分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 85
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062576376

作品紹介・あらすじ

自然淘汰だけで、進化は語れるだろうか?どんなに優れた形質でも、子に受け継がれなくては、その形質は絶えてしまう。受け継がれるかどうかは、確率が支配する。集団遺伝学の第一人者が提唱する偶然と淘汰の新しい進化モデルを解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 分子進化の中立説では説明できなかった部分が、「弱有害効果を持つ突然変異=ほぼ中立な突然変異」による説への拡張により説明可能であることを解説した本。

    集団のサイズが大きければ自然淘汰が有利に働き、集団のサイズが小さければ遺伝的浮動の影響が大きくなる。この時、突然変異の多くが弱有害効果を持つと考えると、大集団では有害効果が優位になり、進化には寄与しない。一方で、小集団では中立的に働き進化に寄与する。このほぼ中立仮説により、著者は集団のサイズと進化速度に負の相関がある事を予測した。

  • 先に断っておくと,集団遺伝学を勉強していて本著者について知らないのであれば,目を通しておくべき本である。

    題名にある「ほぼ中立説」というのは,今となっては一般的とされる木村資生の「中立説」の難点に対するものである。太田朋子は「弱有害効果(ほぼ中立)」の導入によりその解決を図った,現在では十分認められている概念とみられる。

    本書のレビューを簡潔に言うなら,内容★5で編集★1,といったところ,★3なのはそれを渋々平均化したもの,レビューサイトの星の(内容にしては)低いのはこれに尽きると思う。内容は集団遺伝学に触れるのであれば必読ものだ。

    そのレベルの高さに編集が追いついていない。随時補足説明をしたり巻末に用語集を載せたりと初心者に合わせようという努力が一応は見られるものの,そもそも初心者が読めるレベルの話ではない(木村資生の理論が分からないと門前払いだろう)。ではある程度分かる人が満足するものかというと,そうでもない。引用元の論文のリファレンスがないのは,学術書ではないということなのか。

    まとめると,読者層のターゲッティングができていない本,ということ。もっともビジネス書ではよくあることなのだが。

  • 840円購入2010-01-21

  • 2009年刊行。

     遺伝進化学の観点から否定的に捉えられている自然選択仮説。他方、遺伝的偶然を進化の原動力とする中立説。
     その何れもが難点を抱えているが、その解消を目指したのが本書のいうほぼ中立仮説だ。

     すなわち、突然変異の大半が進化的には弱有害であり、大集団では拡散すれば悪影響を及ぼす。しかし、小集団なら例外的優位変異が、進化に優位に作用するのだ。
     イメージ的に多剤耐性細菌の拡頒プロセスを想起させる。

     著者は国立遺伝学研究所名誉教授。

  • 分子進化中立説の権威である木村資生とともに研究をしてきた著者の本。発売予告を聞いたときから楽しみにしていた。しかし,手にとって読んでみて失望した。わたしにとっては,非常にわかりにくい本だった。もちろん,わたしの力不足が原因なのだが,それにしても,もう少しわかりやすい内容にできなかったのか。

    もともとの内容の難しさのあるのだろうか。わたしは,高校生物程度の知識はあると思っていたのだが,通勤途中で読むには骨が折れた。すぐにあきらめてしまい,深く意味を考えながら読むことを断念した。

    わたしには,文章のわかりにくさも気になった。難しい内容だからこそ,わかりやすい表現に努めるべきではないか。一方的に講義する大学のつまらない授業を思い出すような,相手の理解を無視した記述と感じるのはわたしだけだろうか。そして,いったいどのような読者を想定しているのか。

    内容の難しさは,編集者も気づいたのか,非常に多くの用語解説を追加してあった。良心的であるとは思ったが,これで理解ができれば苦労しない。人によっては,用語解説を読むだけでいやになるのではないか。

    この本をしっかり読み込んで,リライトしたくなった。以前にそのように感じた本が何冊かある。魅力ある企画だからこそ,そこまで思ってしまうのだろう。いっそのこと,著者の話は走り書きをもとに,ライターに書かせた方がよかったのかも。

    ブルーバックスだから,好き者が読む。また,この著者だったら,ある程度の売り上げは見込める。そう言った穿った見方までしてしまうほど,わたしには残念な本だ。

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著者プロフィール

1933年生まれ。国立遺伝学研究所名誉教授。Ph.D、理学博士。1956年東京大学農学部農学科卒業、1966年アメリカ・ノースカロライナ州立大学大学院博士課程修了。1967年から学術振興会奨励研究員として国立遺伝学研究所集団遺伝部で研究を開始、1969年より同研究所研究員となる。1973年、科学雑誌『ネイチャー』に発表した「分子進化のほぼ中立説」は、進化遺伝学の世界標準となる。2015年、スウェーデン王立アカデミーがノーベル賞が扱わない科学領域を対象として設立したクラフォード賞を受賞。2016年には文化勲章を受章。日本人女性研究者では唯一のアメリカ国立科学アカデミー外国人会員でもある。現在も、若い研究者の育成とともに世界へ向けて発信を続けている。
著書に『分子進化のほぼ中立説―偶然と淘汰の進化モデル』(講談社)がある。


「2020年 『信じた道の先に、花は咲く。 86歳女性科学者の日々幸せを実感する生き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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