ペルシャ猫の謎 (講談社文庫)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062734509

感想・レビュー・書評

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  • これまでの火村&アリスシリーズとは違う描かれ方。好き嫌いは別として、斬新!
    そして、猫好きさんにお薦めしたい。

    〝切り裂きジャックを待ちながら〟〝猫と雨と助教授と〟が好み。〝赤い帽子〟も良かった。

  • 国名シリーズ5作目。
    7編からなる短編集。
    今作はいつもと違う感じ。
    ミステリっぽさがあまりない作品も多かった。
    お気に入りは赤い帽子。

  • 国名シリーズ第五弾は猫ちゃんの表紙が目印!殴打され、充満するガスの中で見た双子の弟は自分の飼い猫を抱いていた。しかし、弟にも猫にもアリバイが!という謎を探る表題作など七作の短編を収録。『悲劇的』が断トツで好き!

    『切り裂きジャックを待ちながら』(☆3.5)
    劇団<屋根裏の散歩舎>に届けられたビデオテープ。そこには看板女優・鴻野摩利が拘束され、身代金を要求するメッセージを読み上げさせられる姿が映っていた。しかし、座長の鳴海邦彦はクリスマス公演を優先させるの一点張り。劇団員の谷邑は顔見知りだった有栖川に意見を求める。

    誘拐ミステリかと思いきや、思わぬところで幕が上がった殺人劇!身代金を要求しているのに、期限前にクリスマスツリーへ死体を吊るした意味。矛盾だらけの犯罪は、まさに人間という矛盾だらけの存在へと還元されていく。火村の論理的な推理と、劇に込められた真意を推察していく鮮やかさ。そこから犯人の心を火あぶりにする展開は、思わず息をのんで見入ってしまった。

    『わらう月』(☆3)
    希美が海辺で交際相手・京児と撮影した写真。それは貿易商がシドニーで殺された事件で京児のアリバイを証明する写真だった。写真に浮かぶ月。希美には月に対してある呪いがあった──。

    「──まただ。人に言えないようなことばかり、あいつは見ている。」
    希美と祖母とのエピソードがもはやホラー。親たちのことを無条件に信用してしまう子どもの頃だからこそ、批判的な言葉は迷信ではなく確信となって心に消えない傷を残す。それが夜を照らすはずの月を依り代にして、希美の心へ影を落とす呪いとなったのが恐ろしい。そこからの倒錯した感情へと転がっていく心理描写もぞわぞわする。

    『暗号を撒く男』(☆3)
    推理作家の朝井小夜子との飲み会にて、火村たちが遭遇した奇妙な殺人事件の話に。被害者・待田暁規は喉を鋏で突き殺されていた。現場のテーブルの上には凶器とまったく同じ鋏がもう一本手つかずで置いてあり、それ以外でも場違いな物が家中に置かれていて──。

    「姐ちゃんら、どんな関係の仕事をしてんねや?」
    「人殺し関係です」
    飲み屋で話しかけた相手に真顔でこう返されたら帰るなあ(笑) 殺人事件はプロローグでしかなく、家の中に置かれた不可解な物の正体を推理するのが本題。本人には自明であっても、他人から見たら不可解なんてものはザラにある。世界は暗号に満ちているのだから。

    『赤い帽子』(☆3.5)
    森下刑事が主役の短編。川で発見された男の溺死体。その素性を探っていくと、赤い帽子を被った男に辿り着いた。彼は別の男と一緒にスナックで話していて「ビオラはまだやっているのか?」と問いかけていた──。森下の捜査と推理が味わえる一作。

    「この雨だけが見ていたのだ。冷たくなってコンクリートの上に身を横たえている男がどこからやってきたのか、誰と一緒にいたのか、そして何があって川に投じられたのか。」
    この表現が好き。雨だけが知り、洗い流していった事件。推理をぶつけても事件は終わらない。証拠から事実を導き出し、組織として捜査していくのが刑事なのだ。洗い流された事件を洗い直す実直さを感じる話だった。

    『悲劇的』(☆4)
    担当編集者・片桐光雄とバーで飲んでいた有栖川。話の中で火村が書いたとも言える小説の話になる。ある学生のレポートに十八文字を加えたことで完成した小説とは?

    わずか14ページの作品でこの切れ味よ!世の中を悲劇ばかりだと嘆き、神へとその理由を問うた学生のレポート。その最後に添えた一文に痺れる。
    「神がいると信じることで救われる人間もいれば、神がいると思うことで絶望を感じる人間もいる。」
    『わらう月』と同様に、物事の両面性、解釈によってその意味が変わることを物語というレンズを通して教えてくれる。

    『ペルシャ猫の謎』(☆3)
    有栖川の作品のファンだという男・喜多嶋一充が殴打された事件。元栓から充満するガスの中で、彼は双子の弟・一孝が自分の飼い猫であるペルシャ猫を抱いている姿を目撃する。弟が犯人だと言い張る一充だが、弟にも猫にもアリバイがあって──。

    「買いなさい。損はさせないから。」の圧がすごい(笑) 被害者が愛読者だと知って嬉しがるも、男と知ってガッカリしたり、有栖川を頼ろうとする一充を「ちょっとうるさい」と内心で一蹴する有栖川の人間臭さが面白い。ペルシャ猫のペルをめぐる元恋人との人間模様や、愛着を抱いていく姿が哀愁を誘う。

    『猫と雨と助教授と』(☆3)
    火村と飼い猫のいい話!なんかあの火村の姿を想像するだけでにやけてしまう。

  • 久しぶりに火村アリスコンビを。安定した二人と、短編の内容。コンビが登場しない森下刑事の推理「赤い帽子」も森下刑事の事を知ってるだけに、面白かった。コンビに頼らず解決してる事件もあるんだなと。
    長編もまた早く出て欲しいなぁ

  • 色々あって、やっと本を読む気持ちになりまして読みました。
    このコンビ、癒されます。
    猫はいいですね。猫は。
    切り裂きジャックが1番好きだったです。

  • 火村が好きなら欠かせない一冊。一話一話に特徴はあるものの、事件発生から動機、解決まではっきりしてる話はなかったな。血は流れてるけどなんだか和む。

  • 火村&有栖の名コンビ

    1番印象に残ったのは1個目の話かなぁ
    犯人の思考がぶっ飛んでて、、、ちょっと怖かったなぁ

    それぞれの短編が違う味を出してて飽きない!

  • 著者の作品は初めて読んだが読みやすい作品が多かった。

  • 国名シリーズ五作目の短編集

    良く言えば無難にまとめられている
    悪く言えば突出して面白いというのが欠けている気がした

    表題作のペルシャ猫の謎はうーん...という感じ
    個人的には赤い帽子が好きだった

  • 有栖川有栖、異色の短編集。
    星3は、作家アリスシリーズが大好きだからこそ正当な評価だと思う。
    ミステリのルールを逸脱した問題作たちだから。
    オタクとしてはもちろん星5です。

著者プロフィール

1959年大阪生まれ。同志社大学法学部卒業。89年「月光ゲーム」でデビュー。「マレー鉄道の謎」で日本推理作家協会賞を受賞。「本格ミステリ作家クラブ」初代会長。著書に「暗い宿」「ジュリエットの悲鳴」「朱色の研究」「絶叫城殺人事件」など多数。

「2023年 『濱地健三郎の幽たる事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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