極限の科学―低温・高圧・強磁場の物理 (ブルーバックス)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062576697

作品紹介・あらすじ

未経験な極限的世界に一歩踏み込んで物質が置かれている環境を深くゆさぶってみると、物質は思いもよらぬ新しい顔を見せてくれる。気体が金属になったり、超伝導体になったり、鉄の磁気が消えてしまったり、新しい機能の発現の画期的なヒントが満載。ナノテクノロジーの次にやってくる極限技術の最前線に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • "極限"だけだと語る幅が広すぎるが、本書は筆者の専門である物質の性質が変化する"低温、高圧、強磁場"が中心。
    『新しい物性物理』で学んだ物性物理は、極限の世界でどう変性するのか。

    『シリコンに15万気圧をかけると金属になる。』
    『液体と気体の境界がない超臨界状態でものを溶かす性質を利用し、コーヒーを超臨界の二酸化炭素に浸してカフェイン成分を抜き取る。』
    『白色矮星の圧力を超えて圧縮されると、電子軌道が外殻から順に破壊されるという新たな相転移が観測される。そしてその結果生じるエネルギーで重力崩壊を防ぐ。』
    などのわかりやすくて興味深い話は随所にあるのだが、中心となるのはその仕組みの解説であり、
    『低温を作るために、断熱した系で磁性のON・OFFで電子スピンの向きを操作してエントロピーを増やす』など、詳細を理解するためには格子振動量子、ボース凝縮、原子間相互作用などの量子力学関連知識が必要となる。

    全てを理解しなくとも楽しめるが、全てを理解できる状態で読めばさらに楽しめる。
    基礎を抑えてこその極限の世界であるが、長い道のりに飽きてきたならば、一足先に読んでみると、勉強の先に待つものを見つけられるかもしれない。

  • 学生の頃に冷却原子気体の研究に関わっていたので楽しんで読めた。本書で紹介されている分野の入門書って(自分の知る限り)あまり多くない気がする。数式を使っていないため一般の方でも概ね読めると思う。高校生や物理学科の1~2年生あたりが興味の幅を広げるのにも良さそう。

  • 極限的世界に踏み込んで物質が置かれている環境を深くゆさぶると、物質は思いもよらぬ顔を見せてくれる。新しい機能の発現のヒントが満載。

  •  物性物理の魅力がひしひし伝わってくる。扱う三分野(温度・圧力・磁場)は,20世紀初頭から極限条件が追及されて特に大きな成功を収めてきた。それが物質の本性の解明に結びついてきた。
     低温・高圧・強磁場を突き詰めてゆくと,量子力学が不可欠になってくる。超電導を含めた超流動,ボース・アインシュタイン凝縮。白色矮星や中性子性の成り立ち。最終章で宇宙に見られる超高圧・超強磁場が語られるけど,人間が作り出す低温・高圧・強磁場も結構すごい。
     温度だとマイクロケルビンまで達成できるらしい。He3-He4希釈冷却法,断熱消磁やレーザー冷却など,超低温を得る技術というのも随分トリッキーで興味深い。圧力は百万気圧くらいは地上で得られるようだ(ダイヤモンドアンビル)。このような高圧では絶縁体も金属になる。
     強磁場では,数字だと大したことないが数百テスラくらい。電磁石でいくらでも強い磁場ができるわけではなくて,50テスラ程度のカピッツァ限界というのがある。コイルをどんな材料で作ろうが,これより多く電流を流すと破断して飛び散ってしまう。一瞬であれば電磁石でつくった磁場を絞る磁場濃縮法でパルス的に500テスラが得られる。
     それにしても宇宙は壮大だ。中性子性など,圧力は10^15気圧,磁場は一億テスラになるという。そこでは中性子が超流動状態になっている。想像を絶する世界だが,さらに上にはブラックホールが。宇宙の果てのそんなところまでこんなに知ることができるなんて,科学ってすごい。

  • 物理量の計測に関してフルスケールの両端に注目して概説した本。特に圧力の項が参考になった。会話?調文体で、リズムをつかむのに若干とまどったが、2回目を読みはじめたら急にすんなりと頭に入ってきた。結構癖がある。新しい物性物理とペアで読むとよりよいみたい(宣伝が多かった)。
     究極の両端の話の次には、ミッドレンジ、圧力で言えば100MPa前後、の計測はどうなのかといった話題の本も是非期待したいところ。

  • 低温・高圧・強磁場の話。
    いろんな世界が見えておもしろいです!

    新書にしてはなかなか内容が濃くていいと思います。
    さすがブルーバックス!

  • 「すべての科学はなんらかの意味で極限を目指している。」
    認識量と到達量。
    ナノメートル以下は制御可能ではない。
    オングストロームは、制御できないが、認識量として観測できる。
    低温物理学、高圧物理学、強磁場物理学を統合。
    時間の極限
    電場の極限。
    強電場を作ると、物質がブレークダウンという現象を起こし、強電場をつぶしてしまう。
    そのため、温度、圧力、磁場、宇宙へと話は展開する。

  • うーん…
    わかった部分もあれば、わからない部分もある。

    原理を理解できた→「磁石は高圧下では磁力を無くす」
    スピンの向きが同じではいけない原理のため、高圧により内側の軌道に移された電子がスピンの向きを変えて上下になるから。

    できなかった→「物質は高圧下では金属化する」


    『ボーズ縮退』『フェルミ縮退』という言葉を初めて聞いた。しかしよくよく探してみると、今まで読んだ本でも現象自体は触れられていた模様。
    もっとちゃんと理解したかったけどこの本だけでは無理だった。

  • 科学のすばらしいところは、極限の追及を目的化できることであるとおもう。
    本書は温度、圧力、磁場の極限をブルーバックス読者に通じるように解説していく。
    私にとってここでの最大の発見は現代の物性物理学の応用範囲として「ホット」なのは「高温」ではなく「低温」であるということ。人類は高温は数千年前から使用していたが、「低温」をつくることを覚えたのはここ200年ほどであるということ。そもそも、-100度のものを作るには-100度以下の触媒を用意しないといけない。「どうやってそんなものを作るのか」ということが理解できる。
    絶対零度には到達できないということは証明されているとしても、そこに限りなく近づけ、そこでの物性が超伝導や超流動状態になり、その応用やそもそもそれが実現できたとき「世界」や「宇宙」がどう変わるのか。
    極限の先に何があるかを知りたいというのは人間の性であろう。
    おもしろい。

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