異端カタリ派の歴史 十一世紀から十四世紀にいたる信仰、十字軍、審問 (講談社選書メチエ)
- 講談社 (2016年11月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (768ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062585026
作品紹介・あらすじ
もともとは東欧発祥の宗教運動が、11世紀に西ヨーロッパで顕在化して、12世紀にはカタリ派の名の下で南仏ラングドックでおおきく展開されるようになりました。
現存しないためその教義などは謎に包まれていますが、二元論的であり、現世を悪とみなすグノーシスの影響を受けているとも言われています。
本書は、その異端宗教運動の11~14世紀の歴史、すなわち南仏での誕生・発展から異端認定を経て、迫害・殲滅されるまでの歴史を描きます。歴史の後半では、ローマ教会によるアルビジョワ十字軍と異端審問が大きなテーマとなります。南仏アルビ地方で展開された、もうひとつの十字軍のおぞましい実態も明らかにされます。
本書はまた、南仏のラングドックが、十字軍侵攻をきっかけに、だんだんとカペー朝フランス王国に併合されていく過程も描いています。
知られざる異端の経験した恐るべき歴史をあきらかにする、カタリ派研究の第一人者による最良の訳書がついに登場します。
感想・レビュー・書評
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4.22/102
内容(「BOOK」データベースより)
『東欧発祥で、十二世紀、南仏ラングドックで大展開した宗教運動=カタリ派。二元論的であり、現世を悪とするグノーシス的とされるその教義には、謎が多い。カタリ派の誕生・発展から異端審問・迫害・殲滅にいたる三世紀の歴史―アルビ地方で展開された、もうひとつのおぞましい十字軍とカペー朝フランス王国によるラングドック併合が同時進行したのである。知られざる異端の経験した驚愕の歴史を明らかにする、カタリ派研究の第一人者による最良・決定版の訳書。』
原書名:『Histoire des Cathares』
著者:ミシェル・ロクベール(Michel Roquebert)
訳者:武藤 剛史
出版社 : 講談社
単行本 : 768ページ
発売日 : 2016/11/11詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カタリ派とアルビジョワ十字軍のことがさっぱりわからなかったが、これを読んで何とか理解できた。
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教会の矛盾点をついた独自の教義で中世南仏に広まるや、教会や北フランス諸侯によって十字軍の標的された、キリスト教一派の興亡についての歴史研究本。異端に対し容赦ないカトリック、かと思いきや時の教皇たちは改宗を望み、苛烈な制裁には困惑していて、残酷なイメージは前線にいる十字軍指導者や異端審問官の所業だったのは意外だった。昔習った?マニ教由来説も今では否定されているらしい。また十字軍まではフランス王ではなくスペインのアラゴン王を仰ぐ諸侯が多かったこと、迫害されたカタリ派の亡命先がカトリック色が強いイタリア各地(たぶん教皇と対立する皇帝派の支配圏だろうけど)だったことなど国境感覚の現代とのズレも印象に残る。
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東2法経図・開架 192.3A/R69i//K
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「アルビジョア十字軍」と呼ばれている、エルサレムではなく、キリスト教異端排除のために行われた(現在の)フランス国内の虐殺事件と、その後に続く異端審問によるさらなる悲劇の物語。
歴史の教科書だと数行しか記述のない話だが、それを700ページを超える大著で詳細に語っている。これを書くのにどれだけの文献を調べたのだろうか。まさに労作。
そして、この“事件”は単なる宗教上の争いだけではなく、その頃のヨーロッパの政治情勢・各国の勢力争いなどが複雑に絡んだ結果だったのだと教えてくれた。
いやぁ、久しぶりに骨太な一冊だったな。 -
堀米庸三著『正統と異端 ヨーロッパ精神の底流』、佐藤賢一著『オクシタニア』、坂東眞砂子著『旅涯ての地』、ケイト・モス著森嶋マリ訳『ラビリンス』、帚木蓬生著『聖灰の暗号』など、今までカタリ派が出てくる小説などを読む度にもうちょっと詳しいものが読みたいと思っていたので去年出版されてすぐに図書館で借りて読んでみたが、面白かったので買い求めた。ラインマーカー使い放題。歴史書としてはもちろん、読み物としても非常に面白かったし、訳も違和感さほどなくいい流れだった。いちど当地へ訪れてみたいと強く思う1冊。
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久しぶりに歴史の本を読んだ。
カタリ派というと、ミステリなどの題材になることも多いが、現実の信仰はごくごく普通。
『歴史書も文学である』と定義したのは吉田健一だが、確かに面白い歴史書というのはスペクタクルロマンであることが多い。本書も数多くの人々の思惑が複雑に絡み合った群像劇としても読むことが出来る。特に第Ⅱ部〜第Ⅲ部序盤にかけての権力闘争は読み応えがあった。映画みたいだな〜。