永田鉄山軍事戦略論集 (講談社選書メチエ)

制作 : 川田 稔 
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062586610

作品紹介・あらすじ

「彼が生きていれば、太平洋戦争は起こらなかった」――近年再評価が進む、帝国陸軍の至宝・永田鉄山(1884-1935)。これまであまり世に出てこなかった永田自身の文書や発言録から、戦間期に残した論考6編を収録。その冷静かつ合理的な分析が訴える、あるべき国家の姿とは? 詳細な解説を加え、昭和の大日本帝国を支えた理論・思想の背骨を明らかにしてゆく。

第一次世界大戦の甚大な犠牲と破壊を受け、永田は戦争のあり方が様変わりしたと思い知る。それは短期かつあくまで局地的な戦いから、高度の工業生産力と膨大な資源を要する、長期にわたる国家総力戦への転換である。そして次なる大戦争は不可避と踏み、対応するには「国を挙げて抗戦する覚悟」をもって「国家総動員体制」を敷くべきであると説く。

永田は陸軍学校を優秀な成績で卒業後、長期のヨーロッパ駐在を経て軍の要職に就き、中堅幕僚の盟約「一夕会」を結成。東条英機、武藤章らとともに「統制派」を率いて国家総動員体制を推進、理論的支柱として満州事変以後は陸軍の実質的リーダーとなる。陸軍の革新を志し、政治進出にも大きな役割を果たすが、対立する皇道派により殺害される。二・二六事件はその翌年、日中戦争開戦はさらにその翌年。永田亡き後、日本は戦争とその結果としての破滅へ突き進むことになる。

来たるべきものである戦争に、いかに臨むか――にわかに国際関係の緊張が高まる現代、極めて誠実に、現実的に国防を考えた永田のロジックから、21世紀の我々は何を学べるだろうか。

感想・レビュー・書評

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  • 永田が思い描く理想の日本とは、政治的、経済的、軍事的に苛烈な国際競争にさらされながらも自主独立を堅持する国家である。しかし理想を達するためには、来るべき次期世界大戦を勝ち抜かなければならないことが確信されている。彼にとってその勝ち負けが、日本が国際社会において落伍者になるか、先頭集団にキャッチアップし続けるかの分かれ道であった。
    次期大戦は第一次大戦以上の総力戦になるという予想から、第一次大戦でドイツが敗北した決定的理由が探られる。それは軍事的なものに限らず、思想的、経済的なものが大勢をしめた。したがって日本での平時戦時を問わない国家総動員体制構築の重要性が語られる。
    当時の国際社会を冷静に見渡せば正しい認識なのかもしれない。しかし、このビジョンのイニシアチブを政治家が主導し得ず、ただ軍人が持ち続けたがゆえに、様々な国際的ハードルに対して武力解決の道を重ねてしまう失敗があったのだと思う。

  • 東2法経図・開架 393A/N23n//K

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