マンガ おはなし数学史―これなら読める!これならわかる! (ブルーバックス)

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062573122

作品紹介・あらすじ

中世の大砲戦から「関数」、サイコロ賭博から「確率論」など、一風変わった天才たちが意外なところから発展させてきた数学の歴史を、面白ギャグ満載の「おはなし」仕立てで懇切丁寧に紹介します。

感想・レビュー・書評

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  • 数学には歴史が大いに関係していた。
    講師のナカダ先生が数学が苦手な中学生の真弓さん、退屈しきっている高校生の洋くん、88歳の数子さん、市の教育課に勤める佐々木さん相手に数学の成り立ちを教えてくれる。どこでもドアみたいなものでその時代、その場所に行ったりと、なかなか面白いです。

    中学生以上の学生さんが読むと「なるほど」とよくわかるんじゃないかと思います。ただでさえ数学が苦手で、数学の授業のことをあまり覚えていない私には後半難しかった。それでも「マンガ」としてとっても楽しめました。あちこちでププッと吹き出しました。

  •  もう遙か昔のことですが、中学時代、勉強のことで、親父にしみじみ諭されたことがあります。そのときの出だしはこうでした。
     「あのな、お前、お母さんに『数学なんか将来何の役にも立たんやないか』とか言うたらしいけど…」

     高校時代、高校の先生がポツリと仰っていた言葉が今でも耳に残っています。
     「理科の授業でも、もっと科学史を教えた方がわかりやすかったりするんだけどね」

     予備校生のとき、数学の授業で先生が、雑談混じりにこんな話をしていました。
    「この等差数列についてはこんな話があります。
     ある小学校のクラスで、子供達がワーワー騒いでしょうがないから、先生が子供達に『1から100まで足してみなさい』と言ったんです。そしたら、みんな黙々と1+2+…と足しはじめて静かになりました。
     やれやれ、と思った先生はそこで気づきます。ひとりだけ涼しい顔をしてこっちを見ている生徒がいるんです。
     『何してるんだ? ちゃんと集中してやりなさい』
     『いえ、先生。終わりました』
     『終わったって、ちゃんと順番に足したのか?』
     『そんなことしなくても、1から100までの和はすぐ求まります。
     1から100まで順番に数字を並べて書いたとしたら、その下にちょうどこれと逆の、100から1まで数字を並べたものを書きます。そしてその上と下の数を足すと、どれも101になります。一番下には101が100個並ぶことになり、その合計は10100になります。
     で、これは1から100までの数列二つ分ですから、この合計を2で割った5050が1から100までの合計です。頭から数字を足すより、こうやって考えた方が早いです』

     …嫌なガキでしょう?(笑)
     この小癪なガキが、後の大数学者・ガウスだといわれています」

     何年か前に、新しい素数が見つかったと新聞に出ていました。見出しを見ただけの僕は「そんなもん見つけて何になんねん?」と思いましたが、素数がインターネットの暗号技術に用いられているとあり、「へぇ~」と納得した記憶があります。


     理系科目が得意な人、特に数学が得意な人は、あるいはこういうエピソードを一々介さなくても数式の意味を理解し、数式を解くこと自体に楽しみが見いだせるのかもしれません。もちろん、数学が得意でそちらの道に進まれた方はこういうエピソードをたくさん知っています。おそらく、数学→数学史の順番で知識が増えていったのではないでしょうか?
     が、具体的なエピソードをすっとばし、いきなり抽象的な数学から入られるとダメって人も一定数は存在すると思います(僕はそういうタイプです)。
     というか、自分を含めて数学が苦手になった人のうち、相当数は抽象から入る思考そのものになじめないのかもしれません。そして、そういう人間が一定数以上吹きだまっているのが文系学部なのでは…と、別に自分が数学が苦手になったことを人のせいにするつもりはないんです。ただ、本書を読んだとき、「もっと早くこういう本に出合っていれば、もうちょっと数学を好きでいられたかも…」と思いました。

     将来直接自分の役に立つか立たないか、そういう低い次元での説明は要らないと思うんです(そういうガキには「将来、君が銀行行ったときに銀行強盗が押し入って、人質に対して犯人がおもむろにペンと問題用紙を配り、『できた奴から解放してやる!』って言われたときに、『あぁ、中学の時に真面目に数学やってりゃ良かった!』って日がくるかもしれんやろ!? そういうときに備えるんや!!」とか適当なこと言っとけば十分です)。
     ですが、今勉強している数式が、どのような必要性から生み出され(あるいはどのような経緯で発生し)、現代社会においてどのように役に立っているかを簡単にでも知ることで、その数式の意味や自分とのつながりが見えてくることってあると思います。少なくとも僕は、そういうアプローチがあれば今よりも数学を理解していたかも? と思わずにいられません。

     本書は、数学の歴史を漫画で説明してくれています。学習まんがのクオリティで行くと鈴木みそ『化学式に強くなる』『物理に強くなる』には及ぶべくもありませんが、十分数学史は楽しめる内容です。

     「数学って何やってるかわからない」「数学を勉強する意味がわからん」とかつての僕のようにこまっしゃくれたことを言ってる中学生と、いつの間にか数学が苦手・嫌いになってしまった人に、数学と仲直りする一つのきっかけとしてオススメします。

  • 柄谷行人『探究Ⅱ』のガウスらの非ユークリッド幾何学やカントール無限集合の議論を見て、ざっくりと数学史を知るものはないかと思い手にとった。哲学の側からしか知らなかったが、タレス、プラトン、デカルト、ライプニッツ、パスカルなど哲学者でもある数学者や、また別に計測や商売などの日常の要請と並行していたことが大まかに理解できる。端的なわりにかなりわかりやすく、図形、図示、数式、実生活からの発想など縦書きの書物よりマンガに向いているのかもしれない。非ユークリッド幾何学の平行線の平面ではなく球面・凹面で捉えるしくみ(むしろ地球が宇宙同様に球面なのだから平面の幾何学が中世の地球の捉え方のように誤りなのかもしれない)や、無限集合の濃度の基本的な考え方などを知れた。世界史の描写も豊富で、文系にはありがたい。
    ・1
    エジプトで測量として始まった幾何学が、比較的平和だったギリシアで実践を越えて「なぜ」と問い論証数学に発展する。タレス、ピタゴラス、ゼノンのパラドックス(無限運動時間変化分割連続)は、プラトンによって、思考できるものの外に置かれる。このことは、実践における捨象である(ニュートンの登場を待たねばならない)。数の神格化はあれど(無理数はアロゴンという禁句)、その成果はエウクレイデス(ユークリッド)によって幾何学『原論』としてまとめられ、再び論証の余裕ないローマ帝国で実践的測量としてのみ保存される。シュメールバビロニア、エジプト、ギリシア、ローマでは繰り上げを別の記号で表す「桁記号記数法」だったが、インドでは6世紀ごろまでに現在数学のように繰り上げも数で表す「位取り記数法」をすでに使っていた。桁記号記数法は筆算しにくいため、大理石の溝に玉を置くアバクスがギリシア・ローマで使われ、中国に伝わり算盤となる。中国ではそれまでぜい竹(現在は占いで使用)による計算だった。算盤はアバクスとぜい竹の融合と思われる。インドでは砂に書いては消していたので記録はないが、アラビアを通じてヨーロッパに伝わった(アラビア数字と呼ばれたものはインド数字)。というのも、マホメットのイスラム教国家が都市化し、都市特有の病気の治療に医師がギリシアやローマから派遣されたが、充分に医療が行き渡ると、暇を持て余した医者がギリシア幾何学を10世紀に復活させた。代入によらない方程式の解法「移行法」を導入したアル・ファーリズミーは、のちのアルゴリズムの語源。
    ・2
    大砲弾道の研究からイタリアのタルタリアが、弾はアリストテレスの直角落下ではなく、45度が遠く飛ぶことを発見。放物線はガリレオ。xy座標のグラフの発明者デカルトによって、幾何学を代数で解く「座標幾何学」(解析幾何学)が編み出された。
    →近代科学的な観点は、デカルトよりも前、プラトン、ユークリッド幾何学で始まっている。エジプト、ローマ的な実践重視は合理的資本主義社会へ通じている。
    幾何学は動的に捉えられ、ライプニッツ微積分(ニュートンは頑なに未発表)。オランダ独立戦争に参戦し、スペインアルマダ敗北を機に、イギリス大英帝国が繁栄するも、物資と共に伝染病が蔓延。教区毎の死亡表で市は病気対策、金持ちは避難するが、ジョングラントが60年の死亡表の傾向をもとに統計を1662年に発表。社会統計学の始まり。ドイツ(神聖ローマ帝国)は、皇帝と諸侯の対立や宗教改革で、諸外国も参戦する30年戦争の戦地として荒廃したため、経済学者コンリングが各家庭の構成や資産から国力を求めた国勢統計学が始まる。統計学statisticsは、国stateが語源。
    →国stateの数学mathematicsが統計学statistics
    1666年ロンドン大火で、街は広くレンガ造りになり、火災保険ができた。1693ハレー彗星の発見者エドモンドハレーが生命保険を創設。ダーウィン進化論、メンデル遺伝学も統計学による。
    16世紀中頃海運貿易で栄えたイタリアでは博打が流行っていた。カルダーノ『サイコロ勝負について』確率論の創始。フランスに伝わり、パスカル、フェルマーは文通で共同研究し、順列や組み合わせの現代確率論の基礎を築く。ダランベール、ラプラスが発展させる。同じく賭博の流行ったロシアに伝わり、オストログラツキー、ブニアコフスキー、チェビシェフらペテルブルク学派の創設。
    1919ロンドン大学ピアソンは統計学の標準偏差を作り、遺伝進化生物学へ持ち込む。フィッシャーは小麦の品種改良で統計学と確率論を組み合わせた推測統計学、実験計画法を考案。異なる品種をバラバラかつ均等に巻く実験計画法は魔除けの魔法陣(どの列の和も同じ)の発展。サグラダファミリア西門の四方陣は、和がキリスト処刑時の年齢になる。無作為抽出の標本調査は少数から全体を知る統計学。
    ・3
    フランス革命後1790に外務大臣タレイランが単位の統一を図るために度量衡委員を発足、パリを通る子午線の北極から赤道の1/1000万を1mとした。1799年、メートルとキログラムの白金原器が作られた。日本は22番の原器の配布を受けた。時刻の子午線は、イギリスグリニッジ天文台が1884ワシントン万国子午線会議の投票で、緯度0℃となる。イギリスアメリカはフランスへの対抗意識かしばらくヤードポンドのまま。メートルの定義は光の真空中の一定時間距離、秒はセシウム133の物理的状態だが、キログラムは1889の原器のまま。
    ユークリッド幾何学の5公準(公理)、①2点を線分で結びうる、②線分はいくらでも延長可能、③ある点を中心に半径の円を描きうる、④直角は全て等しい、⑤内角の二角の和が180未満なら二直線は必ず交わる。このうち⑤の複雑さが問題となっており、ある直線に平行な直線がただ一つあると言い換えできるとされた。ガウスは、平行線が二つあると仮定したとき、①〜④と矛盾しないことを確認したが、混乱を防ぐため非公表。1832年ヤーノシュボヤイから同じ報告を受けたガウスは黙殺、1829年ロバチェフスキーも反応なくガウスは黙殺。平行線が一本だけではないというのが非ユークリッド幾何学、一本もないというのがドイツのリーマン1850年代考案。非ユークリッド幾何学は平面ではなく、リーマンは球面で必ず平行線は曲がるから交じわり、ロバチェフスキーとボヤイは凹面(曲面)で平行線が二つ以上。非ユークリッド幾何学は、日常の用はなさないが、アインシュタイン相対性理論によって、宇宙構造が非ユークリッド幾何学であることを示している。独立、無矛盾、完全であれば、ユークリッド幾何学的に自明で万人が認める常識以外の世界を示せるようになった。★
    →柄谷行人『探究Ⅱ』単独者による、近代科学的な一般化を斥ける外部性。
    ケーニヒスベルク(カリーニングラード)橋の一筆書き、スイスのオイラー1736、点に線が集まる数に注目し、奇数点0ならどこから書いても、奇数点2なら奇数点から奇数点へ、奇数点4以上は書けないとした。偶数点はどうでもよく、奇数点が奇数であることはない。点同士の間のつながり方、ゴムひも膜粘土のように変形自由な非ユークリッド幾何学、トポロジー(位相幾何学)。アーベル、ガロア、五次方程式の代数解はない。
    カントールは無限を集合の濃度として扱い、集合内の数の配列に付番可能なものをא‏アレフ0とした。自然数(正の整数)、整数(負の値含む)などの有理数(分数で表記可能なもの)はいずれも付番可能であるから、アレフ0の濃度。整数(負)、有理数(分数)いずれも自然数(正)で付番可能なので、自然数のアレフ0と同じ扱い。他方で、離散的な有理数の間にある無理数(分数で書けない無限小数、√、π)は、付番可能な配列ではなく、直線で表される。ある配列の線分は、別の配列の線分で表されるから長さは関係ないため、0から1までの線分で全て表すことができるが、無限に間があるので付番不可能。したがって、実数(有理数と無理数)という連続体は、アレフ0より大きい、アレフと呼ばれる。そして、アレフ1,2,3...と無限に大きい濃度が発見される。カントールは批判を浴び、自身の正しさを疑い、精神病院で死んだ。
    ・4
    数学者は研究が画期的であるほどその時代に認められず富はおろか非難の中死ぬ。認められたとしても、名前が残る名誉くらい。
    ヨーロッパ15〜17世紀計算師は、航海に関わる天文観測や通商から+(et)、-(m)の記号で簡便にした。ドイツイタリアイギリススイスなどルールに忠実なゲルマン系の発案が多い。
    数学は数の学問としての範囲を超えており、その語源はギリシア語のマテマタ(諸学問・学ばれるべきもの)にもつ。

  • ふむ

  • 読みやすい、わかりやすい、楽しい
    とても良い本。
    解き方は暗記で解けても、何を解いているかわからなかった高校数学が、この本で理解出来てとても嬉しい。
    高校生の時にこれを読んだら、数学の見方が変わってもっと楽しめていたはず。
    中1の息子は、あまり理解出来なかったと言っているので、高校生になったらもう一度読ませてみようと思います。
    私は集合論が途中から理解出来なかったが、それでも満足です。
    マンガおはなし化学式史(これは当時小6、小3の息子たちに大好評)もそうですが、佐々木ケンさんのマンガはとにかく読みやすくて楽しい。

  • 学生時代数学を勉強していて、何の役に立つのか、他の分野とどう関連するのかがわからないままで、またそのことが理解の妨げになっていた気がする。

    この本はさすが漫画仕立てだけあって頭に入りやすい。数学者たちが何を考えて数学を進めていったのか、どのような社会のニーズに応えていったのかといったことが分かり、こういうことが分かると数学を勉強する意識をもっと持ち、「数学を使ってこういうことをしよう」とか考えることができたかもしれない、などと思った。

    細かい話をすればいくらでも細かくできると思うけど、一冊で数学史を俯瞰できるようにまとめてもらえてるのは嬉しい。

  • なかなか面白かった

  • 数学史なんてマイナー(失礼)だと思ってたけど、原理や数学の成り立ちを知るのはそれなりに有意義です。

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    旅好きおやじ

    最近、数学に関する本を読んでないなと思い、図書館に行くとこの本が置いていたので借りることにした。正直、あんまり期待してはいなかったのだが、数学の理論ごとに、その理論が必要になった時代背景とかが漫画でわかりやすく説明されており、スラスラと読むことができた。ギリシア時代からの1000年間ヨーロッパでは数学や科学が発達しなかった暗黒の時代であるとか、関数は大砲の弾道を計算するために発達したとか、ナポレオンの舞台が大砲の扱いがうまかったのはこういった数値を暗記していたからだとかいうのが面白かった。

  • サイコロ賭博から『確率論』、
    大砲の弾飛ばし競争から『関数』

    大砲戦の弾道から二次関数や三角関数が、
    何年に何人死んだという
    死亡表と交易量の関係から統計学が、
    バクチから確率論が生まれたなどの解説

    古代・中世の諸成果をもとにした算数、
    19世紀までの高等数学、
    20世紀に入って爆発的に広がった現代数学

    [ 目次 ]
    1 計算と論理
    (シルクロードを往来した「計算器具」と「筆算法」;地中海を周回して生まれた『論証』と『図形学』;大建造の技術と設計図 ほか)

    2 人間社会を大きく変えた数学誕生時代
    (大砲戦から『関数』;悲惨事件から『統計学』;娯楽・賭博から『確率論』 ほか)

    3 数学の革命的発想時代
    (世界を統一する数学;常識を超えた『非ユークリッド幾何学』;一筆描きから『トポロジー』 ほか)

    4 数学の大転換期
    (数学の発見が「特許」になる;未来社会の数学)

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