- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062202176
作品紹介・あらすじ
野間児童文芸賞受賞作『うたうとは小さないのちひろいあげ』の続編。主人公の桃子は高校2年生になり、高3の先輩たちを中心に物語は展開します。
付き合い始めたのに気持ちのすれ違うふたり。そして性同一性障害に苦しむ転校生。それぞれに、自分の気持ちを持て余しながらも「言葉」で想いを表現することによって、自分の内面を見つめなおしていく高3の夏。重くなりがちな内容を、作者らしい優しさと明るさで前向きに描いた意欲作です。
感想・レビュー・書評
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短歌甲子園出場を目指す高校3年の業平は、うた部部長となった彼女、清らとの関係がうまくいかず悩んでいたところ、同じ中学だった時宗が転校してきて、様子がおかしいことに気づく。また、練習試合をしたライバル校の部長からは、LINEアドレスを交換したとたんに「今度会いたい」とメッセージが来て戸惑う。さらに、同じクラブの後輩彩美から、時宗がトランスジェンダーだと聞かされ、驚くのだった。
思春期の葛藤を恋愛、LGBT、短歌への情熱と絡めながら、業平の視線で描く。
*******ここからはネタバレ*******
結末がドタバタで尻すぼみ的にはなったが、短歌甲子園の様子は手に汗握るものだったし、トランスジェンダーの時宗の気持ちもよく分かった。
今回も短歌がとても良かった。
「うたうとは……」の続編ではあるが、ムリに笑いを取る場面が少なく、ストーリーもシンプルなせいか、私はこちらの方が好き。
男女交際の場面はあるけど、そこまで深くないので、中学生からでいいかも知れません。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うた部シリーズ二作目。
今作も、クライマックスが上手い。
清らの無茶苦茶な約束が、どんな風に収束するのかなと思っていたけれど。
短歌のやり取りが、本音のやり取りと重なって。
選ばれた言葉は、「」に示される台詞よりも、伝わってくる気がする。
ただ、一つモヤモヤしたのがトキの扱い。
前作では引きこもり、今作は彼のジェンダーというテーマが軸になっている。
トキの気持ちは独白という形で読者が知ることにはなるわけだけど。
カミングアウトと、アウティング。
言われたからといって、言っていいわけでは、当然ないわけで。
トキを知るため、としながら、自分たちの主観で情報を回していく登場人物たちに疑問は残る。
トキも短歌作って欲しかったなー。 -
『うたうとは小さないのちひろいあげ』の続編。
清ら部長率いる「うた部」と諏訪業平くん目線の物語。
純粋にうらやましいですよね。
題詠も連歌もその言葉を数分考えるだけで
こんなにも素敵な言葉を連ねることができることが。
うたうとは…があまりにも好きな作品だったので
ちょっと続編に期待しすぎて
トキのことも、もうちょっと深く読みたかったとか
思いましたけど…。
短歌甲子園の予選とか、緊張感バリバリで
ハラハラドキドキが止まらなかったです。
そのキャラクターに合った短歌は
どのように作られているんですかね?
清ら部長の歌、すごく好きです。
桃子たちが中心になったら、
どんなうた部になるんだろう。
続編が楽しみな一冊です。
私も自分のレビューについて一首。
ジューサーにかけても濃縮されません
意図しない味消せぬざらつき
数分どころか数日考えてこの出来ですからね。
…うた部の面々に添削をお願いしたい… -
一作目と雰囲気、変わったあ。
最初は何だこれは?と思いつつ読んでましたが、
途中でぐっと持ち直し、
最後はえ?マジか?と思いつつ読了。
ラスト、納得いかんーー! -
「歌」を詠むことの難しさ
「歌」を詠むことの素晴らしさ
「歌」を詠むことで昇華される気持ち
「歌」を詠むことで満たされる気持ち
「歌」を詠むことで高められる気持ち
「歌」を詠むことでつながる気持ち
登場する全ての若者たちが愛おしい -
「今年こそ短歌甲子園出場を」と意気込む中田高校うた部だが
部長になった清らとサポートする業平の思いがすれ違い始める
転校生時宗の秘密と新入部員の反発がからまって
二人の恋の行方と大会結果はいかに
ゆびきりは願いにもにておさなくてどちらがさきにこのゆびはなすの
人物のキャラクターによって作風の異なる短歌の書き分けがみごと
“草花系童話作家”村上しいこの青春小説第二弾
前作『うたうとは小さないのちひろいあげ』は野間児童文芸賞受賞 -
違和感があったことが2つ
他人のジェンダーに関する事をみんなの前で言ってしまう無自覚さの扱い。若さだから、で流せない違和感。
ラストの展開が、うわー青春、って思えなかったこと。これは自分がもう青春からかけ離れたからかもしれないけれど笑
そのしこりがあってなんかスッキリしなかったなぁ。
でも作中に出てくる短歌はすき。
2023.12.22
199 -
優しい感じ
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業平が語り手。彼が、部長で彼女の清らに翻弄されることもあり、何だよ、清ら!とちょっとムッとしてしまうところもあるのだが、そんなマイナスの感情をすっきり忘れてしまう展開。これで良いのかというコントのような終わり方であるのだけど、これでいい、と思う。それくらい説得力がある。高校生ってすごいなあって思う。
県大会
教室に君がいるから悲しくて燃やしてしまえ青春暦 清ら
青春の正しさ計るような恋こわれてしまえ君も私も 初瀬 (秀麗高校・部長)
(初瀬さんの肩を抱く元彼氏でもあるトキ)「ふと桃子の言葉を思い出す。『女の子の手には、涙を乾かす不思議な力があるんです』」
「ほら、難波江先生が好きやって言うてた若山牧水の歌。『けふもまたこころの鉦をうち鳴らしうち鳴らしつつあくがれていく』。このあくがれって、ここではないどこかえ行こうとする心の力やねん。自分ではどうしようもないっていうか。もっと自分を高めることができるんじゃないかなって。そういう、あくがれがあるから、人間は成長するんやって。もがきながら自分が幸せになれる位置を見つけるのが生きることやないかなって。(略)」
短歌甲子園
ゆびきりは願いにもにておさなくてどちらかがさきにこのゆびをはなすの 清ら
三年生を送る会
空はいまぼくらふたりを
中心に
決めるのだろう幸せの位置 業平
《トキのゼツメツ日記》
思ったほど、わたしの気持ちも傷つかなかった。
伊藤先生ならきっと、こう言うに決まってる。
それはまだ、悲しむほどの失恋とは言わないだろう。むしろ貴重な経験というべきだろう、と。
何よりも業平との再会は、わたしにとって、きっと安心して戻れる過去になる。
出版社紹介ページ
空はいまぼくらふたりを中心に
『言葉の力』をテーマに高校生たちの青春模様をいきいきと描くYA小説シリーズ、二作目。付き合い始めたのに気持ちのすれ違うふたり。そして性同一性障害に苦しむ転校生。それぞれに、自分の気持ちを持て余しながらも「言葉」で想いを表現することによって、自分の内面を見つめなおしていく高3の夏。重くなりがちな内容を、作者らしい優しさと明るさで前向きに描いた意欲作です。
野間児童文芸賞受賞作『うたうとは小さないのちひろいあげ』の続編。主人公の桃子は高校2年生になり、高3の先輩たちを中心に物語は展開します。
付き合い始めたのに気持ちのすれ違うふたり。そして性同一性障害に苦しむ転校生。それぞれに、自分の気持ちを持て余しながらも「言葉」で想いを表現することによって、自分の内面を見つめなおしていく高3の夏。重くなりがちな内容を、作者らしい優しさと明るさで前向きに描いた意欲作です。
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「うたうとは小さないのちひろいあげ」と繋がっています。前作がいじめと短歌であったのに対し、今作はジェンダーと短歌がテーマといえますが、恋愛要素も加わり、前回よりさらに話題が散逸してしまっている印象を受けました。