中国ニセモノ社会事情 「ひ弱な途上国」の仮面を剥ぐ (講談社+α新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062725309

感想・レビュー・書評

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  •  サブタイトルが「ひ弱な途上国」の仮面を剥ぐとあるように、中国は「ニセモノ」がビジネスチャンスを生む金の卵になっているのでなかなか減らない。

     著者によるとニセモノがなくなる日はやってこないと述べている。その理由は、中国人自身にニセモノが悪いと思っていないし、ニセモノで潤っている共産党の地方幹部がおいしい思いをしている限りニセモノをなくそうなど夢のまた夢だからだ。

     ゴッホやピカソの贋作は言うまでもなく、果てはレンタル恋人や人工処女膜などというものまで登場している。ニセモノビジネスに陰りがみられる気配がない。

     ニセモノビジネスがどの程度の経済規模なのか気になるが、なかなか表に出てはこないだろうなあ。

  • 色々な意味で中国人のたくましさ、および節操の無さがわかる気がする。スケールが大きいといえば大きいが、遣りすぎてしまう事、そこを悪びれないところが、いつまで経っても前進していないように思えてしまう。

    南街村にて、共産主義的な社会が築きあげられ事、破綻後も人々は比較的のんびりと幸せ度を維持している箇所を愚民政策と言い切ってしまう所は、賛成しかねるものの、それ以外は色々なトピックを拾い出して、自身での調査も行っている辺りから、非常に楽しめた。

    2020年5月29日 再読終了
    この本を読んだのは自分が中国に興味を持っていたが、中国に行く前だったのか。内容は中国で起きるトンデモ事件簿的ではあるが、個々の事象より、なぜ起きるのか?ということに関し、すでに”はじめに”で答えが出ていた。彼らのロジックもわからんではないが、国際的に尊敬を得ることは難しいだろう。

    すでに同書が書かれてから10年以上経っていることもあり、社会はかなり変化をし、人々も多少なりとも版権について意識が芽生えてきているように思えるが、行動様式の根本の部分ではまだまだ変わっていないのかもしれないと思わせるところが以下の抜粋から読み取れる気がする。

    P.5
    汚染拡大やニセモノの氾濫、人権問題などを海外から糾弾されると、政府筋は決まって「我が国は発展途上国」「法が未整備なので」という言い訳に終始する。民族のプライドが傷つけられかねない動きには「大国」の強権でもって臨むのに、不利な立場に立つと「途上国」を主張するという二枚舌ーーじつはその傾向は一般人民も同じで、国内の矛盾を突かれた人民は必ず、溜め息混じりに、「数年前に比べたら確実に向上しているし」「それでも中国はまだ貧しい」「先進国はオトナの目で見るべき」と反論するのだ。それどころか、海賊版をはじめ数多のニセモノ生産が雇用を創出するそれなりの産業であり、カネのない若者たちの知的好奇心を満たし、ホンモノの広告塔としても重要な役割をになっていると”本気で考えている”。
    中国からニセモノがいっこうに淘汰されない原因は、人民の場当たり主義的な考え、後先を考えずニセモノ生産に手を染める大胆さ、品質への満足度の低さなどが挙げられるが、彼らがいつまでも引きずっている「途上国だから」「一種の必要悪」という甘えが、ニセモノに寛容な社会の大きな下地になっていることは否定できない。

    P.10
    結局、ニセモノは淘汰される見込みがあるのかーーまず、無いだろう。
    人権問題と異なり、「外圧」に揺れる可能性は低い。すでに人民は、「知的財産保護」という名目の莫大な著作権料が、一部アーティストやキャラクターの権利を守り、潤すだけに過ぎないことに気付いてしまっているからだ。しかも、カネもうけに手段を選ばない人民には、日本的な「恥」の文化も、信仰に基づいた自制心も無きに等しいから、ニセモノが「みっともないこと」だと自覚し、改めようという思いすら浮かぶことはないだろう。
    「内圧」も効果薄。中国共産党はハタから想像するほど堅牢ではない。もはや沸点に差し掛かった人民の不満と苛立ちを抑えるのに精一杯で、ネット世論を注意深くチェックしつつ人民の顔色を伺いながらニセモノを黙認し、適度にガス抜きを図っているという状態だ。世論の風向き次第で取り締まりもするけれど、当局の摘発の目をかいくぐってチャンスをつかもうとする輩は後を絶たず、焼き石に水。それどころか、ニセモノ商売は、地方幹部が利権を享受する温床にすらなっている。先行き不透明な将来に備えて”寺銭”徴収にいそしむ幹部としては、ニセモノ撲滅など”あってはならないこと”なのだ。
    加えて、ホンモノやオリジナリティの成長よりも早くニセモノが社会に蔓延し、本物を生むべき土壌が育っていないことも挙げられる。生き急ぐ人民にはじっくりオリジナリティを育む余裕などなく、目先のニセモノで済ませ、その小さな満足がまた、オリジナリティの登場を阻んで・・・。長期的展望を持たない限り、この悪循環に解決の見通しはつかない。

    P.32
    『The New York Times}(二〇〇八年八月十二日付電子版)は、五輪開会式のクチパク少女について、「必要なのは真実であり、ニセの愛らしさではない」と手厳しく論評したが、その憤りは、「ありのままの真実こそ価値がある」という西欧の考えがベースにあるからともいえる。ホコロビや失敗を含んだリアルな真実より、あらゆる手を尽くして、自分たちなりの「カンペキ」な状態を追及うすることに価値を貫くのが中国共産党なのだ。

  • 著作権完全無視の海賊版王国の実態。その凄まじさに顎は外れまくり。彼らの言い訳は「発展途上国」。いまや世界一の外貨準備高を誇る超大国にあるまじき発言。どこまで読んでもこの国に蔓延している甘え意識に救いは見出せない。

  • 読み物としてはおもしろかったですが・・・。

  • 模倣製造品についてではなく、中国人のもうけようとする根性が描かれている。ニセモノの病院、レンタル彼女、偽造留学生など日本人からすると考えられない事象が多く載っている。そこまでやるか、という感じである。

  • [ 内容 ]
    贋作名画、ニセ救急車、人造美女…驚愕の実態!
    NHK『激流中国』も描かなかった金儲け思考!
    新・超大国に跋扈する偽装商品の数々…背景にあるのはアメリカ顔負けの競争社会だった。

    [ 目次 ]
    第1章 スケールがケタ違い、ニセモノ国家プロジェクト(五輪も月面写真も宇宙遊泳も… 党&政府主導の“国家的偽装ラッシュ”;二一世紀も、あの方の「ブランド力」は別格! “毛沢東もどき”ビジネスの悲喜交々 ほか)
    第2章 本家争いは続くよ、どこまでも―(「世界三大贋作村」はぜーんぶ中国にあった! ゴッホもピカソも手描きで一枚七五〇円!!;「ご主人様」よりコスプレしている自分に夢中 チャイニーズ「メイド喫茶」三都物語 ほか)
    第3章 ニセモノだって、愛は愛でしょ(これも「和諧社会」PRの一環!? 性転換して人生謳歌、驚きの一家円満物語;中華版「アパートの鍵貸します」 サクッと愛を育める「即席ラブホ」が大繁盛! ほか)
    第4章 医学界も生物学界もニセモノに揺れる(本家激怒「ニセ“協和医院”を駆逐せよ!」 オマケに「軍医院」のニセモノまで百花繚乱;病院前で客引き勧誘? それは設備豪華な「ニセ救急車」だった! ほか)
    第5章 なりふり構わぬエリート教育サバイバル(“現代の科挙”に懸ける中国人たち 大学入試の「ニセ成績」を手に入れたい!;越境入学した生徒の住所は「公衆便所」 受験サバイバルを勝ち抜くために「ニセ華僑」! ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 取り立てて目新しい話題ではないですが、著者はよく調べていますし現地にも足を運んで聞き込んでいますね。

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著者プロフィール

1967年石川県生まれ。金沢大学(教育学部)卒。1995年に初めてパリを訪ね、以後、フランス、イタリアの各地を訪ね歩く。美しい街並みや面白いモノ、働く人の姿などをこよなく愛する写真作家。
〈 ウエブサイト 〉旅先で、道草 http://tabisakide.michikusa.jp/

「2016年 『Paris en Vert 緑色のパリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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