと思う一方、息子を殺された父親の無念や怒りを思うと、少年犯罪の被害者遺族の悔しさはいつまで経っても癒されることはないのだろうな、と心が痛くなりました。

    すごく重いテーマですが、構成や文章が巧みで一気読みでした。

  • 仕事も順調で、恋人ともそろそろ結婚かなと思っていた吉永は、警察から思いもしない連絡を受ける。
    それは離婚し、妻に引き取られていった息子が同級生を殺したというものだった。
    完全黙秘を貫く息子と向き合う日々が始まる中、なんとかして事件のことを話してもらうため、ある決断を迫られることとなる。

    人が罪を犯す岐路なんて日々に無数にあって、それでも平穏に暮らしているのは奇跡なのかもしれない。
    当たり前のことだけど、毎日のようにニュースから流れてくる様々な事件にもこうして当事者がいるのだと思うと胸が詰まった。

  • 殺人者は極刑に処すべきだ。自分の子供が人を殺してしまってもそう言えるのだろうか。私も吉永のように思うだろう。「生きていてくれてよかった。もし、二度と声を聞くこともできず、触れることもできなくなってしまったらどれほど辛いか…誰かに殺されたとしたら…自分の命がなくなるまで、その人間を恨み続けるだろう」さすが少年事件を描いてきた薬丸さん。最後まで読まずにはいられず、涙しながらの読了となりました。

  • 加害者、被害者にならないために。

    自分と、自分に繋がってくれている人たちを大事にしていくために、

    毎日の小さな行動や注意、そして、ときに湧き上がって来る激情を自制すること。

    これらのことがいかに大切かを改めて考えさせられた作品であった。

  • 加害者と被害者双方の感情に、読み手の自分が納得できるラインまで来たにも関わらず、まだかなりのページ数。終盤への掘り下げ方が見事で、引き込まれラストまで手が止まらなかった。
    自分は翼に愛されていた。この一文に全ての人間関係、感情を再認識、反芻。きれいごとやごまかしで締めくくりはしないものの、さわやかな読後感。
    好みの作家さんにまた1人出会えてウレシイ!

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著者プロフィール

1969年兵庫県生まれ。2005年『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。2016年、『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に刑事・夏目信人シリーズ『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』、『悪党』『友罪』『神の子』『ラスト・ナイト』など。

「2023年 『最後の祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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