- Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062198394
作品紹介・あらすじ
豊臣秀吉が朝鮮を攻めた文禄の役。後に萩焼の祖となる李勺光は、そのとき朝鮮で捕まり日本に連れてこられた陶工だった。その際、秀吉の命で毛利家がその身を預かることになる。茶器が戦国武将たちに珍重されていた当時、毛利家では彼の造る焼き物を国の特産品とすべく、勺光を捕虜としては別格の待遇で迎えようとした。朝鮮での戦いで夫を亡くしたばかりの志絵を世話係に任命したのだ。志絵は毛利家・三美人の一人と言われ、夜伽も務めなければならないその任命に屈辱すら感じるが、武家の娘として従容と受け入れる。それから、志絵の煩悶がはじまる。毛利家中と勺光をつなぐ連絡係を務める青年武士・弘太郎に一目惚れしてしまったのだ。作品作りに打ち込む陶工と、若き家人との間で揺れ動く志絵の心。時代も大きく動き、関ヶ原の合戦で敗れた毛利家は、八ヵ国から二ヵ国に大幅減封され、勺光の窯場も萩の地へ移動を迫られるが……。
感想・レビュー・書評
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今年の9月萩に行った際に坂高麗左衛門窯を訪問し、14代当主にもお会いすることができ、その歴史を知る上でも、本著を取り寄せた。
史実としては、残されている者が少なく、この作品も創作の部分があるわけだが、ベースになる歴史の事実関係は学ぶことができる。
萩焼の起源は、豊臣秀吉が起こした朝鮮出兵時に毛利輝元が朝鮮から連れてきた陶工、李勺光兄弟にあたる。
この小説は、李勺光とそこに嫁ぐことになった武家の娘との恋愛物語。
母国の誇りを背負った李勺光は作品を極めようとし、自分を追い詰め、結末はハッとさせられる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夫を亡くし幼い息子と暮らしていた主人公は、藩のため、婚家と息子のもとを去り、半島から連れてこられた陶工のもとへ奉公することになる。
藩のためと割り切っていたはずだが、その思いは簡単ではない。時代に翻弄された女と、遠い彼の地からやって来て、すべてを忘れるようにもの作りに精を出す男。不器用な二人の行方が悲しく、しかし、尊い。