湾岸産油国 レンティア国家のゆくえ (講談社選書メチエ)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584784

作品紹介・あらすじ

クウェイト、カタル、バハレーン、UAE、オマーン。湾岸産油国は、驚くべき特徴に満ちている。莫大な石油収入によって、所得税はなし、教育費は無料。一人あたりのGDPが日本の二倍の国もある。一方で、「経済発展が民主化を促進する」という定説はあてはまらず、君主制が維持されたままだ。二〇〇九年のドバイ・ショックで、世界経済における影響の大きさを知らしめた「石油王が統治する金満国家」を詳細に分析、政治・経済・社会の実体に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 国民は(肉体的な)労働をしなくても、税金を払わなくても生活を保障される

    石油さまさまだなあ

    石油のおかげで海外からお金は入ってくる
    労働力は外国人労働者で賄う

    たまたま生まれたところがレンティア国家と呼ばれている国の特権階級だったか、出稼ぎに行くことで収入を得たい層だったかの違いで歩む人生がちがう

    外国人労働力が経済的に底上げされ、レンティア国家と呼ばれる国も石油管理係くらいの存在になって均衡されていくといいけど

    石油なんて、誰かのものではなくて地球のものなんだから

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  • 対象を湾岸産油国(ペルシャ湾南岸5カ国)に絞って、また、主として政治体制(王朝君主制)と経済体制(石油収入と自国民プレミアム)にのみに焦点を当て、論述したもの。記述が正確で学術的。とても興味深く読めた。面白い1冊。参考となった記述を記す。
    「最も早く石油が発見されたのはバーレーンで、1932年には生産が開始された。また、1938年にはクウェートでブルガン油田が発見されたが、二次大戦により生産は見送られた。湾岸産油国で本格的な石油生産が行われるようになったのは二次大戦後のことであり、1946年にクウェートにおいて、また1949年にはカタールにおいて石油生産が開始された。UAEの石油生産は1960年代、オマーンの本格的石油生産は1970年代のことである」
    「石油輸出国の中でレント収入依存割合が高い第一グループ(サウジ、イラン、UAE、クウェート、バーレーン、オマーン)は非民主的な傾向にあり、それが低い第三グループ(ナイジェリア、メキシコ)は非民主的な傾向が低く、中間の第二グループ(ロシア、ノルウェー、ベネズエラ、リビア、カタール)にはそれらが混在しているとみなすことができる」
    「歴史とは、現状を肯定するために、過去の出来事を現在の関心で恣意的に編纂した物語だ。恣意的に歴史を編纂すると説明すると、歴史があたかも捏造された過去のように思われてしまうかもしれない。しかしながら、そもそも全ての過去の出来事を取りまとめて記録しても、前後に何の関係ない情報が並んだ年表になるだけだ。膨大な過去の出来事を何らかの一貫したストーリーの下に一つに統合、編纂することによって、初めて意味を持った歴史が作られる。国民統合においては、国民を創出し、国民をまとめあげるという目的に適合する形で、過去の様々な事件が取捨選択され、それぞれに適切な解釈が加えられ、配列され、「国史」が生み出される」
    「湾岸産油国は、歴史的建造物や伝統工芸に乏しく、また思想面での活動も他のアラブ諸国に比して活発でないが、「国民らしさ」や「国史」を対象に、国民統合が行われ、現状を肯定する手段が存在していることもまた事実だ。このことは、湾岸産油国において石油価格の急落によって国民に配分される資源が減少しても、即座に君主制が揺るがない可能性を示唆している」
    「湾岸産油国で契約更新を望む外国人労働者は、多少の時間外労働や賃金の減額にも耐え、スポンサーの歓心を買おうと努める。結果として外国人労働者の労働環境は悪くなる傾向にあり、彼らは場合によっては職場を逃亡して不法滞在者となることもある。もっとも、スポンサーは彼らが逃亡することを防ぐ目的で、労働者のパスポートを取り上げてしまうことが多い。湾岸産油国のスポンサーシステムが、現代の奴隷制と揶揄される所以である」

  • 授業でやったから内容は比較的頭に入った。けど、学術本?なのかな。じゃあこれが身についたってものではなかったかな??映像教材みよう。
    あと文化が違う。知らん人にとっては驚く内容?こうゆうの知ったあとはそうだろうな〜て思うけど、知らんかったらそのまま、天動説地動説的な。

  • 湾岸産油国の国史は、共通するパターンを持っている。それは移住、海洋国家、経済発展、外国人要素の排除という4点。

  • 経済発展と非民主的な君主制が維持されている『湾岸産油国』。我々の社会とは異質な特徴に満ちたこれらの国々を、国家形成の道のりをスタートに、レンティア国家仮説・王朝君主制・国民統合・湾岸産油国エスノクラシーの分析FWにて、明確に解説されている。
    素人の私にも分かり易い内容で、新鮮で興味深い数多くの知見を得ることができると思います。加えて、多くの読者に漏れず私も、「非民主的な政治体制が存続することが奇妙な現象」という先入観を持って読み進めていましたが、「自身に馴染み深いことが一般的である」という私自身の稚拙さを痛感しました。

  • この本は2010年8月発行なので、リーマンショックが起きてドバイでの高層ビルが中止になったとかいう報道がなされた後に出版(おそらく原稿も)されていると思います。

    この本ではドバイも含めた湾岸産油国に関する紹介がなされています。中東の国と言えば、石油を輸入するときにお世話になっている国で、あとは砂漠やラクダ程度しか知識のなかった私は、ドバイがアラブ首長国連邦の一首長国であること含め、初めて触れることが多く、刺激的な本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・湾岸産油国では圧倒的に不足している労働力を、海外から移入すること補っている(p16)

    ・湾岸産油国では、首相を選出する権限は君主にあり、議会には無い、首相を含む大臣は議会から選手される必要はなく、制限内閣制と呼ばれる、明治憲法下における内閣制度に近い(p22)

    ・外国人労働者の労働者の地位は極めて低く、賃金は中級国家公務員比較で10分の1程度(p34)

    ・1908年にはイランで初の石油商業生産がなされ、1909年にはアングロペルシャ石油会社設立、1913年にはイギリスが株式取得して半国有化(p54)

    ・1950年代までに、君主と支配家系が協力する王朝君主制を成立させた(p61)

    ・独立をもたらしたのは、イギリスが1968年1月に発表した、スエズ東からの撤退声明である、当時のイギリスは財政赤字に苦しんでいた(p64)

    ・資源輸出によって自国通貨の価値が上昇し、これが輸入促進を招いて国内産業の成長にブレーキがかかることを「オランダ病」といった、湾岸産油国でオランダ病が実際に発生した(p72)

    ・中東にはすでに崩壊してしまった君主国として、アフガニスタン、イラン、オスマン帝国、イラク、エジプト、リビア、チュニジア、イエメンがある(p91)

    ・国籍は父子関係の血統に基づいて付与される、母親が湾岸産油国の国民であっても、父親が外国人の場合には、子供には原則として国籍は付与されない(p122)

    ・労働力化率の世界平均はおよそ70%であるが、湾岸産油国は42~49%程度と低い、理由として女性の労働力化が進展していないことがある(p156)

    ・石油寿命は2008年末現在で、クウェートで100年、UAEで90年、カタルで54年、天然ガスは3国とも100年以上、確認可採埋蔵量が石油価格が上昇することによって増加するので、このデータも正確ではない(p180)

    ・外国人労働者の割合は、50~95%と高く、欧州の10%以下、米国の16%、日本の1%程度と比較してとても高い(p193)

    2010/11/7作成

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著者プロフィール

宇都宮大学国際学部准教授
東北大学大学院国際文化研究科博士後期課程修了、博士、2004年
主要業績:
「中東地域研究とレンティア国家論」(『中東研究のテーマと理論――政治学・経済学・社会学・地域研究(仮)』明石書店、2017年(予定))
『中東の新たな秩序』(共編著、ミネルヴァ書房、2016年)
「増え続ける移民労働者に湾岸アラブ諸国政府はいかに対応すべきか」(細田尚美編『湾岸アラブ諸国における移民労働者――「多外国人国家」の出現と生活実態』明石書店、2014年)
「湾岸諸国における移民労働者――越境が生み出す格差と社会」(酒井啓子編『中東政治学』有斐閣、2013年)
『湾岸産油国 レンティア国家のゆくえ』(講談社、2010年)

「2017年 『石油の呪い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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