石の花(5)解放編 (講談社漫画文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062602594

感想・レビュー・書評

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  • 248pのクリロ。

    もう一度たずねます……。
    あなたの平和とはどんなイメージなのでしょうか!?
    (きみの描いている平和は非現実的だよ。幻想だ! 子供のような夢だ!)
    そうしてあなたも現実を肯定してしまうんですね。
    合点してしまうんですね。
    それこそ戦争を起こす原因(もと)なんだ!
    真に平和な世界をだれ一人、だれ一人経験したこともないのに どうしてダメだといえるんです!?



    石の花
    https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E3%81%AE%E8%8A%B1_(%E5%9D%82%E5%8F%A3%E5%B0%9A%E3%81%AE%E6%BC%AB%E7%94%BB)

    2022年2月に新版が刊行されたことで初めて知った作家・作品。
    (おそらく世界情勢と偶然に連動してしまった新版を)買おうかどうか迷っていたところ、文庫を見つけたので手を伸ばしてみた。
    浦沢直樹いわく、「手塚治虫と大友克洋をつなぐミッシングリンク」。
    「石の花」の連載が、1983-1986。
    「AKIRA」の連載が、1983-1993。映画は1988。
    手塚が大友に「僕は君の絵なら描ける。僕が唯一描けないのは諸星大二郎の絵だけだ」と言ったという都市伝説があるが、
    坂口尚は虫プロのアニメ班で手塚の下で働き、かつ強く意見もした人なんだとか。
    こりゃ凄い人を知った。
    「坂口尚オフィシャルサイト 午后の風」を参考に調べていきたい作家だ。

    まずは絵柄。
    そして大友が引き合いに出されるのもむべなるかな、カメラワークの凄み。
    しかし、個人的には「言葉の重さ」に惹かれ、「言葉の作家」だと感じた。

    他備忘録。
    ・1918年に成立したユーゴスラビアと呼ばれた「国家」は、7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字を持っていた。絡み合っては分断を起こした結果、1991-2001の紛争で解体。国が解体するってどう想像すりゃいいの。その源泉を本書から学べる。
    ・島田荘司の「リベルタスの寓話」の舞台が、ボスニア・ヘルツェゴビナ。「クロアチア人の手」。
    ・米澤穂信の「さよなら妖精」にも関連。
    ・わが生涯ベスト級、楠見朋彦「零歳の詩人」も旧ユーゴ内戦を描いている。確か作中で「もうユーゴスロヴァキアなんて呼ばせないからな」というフレーズがあったが、そう混同してしまいがちな者として、本書も参考にしつつ、慎重に想像を深めていきたい。
    ・wikipediaによれば、米原万里による本書の布教が、当時の天皇につながった、とか。
    ・ゲリラとパルチザンってどう違うの? と前々から気になっていたが、ざっくり、不正規戦闘員はゲリラ、歴史の中で特定の抵抗組織をパルチザン、と。この漫画でリアルに感じた。
    ・ナチス……皆川博子の諸作……本書でマイスナー中佐がピアノを弾くシーンから、五木寛之の「青年は荒野をめざす」を連想。
    ・「石の花」というタイトルについて。すごく既視感があった。検索してみて、プロコフィエフのバレエ「石の花の物語」と知り、いやバレエは知らんな、と。evernoteでヒットしたのは「書物の王国6鉱物」に収められた、日野啓三「石の花」。うーんちょっと違う。東雅夫・選「幻想小説神髄―世界幻想文学大全」に収められたノヴァーリス「ザイスの学徒」が目に入る。うーん「青い花」の作者だから連想したのかな。などとチラチラ探していたところ、あ、これだ! と気づいたのが、「書物の王国6鉱物」収録の、パーヴェル・ペトローヴィチ・バジョーフ「山の親方」! これを原作にしてプロコフィエフがバレエを作ったんだとか。もとのバジョーフは、ウラル地方の民話を採集して「孔雀石の小箱」として出版した、さらにソ連初めてのカラー映画「石の花」の原作にもなったんだとか。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      knkt09222さん
      坂口尚を文庫で読むのは戴けません。新版を購入すべきです、、、
      knkt09222さん
      坂口尚を文庫で読むのは戴けません。新版を購入すべきです、、、
      2022/04/14
    • knkt09222さん
      仰る通りだと思います……。
      青騎士コミックスの新版も購入を検討してみます。
      仰る通りだと思います……。
      青騎士コミックスの新版も購入を検討してみます。
      2022/04/14
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      knkt09222さん
      にゃ〜(他人様に偉そうに言う資格のない猫)
      knkt09222さん
      にゃ〜(他人様に偉そうに言う資格のない猫)
      2022/04/14
  • パルチザン クロアチア トマト クリロ フィー イヴァン 現実 腰抜け ユダヤ人 奴隷 虹 群れの中に自分を消す 唯一絶対のもの プラム マイスナー マリーネ 自から自分を殺した ジーク・ハイル=勝利万歳 全ての闘争は戦争

  • 2022.7.17市立図書館
    1943年、戦況は厳しく、フィーが戻った強制収容所でも、クリロが属する部隊でも、ひもじく絶望が深まる中で、獣のような欲にまみれ、内輪もめも増えますます苦しくなる。現状に流される(合点=のみこむ、妥協する)多くの大人たち(野蛮で醜い人間)と、流されながらも理想を思い葛藤する大人と、現状に苦しみ続ける子どもたち。1945年の解放後も苦悩は続き、いまも地球上のあちこちで同じようなことが繰り返されている無力感は大きい。
    自由とは何か、戦争と平和とはなにか、常にクリロを気遣ってくれた農民ゲリラのリーダーブランコ、兄(従兄弟)イヴァンからクリロらへのメッセージをなんどもかみしめる。イザークとの友情を育みブランコの背中をみてきたクリロなら、きっとこの先もだいじょうぶだろうと思えるのが救いだろうか。

    さすがに主人公たちは九死に一生以上の綱渡りで戦後をむかえたが、イヴァンをみとったミルカは、共産党員の戦士リジェは、靴磨きの少女ピッチは、ミントは、はたして生き延びたのだろうか。伍長どのは、イザークは、そしてフンベルバルディンク先生は? クリロがそうした人の幾人かとうれしい再会をする未来があってほしいと祈るのみ。

    巻末には著者と小学校の同級生でこの作品の考証にも協力したというバルカン史の専門家柴宜弘氏(1年ほど前に亡くなっている)が解説にかえて作品の歴史的背景についてかいており、最後に筆者のエッセイ「なぜ漫画でユーゴを描いたのか」(新潮社「波」1988年10月号掲載)も。

  • 20180321読了
    1996年発行。連載は1986年。コマの流れやタッチがまるで映画のよう。次々に人が死んでいく。漫画だから誇張しているのではなく、これが現実の悲惨さなのだと思う。

  • 私の人生を決定した作品。

  • 断捨離、2013春。

  • 第二次大戦中の旧ユーゴパルチザンを描いたもの。40年以上前のものですが、ユーゴ内戦を起こすに至った要因は、第二次大戦前から何も変わっていなかったことがよくわかります。

  • 平和な日常の脆さ
    いつ戦争が始まってもおかしくない世界
    多民族国家だったユーゴは後に解体してしまう

    以前からこの石の花の存在を知っていましたが、なかなか
    読む機会に恵まれず。今頃になって読破しました。

  • 久々に骨太な漫画読了。

  • 辛く悲しい戦争物ですが、不思議な爽やかさがあります。 絵も素晴らしい。

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著者プロフィール

坂口尚(さかぐち ひさし)
1946年5月5日生まれ。高校在学中の1963年に虫プロダクションへ入社。アニメーション作品『鉄腕アトム』『ジャングル大帝』『リボンの騎士』等で動画、原画、演出を担当。その後フリーとなり、1969年、漫画雑誌「COM」誌に『おさらばしろ!』で漫画家としてデビュー。以後多くの短編作品を発表。アニメーションの制作にも断続的に携わり、24時間テレビのスペシャルアニメ「100万年地球の旅 バンダーブック」「フウムーン」等で、作画監督、設定デザイン、演出を担当。1980~82年、代表作の一つとなる『12色物語』を執筆。1983~95年にわたって、長編3部作となる『石の花』『VERSION』『あっかんべェ一休』を発表。1995年12月22日逝去。1996年、日本漫画家協会賞 優秀賞を受賞。

「2019年 『坂口尚 トム=ソーヤーの冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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