女たちの平安宮廷 『栄花物語』によむ権力と性 (講談社選書メチエ)

著者 : 木村朗子
  • 講談社 (2015年3月11日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062585996

作品紹介

本書は、平安時代の摂関政治がどのように権力を生み出していったか、そのしくみについて女たちの後宮世界からみていくものです。
平安時代の宮廷サロンが生み出した文学作品に、「歴史物語」とよばれるジャンルがあります。男たちが漢文で記す「正史」にたいして、女たちの使う仮名であらわしたものです。できごとを羅列する無味乾燥な「記録」にたいして、できごとを活き活きと語る「物語」です。
平安宮廷の表舞台は摂関政治に代表される男の世界ですが、周知のようにその根底を支えているのは男と女の性の営み、天皇の閨房にありました。摂政関白という地位は、天皇の外祖父が後見役になることで得られるものですから、大臣たちは次々と娘を天皇に嫁入りさせ、親族関係を築くことに必死でした。
そうした要請から、摂関政治は結果として一夫多妻婚を必然としました。後宮に集う女たちは、天皇の寵愛を得るために、そして天皇の子、とりわけ次代の天皇となる第一皇子を身ごもるために競いあいました。
天皇の後見と称して、その権限を乗っ取るようにして発揮する最大の権力が、天皇と女たちの情事に賭けられていたというのは、ずいぶんと滑稽な話ですが、「歴史」はそういうことをあからさまにしたりはしません。あくまで男同士の権力闘争として書くわけで、むしろその本質であるはずの、いくつものサロンの抗争や女たちの闘争は「物語」にこそ明らかになるのです。
その恰好の例が『栄花物語』です。作者は歴史的事実をあえて無視したり操作することで、女であること・生むこと・母となることの連なりに走る裂け目こそが、男たちの世界をつくってはやがて掘り崩し、そうした変化が新しい権力構造を生みだしていくことをはからずも明らかにします。

女たちの平安宮廷 『栄花物語』によむ権力と性 (講談社選書メチエ)の感想・レビュー・書評

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  • 「栄花物語」は「大鏡」に比べ、同じ時代を描きつつも、女性の役割が詳しく書かれている。醍醐・村上天皇も聖帝とされる所以が、政治より学問、文学、後宮の女性たちとのバランスある接し方にあったという言葉が皮肉ではなく、事実!だと変に納得した。女好きだった花山帝という個性の強さにも興味深い。藤原氏が、天皇・東宮に(正妻の産んだ)娘を輿入れさせ、子(特に男)を産むかどうかに掛かって権力闘争が行われた。まるで籤引きで権力が決まるかのよう。道長の権力基盤は本人の能力もさることながら、その好運に依っていた面が大きいし、頼道夫妻が子に恵まれず、天皇家との関係が希弱化していったらしい。一方、後三条・白河がその仕組みを逆用して藤原氏を脇に追いやり、院政が始まっていくということが面白い。正妻の家格が娘の格に影響し、天皇家の内親王(娘)、そして2世女王(孫)、3世女王(曽孫)の格の中で藤原氏だけが、内親王、2世女王を嫁として迎えることができたという構造の強さは初めて知った。

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