- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062581707
作品紹介・あらすじ
「白紙の状態」で生まれ落ちたはずの人間が、他者と絡みあいながら、いつしかほかの誰でもない、「私」となる。ことばと身体という、存在の根底に立ち戻ったとき、そこにはいったい、どんな光景が見えてくるのだろうか?発達論的還元の手法を武器に、この不思議に立ち向かう。
感想・レビュー・書評
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「私」ができあがっていくためには,実の多くの環境要因が絡み合っていることは,当然と言えば当然です。発達心理学者である著者は,乳児~幼児の観察や,自閉症の子どもたち,障害を持った子どもたちの実例を通して,「私」がどのように形成されていくのかを分かりやすく説いてくれます。
他者と絡み合いながら,「私」ができてきます。しかし,その「できた」と思っている大人の「私」でさえ,他者なしでは,何もできません。自分の意志だけで,なんでもできると思っている人がいるとすれば,それは誤謬でしょう。
著者は,自らが名づけた「発達論的還元」という手法を駆使し,私たちが言葉というものを身につける過程を興味深く示してくれます。
最終章では,羞恥心について,その出所がどこにあるのかを教えてくれました。私たちは世間の中に生きているのですが,その世間には,「私」も含まれています。「私」も,得体の知れない世間をつくる部品の一つなわけです。だから,世間の目を気にしてわき起こる「私」の羞恥心は,実は,もう一人の自分がいるからこそ起きてくるものだということが分かります。その世間を力で変革することはむずかしい。しかし,自分もその世間の一部であるのなら,自分の行動を少し変えていくことで,世間も変化するのではないか…なるほど,そういう手があったか…と思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
NDC(9版) 143 : 発達心理学
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「サイエンス・ブック・トラベル」から。
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「私」とは何か。その不思議に立ち向かう。
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【未読】言葉と身体の出会いという副題について、文学的な奥行の深さを調査したい。